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ゆるっと街づくりin異世界~すべての種族が住む街を作れ!?~  作者: 下河スズリン


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192.宝装具

「すべて買い取らせてくださいッッッ!!!」


 開口一番。

 そんな声が俺の鼓膜を揺らす。大きく。




 ここはケットシー商会。

 第八地層を本格的に掘ることはしばらく難しいと悟った俺は、とりあえず原石をいくらか掘ってそれを商会に持ち込んでいた。

 何故商会なのかというと、宝石ということであれば自分たちよりケットシーたちの方が詳しいだろう、とイアンにそう助言をもらったからだ。


 なので俺はイアン達とは別れ、商会に原石を見せに来たんだが、見るや否やケットシー代表、ニャジッタが発したのが冒頭のセリフ。


 ……いきなりどうしたんだ?


 突然の大声に、俺は耳に咄嗟に手を当てながらニャジッタに問いかける。


「にゃっ!? もっ、申し訳ありにゃせんっ! つい本音が!」


 本音なのか……。


 慌てた様子で弁解してくるニャジッタに俺はそう思う。

 ニャジッタは手をわたわたと動かしているが、その目線は原石から一瞬たりとも離れない。

 気のせいか、口の端からよだれも垂れている気がする。


「じゅるり……」


 気のせいじゃなかった。


「ハッ……! 重ね重ね申し訳ありませんにゃ。これほどの原石を見た経験などなく……お見苦しい所をお見せしましたにゃ」


 ニャジッタはそう言って取り繕おうとしているが、その目線はまだ原石と俺との間でゆらゆら揺れているし、自分では気づいてないだろうが、さっきから語尾に「にゃ」がつき続けている。


 そんなの興奮するほど良いものなのか?


「もちろんですにゃ!!!」


 うわっびっくりした。


 俺が興味本位でそう問いを投げると、バッ! と詰め寄ってきて、そう断言してくるニャジッタ。

 その瞳は原石に負けず劣らず輝いていた。


「原石自体の大きさもさることながら真に素晴らしいのはこの一見するだけで分かるほどのこの輝き! これほどのきらめきを持つ宝石などそれこそ人の国の国宝にさえあるかどうか……しかも──」


 いや止まらないな。


 詰め寄ってきた勢いでどんどんまくし立てて来るニャジッタ。

 宝石に詳しくない俺には完全には理解しきれないが、とにかく凄く良い原石だと言っているのだろう。




「……ふぅ……はぁ……、失礼しました。落ち着きました」


 しばらくまくしたてた後。

 ニャジッタは興奮を吐き出して冷静さを取り戻したのか、額をくしくしと掻いて俺に一礼してきた。


 いや、気にしないでくれ。


「そう言って頂けると助かります……」


 尻尾と耳をふにゃと垂らしてそう言ってくるニャジッタ。

 ……ちょっと撫でたい。


「代表様ならいくら撫でて頂いても構いませんが……今は話を戻しましょう。これほどの原石、いったいどこから持ってきたのですか?」


 ニャジッタが俺にそう問うてくる。

 俺は第八地層を発見してそこから掘り出されたものだ、とありのままに伝える。


「……なるほど。ではこれからたくさん採掘できると?」


 いや、現状では俺しか掘れないから大量採掘はしばらく先かな。


「そうですか……」


 戻りかけていた耳を再びくたりと垂らしながらニャジッタは残念そうにそう言う。


「……いえ、ですが少量とはいえこれだけの原石が採掘できているのですからこれ以上は高望みですね」


 しかしニャジッタは自身でギュっ、と気合を入れるとその耳をぴんと伸ばした。


「時に代表様。その原石をどうなさるか……使い道は決めているのでしょうか?」


 そして俺にそう聞いてくる。


 うーん、使い道か。

 正直まだ考えてないな。

 そもそもどういう使い道があるか聞きに来たんだし。


 俺はニャジッタにそう言う。


「そうでしたか! それではこの原石……我らにお任せする気はありませんかにゃ!?」


 すると、ニャジッタは再びの勢いで俺にまくし立てる。


 こっちとしては別に構わないが……どうするんだ?




「こちらです」


 原石をどう使うのか聞いた俺がニャジッタに案内されたのは、商会内部、宝石工房区画。

 レースピアに来たケットシーたちは宝石加工の技術も持っており、希望者にその技術を伝授しながら工房も運営している。

 まだ加工した宝石の流通とかはしていないけど。


「宝石は嗜好品ですから。売るにしてもまだしばらく時間が経ってからですね」


 ニャジッタがそう言う。


 まあ、食材とか服とかベビー用品とか……そのあたりならまだしもまだ宝石を買う住民は居ないか。


「ですが、しっかりと技術は伝授しています。宝石加工の技術も、宝装具加工の技術も!」


 宝装具?


 俺が疑問に思うと。


「おや……主様。ご機嫌麗しゅう」


 到着した工房内部。

 入ってきた俺に気が付いたコボルト代表、ルシュが俺に挨拶をしてくる。


 ……ルシュ? 何でここに?


「ルシュ様も希望者なのですよ」


 俺の疑問にニャジッタが答えを返してくれる。

 そのまま工房内部を見渡すが、宝石加工の技術の習得の希望者は結構な数が居た。

 かなりの人数のハイコボルトたちに……ハイドワーフ、ハイエルフも少数だが居る。

 ルシュもそのうちの一人って事か。


「はい、その通りです」


 なるほどな……。

 にしても、大丈夫なのか?


 俺はルシュに問いかける。

 ルシュはコボルト代表として、種族のまとめ役や、俺の秘書、建築チームの指揮などいろいろな仕事をやっている。

 そこにさらに宝石加工技術の習得までなんて大変じゃないか?


 俺はそうルシュに聞くが。


「いえ。好きでやっている事ですので」


 ルシュはけろりとした顔でそう答える。

 ……まあ、こっちの世界の住民って俺の想像より断然体力あるしな。

 本人がこう言うんだったら何も言わなくていいか。


「さて、では早速ルシュ様、宝装具の加工をお願いしても?」


「分かりました」


 ……さっきも聞いたが……宝装具って?


 俺はルシュに声をかけられたため聞きそびれていた宝装具とやらについてニャジッタに聞く。


「宝装具とはその名の通り、宝石を使った装具です!」


 ふむ?


 ニャジッタに話を聞くと。

 宝装具とはいわゆるジュエリー……宝石を使ったアクセサリーの事らしい。

 例えば指輪やネックレス、髪飾りなんかだな。


 ただ、宝装具と呼ぶにはもう一つ条件がある。

 それは何かしらの効果を持っている事。


 宝装具は原料にした宝石の魔力を引き出し、何かしらの効果を付与したものをそう言うらしい。

 ゲームのアクセ装備みたいなものだな。


 発揮できる効果は宝石の種類ごとにほぼ決まっているみたいだが、宝石同士を組み合わせることで様々な効果を発現させることが出来、狙った効果を引き出し、さらに外面も美しく仕上げることが宝装具職人の腕の見せ所なのだとか。


「それで今、この工房で最も宝装具職人としての腕が高いのがルシュ様なのです」


 そうなのか?

 まだ習い始めて大した時間も経っていないはずだがもう教師役のケットシーすら超えたと……?


「素晴らしい上達速度でした」


「この手の技能で誰かに後塵を拝するわけにはいかないので」


 はぁ……相変わらず凄いな……。


 そういうことであれば断る理由もない。

 俺は持ってきていたダイヤの原石をルシュに渡す。

 そうするとルシュは早速作業に入るが……ふむ。


 ニャジッタ、俺も少し工房の片隅を借りていいか?


「にゃ? 代表様なら片隅どころか中央……いえ、貸し切りにしたって構いませんが……どうしてでしょう?」


 貸し切りは置いておいて。

 ルシュが作っているのを見ていたら俺も作りたくなった。

 ので。

 作業台を借り、俺も創造神器を用いて宝装具とやらを作ってみることにする。

 どう作ればいいかなんて分かってないが……まあ創造神器に任せれば何とかなるだろう。

 別に失敗したっていいしな。


 俺はそんな気楽な気持ちで作り始めた。




 ……いやまさか普通にできるとは思わなかったな……。


 内心では、流石にまあ失敗するだろうと思っていたんだが。

 俺の作業台の上には、光を吸い込むかのような暗い球体の中に七色の輝きが収められているような……何というか形容に困る宝装具? が完成していた。


 うーん? 良いのか? これ? これでしっかり出来ているのか?


 疑問に思い、ニャジッタに聞こうと振り返ってみると。


「「「……。」」」


 工房内にいた全員がこちらに向かって膝をつき、頭を地面に擦りつけていた。


 …………何これ?


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