191.第八地層
ガァァァァァァーーーーッ……!
線路との摩擦でそんな音を立てながらトロッコが勢いよく進む。
ここはレースピア裏手の巨大鉱山、その坑道内部、そこに敷かれた線路の上。
トロッコの中に座り、俺は音と高速で過ぎていく坑道の景色を眺めていた。
トロッコの中には俺のほかにもう二人。
ドワーフの代表、イアンとノームの代表ラウームが乗っている。
新たな地層を目指す時にはいつも付き合ってもらってる……まあいつメンだ。
そしてトロッコの中には俺たち三人だけだが、トロッコの外にはもう一人。
「飛ばすぜ飛ばすぜ飛ばすぜーーっ!!」
ケンタウロス代表、フリストルが気炎を上げていた。
「うっ……ちょっと気分が……」
大丈夫かラウーム?
「ちょっと休ませてくださいっす……」
坑道の最奥、現時点での最深部にたどり着き、トロッコは停車。
降りたラウームが地面に手と膝をつき少しグロッキーになっている。
心配して声をかけるが、案の定酔ったようだ。
まあ分かる。
俺も正直少しグラッと来た。
イアンは大丈夫か?
「この程度は平気ですぞ」
心配してイアンの方にも声をかけたが、けろっとした顔でそう答える。
イアンは酔いには強い方らしい。
「いやー走った走った! 草原を駆け回るのも良いけど、線路の上を寸分たがわず駆け抜けるのもいいもんだ!」
そんな俺たちとは正反対にいやー楽しかった、とホクホク顔で言っているのはフリストル。
満面の笑顔を浮かべている。
ふぅ……まあ、フリストルが元気を取り戻してくれたならよかった、か?
少し前魔導トロッコが試作され、それに仕事を奪われるんじゃ? と不安になっているフリストル。
そんなことはないと強く励ましたものの、やはりこういうのは行動で示した方が良いか? と俺は考え、今回坑道最深部までのトロッコ引きをお願いした。
魔導トロッコも量産はまだ時間がかかるしな。
それでまあ、最初は良かった。
フリストルも任せてくれて嬉しい、と言いながら穏やかに走らせてくれていた。
契機はアレだな、俺。
穏やかに走らせてくれていた道中、俺は良かれと思って魔導トロッコも便利だが、ケンタウロスの方にも利点はある、とフリストルに話しかけ始めた。
ケンタウロスの方が小回りが利くとか長距離を走るのであればケンタウロスの方が強いだとか。
そんな話、というか励ましをしていたらフリストルのテンションはどんどん上がっていき……。
「行くぜ行くぜぇーーーっ!!」
と、加速。
かなりの速度で線路上を疾走し始めた。
それだけの速度を出しながら線路から全くはみ出す様子も見せなかったのは正直見事だが……まあ、うん。
ちょっと酔いはしてしまった。
「ふぅ……はぁ……ちょっと落ち着いたっす……」
と、道中の事を思い返していたら、ラウームが復活したようだ。
さっきまで少し白くなっていた顔が大分改善している。
でもまだちょっと白いな。
本当に大丈夫か? なんならもう少し休んでても……。
「いえいえ大丈夫っす! 頭に迷惑かけるわけにはいかないっすからね!」
むん! と、力こぶを見せつけるようなポーズをとりそう言うラウーム。
迷惑だなんてこれっぽっちも思ってないが……まあ、ラウームがそう言うのであれば始めていこう。
俺たちはトロッコから離れ、早速坑道を先へと掘り進めていくことにする。
かつーんっ……かつーんっ……!
俺がつるはしを叩きつける音が坑道に響く。
掘るたびに毎度毎度創造神器のありがたみに気づかされる。
なんせどれだけ硬い地層でも、一回つるはしを叩きつけるだけで大体一メートル四方くらいごりっと掘れるからな。
俺一人で何十人分の仕事が出来るんだってレベル。
というわけで掘り進めるのは基本俺だ。
イアンとラウームにはサポートと、フリストルには掘って出た土や鉱石の運搬を頼んでいる。
本来イアン達は新たな地層を見つけた際、その地層が俺以外に掘れるものかどうかを調べるために来てもらっている。
俺が居ない時の採掘は基本ドワーフとノームのコンビでやってもらっているからな。
だが第七地層の更に先……第八地層がいまだ発見できない為、俺のサポートに徹してもらっている。
すまないな。
「はっはっは、代表様が気になされることはありませんぞ! 代表様の採掘姿を見ることが出来るのは役得ですからな!」
「そうっすよ! ぜんっぜん気にする必要ないっす!」
……ありがとう。
二人はこう言ってくれているが、流石にこのままずっと手伝いだけやってもらうっていうのもなんだか少し気が引ける。
気合を入れてガンガン掘っていかないとな……。
そう改めて決意し、腕に力を込めて俺は創造神器を振り下ろす。
すると。
バゴォッ!
俺の手にさっきまでとは違う感触が走る。
なんといえばいいのか……何かを打ち抜いたようなそんな感触。
そして俺はその感触には覚えがあった。
これは……まさか……?
そう考えた俺が創造神器を打ち付けた場所にしっかりと視線を向けると、そこにあったのは青みがかった白い輝きを放つ鉱床。
第七地層とは明らかに違う地層だった。
「ふむ……間違いありませんぞ。明らかに別種です」
「その通りっす! どう見ても違う地層っすよ!」
新たな地層を見つけて数分後。
イアン達にも聞いてみたところ間違いなくそうだろうという答えが返ってきた。
まあ明らかに見た目からして違うしな。
……よし!
新たな地層を見つけたという事実に心の中から少しずつ歓喜が湧き出してくる。
第七地層長かったからな。
まあその分たくさん掘れるって事だから嬉しいけど。
さて。
一旦歓喜は抑えて早速だがこの新たな地層……第八地層では何が掘れるのかを見ていこう。
まず目の前に見えている青白の鉱石っぽい鉱石。
創造神器で掘り出す。
「ふぅむ、これは……ダイヤモンドですな!」
ごろりと地面に転がったそれを拾い上げてじっくりと確認し、イアンがそう結論を出す。
やっぱりか。
俺も何となく予想は出来ていた。
カットされていないダイヤの原石って見たこと無いから確信は出来なかったけど。
……ダイヤの原石って誉め言葉で使われるけど、実際見たことある人ってどれだけ居るんだ?
そんなことを考えながら原石を光石にかざして見てみる。
原石の状態にもかかわらず、ダイヤモンドはキラキラと光り、とてもきれいな輝きを俺に見せてくれた。
カットされていない状態でこれか。
宝石の王様と言われるだけの事はある。
さて、このダイヤの使い道は後で考えるとして……今は試掘を続けよう。
そして第八地層を軽く掘った結果、見つかった鉱石はダイヤを入れて四種類。
おそらくは全部宝石で……それぞれ黄色の原石、黒い原石、そして黒灰色で内側に虹色の輝きを持つ原石だ。
「それぞれトパーズ、オニキス、そして……これはもしやブラックオパール……? 儂でも実物は初めて見ましたぞ!」
興奮し、先ほどの俺と同じように黒灰色の原石を光石にかざすイアン。
ブラックオパールか……ちょっと聞いたことがあるな俺も。
前世でも結構貴重な宝石だったはず。
……やっぱりこの鉱山とんでもないな。
毎度毎度、貴重な鉱石宝石がポンポン出て来る。
「しかりですな」
「土もめちゃくちゃな硬度してますしっすね!」
そうだな。
俺は創造神器でポンポン掘れるから忘れがちだが、この巨大鉱山の土は本当に硬い。
第七地層まで来ると、ミスリル製のつるはしを使い、進化したハイノームに土魔法で土を柔らかくしてもらって、ようやくギリギリ掘れている有様だ。
この分だと第八地層は……。
とりあえず試してもらおう。
「ぬぅっ……何というっ……硬さっ!」
「ひぃ~これ以上柔らかくできないっすぅ~! 頑な過ぎるっすこの土~!」
「いやっ……硬っってぇっ! 土なのかコレ!? 鉄の間違いじゃなく!?」
採掘を試してみてもらった結果がコレ。
土魔法で柔らかくしてもらっても全然掘れなかった。
土や鉱石の運搬を終えて戻ってきてくれたフリストルにも試してもらったが、歯が立っていない。
柔らかくしてなお鉄と勘違うほどの硬度か。
これは、しばらく第八地層を掘るのは俺一人だな……。




