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ゆるっと街づくりin異世界~すべての種族が住む街を作れ!?~  作者: 下河スズリン


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200/213

200.カマキリとイノシシ

 カンカンカンカンカンッッッ……!!!


 秋も深まり冬の足音を感じ始めたある日。

 屋敷で報告書に目を通していた俺の耳にそんな音が届く。


 これは……鐘の音だな。しかも時間を告げるものじゃない。


 俺は報告書から目を上げ、外に目をやる。

 その瞬間。


 ギィィィーーーーーーンッ……!!


 鐘の音を追うようにしてそんな音も響き渡る。


 その二回の音に確信する。

 これは見張り塔からの非常事態を知らせる鐘だ。




 先日。

 見張り塔に時間を告げるための鐘を設置することにした俺は、せっかくだから時間を告げるだけじゃなく他の用途にも鐘を使おうと思い至った。


 それが警告の鐘だ。

 何か異常事態を見つけた場合、時間を告げるカーン、という伸ばすような叩き方じゃなく、カンカン、と何度も激しく鐘を叩いてくれ、と見張り塔の者たちには伝達しておいた。

 異常事態を告げる方法なんてどれだけ用意しておいてもいいしな。


 そして見張り塔の者たちは俺の伝達通りに今鐘を激しく叩いたんだろう。

 二回目の硬いものが叩きつけられたような大きい音は、前に使っていた拡音石を塔の上から地面に叩きつける警告方法の音だな。

 万が一伝わらなかった時の事を考えてこっちも使ったんだろう。

 それか混乱して両方使ったか。


 まあいい。

 異常事態とは言っても、差し迫った脅威を感じられないようなものについては、隧音石で連絡してくることになっている。

 いたずらに住民の不安を煽ることも無いからな。


 つまり鐘で伝えて来るってことは住民たちにも万が一の場合の心の準備をさせておきたい事態って事だ。

 とりあえず急いで向かおう。

 音の聞こえたのは……あっちか。






「代表様! ご足労頂きありがとうございます!」


 レースピア外周部にいくつも建った見張り塔、その一つ。

 方角で言うなら、南西の方向にあるそこにたどり着いた俺に、緊張した様子の天使族……エンジェルが声をかけてくる。


 ああ、そんなにかしこまらなくてもいい。

 状況は?


 俺の言葉にも彼女はぴんと立たせた背筋を緩ませることなく、問いに答える。


「ハッ! 現在レースピア守備隊の偵察圏にアーマンティスとデュールボアが侵入してきています! 両者の進路は重なっており、もうすぐ接触するかと……」


 と、彼女がそこまで言ったところで。


 ドォォォォォンッ……!


 遠くの方から……何か大きいものが勢いよくぶつかったような……あるいは山が土砂崩れでも起こしたような、そんな音が響いた。




「うーんアーマンティスとデュールボアかー。少し厄介だね、それは」


 大きな音が響き渡り、その後断続的に響き渡り始めて少し。

 俺に少し遅れて見張り塔にやってきたエンジェル代表、シエルがそう言って顎に指を当て、困ったように眉を下げる。

 そうなのか?


「うん、この二体ってね……とってもタフなんだよ」


 シエル、曰く。

 アーマンティスとデュールボア、この二体の魔物はその肉体がとても硬いらしい。


 アーマンティスは虫系の魔物。

 見た目は鎧をまとったようにごつごつしている巨大なカマキリらしい。

 その見た目にたがわず、まさに鎧……いやそれ以上の硬度を持つとか。

 その上、たとえミスリルの鎧であってもすぱりと切れる鎌も併せ持ち、こっちの鎧は切られるのに向こうの鎧は切れないことから鍛冶師殺し、なんて呼ばれているらしい。

 鍛冶師にとってアーマンティスを上回る鎧を作るのは至上の誉れでもあるとかなんとか……。


 そしてデュールボア、こっちは獣系の……イノシシの魔物。

 見た目は普通に俺が知るイノシシをでっかくしたものっぽい。説明を聞く限り。

 このデュールボアの特徴もとても硬い事。

 その肉体もさることながら、全身に厚く纏っている毛皮がとてつもなく硬いらしい。

 なんとミスリルすらスパスパ切り裂くアーマンティスの鎌も普通に通らないのだとか。


「だからこの二体が戦おうものなら……なかなか決着がつかないんだよね」


 しかも両者ともさっき言ったようにタフだから多少傷ついた程度じゃ意にも介さないし。


 そう言ってうーん、と頭を悩ませるシエル。

 なるほどな……。


 俺が説明を受けている間にも、遠くから大きな音は響き、心なしか地面もわずかに揺れている。

 これがしばらく続くって事か……いつまで?


「いつまでか、は……分からないかなー。でも下手したら一か月戦いっぱなしとか普通にあるかも。しかも……」


 そこまで言って、シエルは近くに居たエンジェルにちょいちょいと手招きする。


「ハッ! 何でしょうかシエル様」


「アーマンティスとデュールボアの進路はどうなってる?」


「はい、少しずつですが……こちらに近づいているかと」


「あーやっぱりそうだよねー」


 ……なるほど。

 これだけ激しく暴れながらさらにこっちに近づいてきているのか。

 それは放置はできないな。


 俺は意識を切り替えると、シエルに声をかける。


 シエル、何人か連れてきてくれ。俺は先に行ってるから。


「え? 先に行ってるってどこに?」


 もちろん奴らがぶつかり合ってる所に。




 ドォォォォォンッ!!


 おお、スペクタクル。


 俺は目の前で十数メートルはあろうかというイノシシとカマキリがぶつかり合ってる光景を見てそんな声を漏らす。

 あの後、俺は慌てて止めてきたシエルを説き伏せて、創造神器でここまで素早くやってきていた。

 シエルたちも相当な速さだが……創造神器は流石だ。


 さて、感心してばかりもいられない。

 目の前のイノシシとカマキリは確かに、少しずつ俺が来た方……レースピアに向けて進んでいるようだ。

 離れるって言うなら別に見逃しても良かったが……これも街を守るため。


 俺は創造神器を斧に変えると、奴らの方に歩き出す。

 イノシシもカマキリもこちらに意識は向けない。

 まあちっぽけな人間一匹より目の前の敵の方が脅威なんだろう。


 俺はそんな両者に近づき……斧を投げた。


 スパンッ!


 勢いよく飛んだ斧は、俺からかなり上の方にあったカマキリの首を切り落とす。

 アーマンティスはシエルの言葉通り、その頭や首に至るまでもかなり硬そうな外殻で覆われていたが、創造神器の斧は何の抵抗もなかったかのように切断。

 一切勢いを落とさずに、そのまま俺の手元にブーメランのように帰ってきた。


 ……もし変なとこに落ちても、手元に再出現させればいいかと思って投げたんだけど……綺麗に帰ってきたな。


 俺は手にすぽっと収まった創造神器を見ながらそんなことを思う。

 いや、回転してて危ないからキャッチしようとも思ってなかったんだが綺麗に手に入ってきた。

 まるで磁力か何かで吸い付いたかの如く。


 ちょっと唖然としていたら、いきなり戦っていた相手の首が落ちて、俺と同じように唖然としていたデュールボアが俺より先に我に返る。

 そしてアーマンティスの首を刈った斧、それを持っている俺に対して……思い切り突進してきた。


 それを見ても俺は特に慌てることなく……イノシシの真正面に入り、デュールボアがその頭を俺に叩きつけてくる直前、今度は斧を真上に振る。

 すると。


 ドドドドッ……ずぅぅんっ!


 俺に叩きつけられるはずだった頭はその胴体より切り離され、頭を失った胴体はその勢いのまま後方にあった木に激突。

 そのままゆっくりと横に倒れ、二度と動かなくなった。


 ふぅ。

 これで良し。






 その後。


「代表様。代表様のお力を信じていない訳ではございませんが、このような危険なことはなさいませんよう。その身にもし万が一のことがあれば我ら一同悔やんでも悔やみきれません。このような時のために護衛というものはあるのに、肝心な時に代表様がそれを振り切っていかれるようではこちらとしても──」


 うん……うん……その……申し訳なかった……。


 アーマンティスとデュールボアを倒して軽く血抜きをしていた俺は、俺の言葉通り人手を連れてきてくれたシエルと一緒に来たリネイアにお説教を受けていた。

 リネイアは俺が出発した後見張り塔にやってきて、俺が飛び出していったのを聞いて血相を変えて同行してくれたらしい。

 正直考え無しに突撃してしまったので何も言い返せる言葉が無い。

 素直にお説教を受ける。


 うん、本当に申し訳なかった。


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