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ゆるっと街づくりin異世界~すべての種族が住む街を作れ!?~  作者: 下河スズリン


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190.魔導トロッコ

「いやー失敗失敗。少し張り切り過ぎてしまいました……」


「流石に調子に乗り過ぎたの……」


 トロッコの前転現場にたどり着いてしばらく。

 軽いかすり傷しか負っていなかったハイコボルトとハイドワーフの二人は、こういう時の為に色んな建物に備え付けてある救護箱の中の薬草を傷に摺り込みながら言う。


 いや……本当に大丈夫なのか? あんなに派手にごろごろ転がっておいて……。


 俺はちらりと線路からかなり離れたところまで転がって行っているひっくり返ったトロッコを見ながらそう言う。

 完全に乗ってたらただでは済まない転がり方してるんだが……。


「ご心配なく、先ほども言いましたが乗っていませんでしたから」


「その通りですじゃ。止まり切れないと判断した瞬間に飛び降りましたからのう」


 そう。

 俺は派手に転がるトロッコに注意を奪われ気づかなかったが、乗っていた二人はトロッコが車止めにぶつかり前転をし始めるその直前にトロッコから飛び降りたらしい。

 それゆえに軽い擦り傷は出来たがそれ以上の傷は負わなかったと。


「開発途中の試乗でも止まり切れずに派手に転がることが良くありましたからね」


「もう慣れっこですじゃ」


 いやそんな慣れるくらい事故るんだったら人が乗るんじゃなくて木の人形でも乗せれば……。


「いやあそれをやると止まる方法がなくなりますでのう」


 え?


「代表様。そこからは私が」


 救護箱を取ってきて念のため、病院にも連絡を入れてくれていたハイデモンズが俺のところに戻ってきてそう言う。


「先ほど途中まで申し上げましたが……魔導トロッコには止まる操作があります」


 ああ、言ってたな事故る前にそんなこと。


「はい、その操作がこのように」


 そこまで言うとハイデモンズは転がっているトロッコに近寄り、そのエンジンに刻まれた魔方陣に手をかざす。

 すると、転がってなお淡く輝いていた魔法陣は光を失い、回り続けていた車輪も勢いを落とし始めた。


「発車の時と同じでこの魔方陣を操れば、たとえ魔石が残っていようとエンジンは停止します」


 なるほど……そういう仕組みなのか。

 でもそれだと、加速は止まっても停止するまでにはかなり距離が必要なのでは?


 魔導エンジンが止まったところでそこまでに乗っている勢いは消えない。

 なら止めてもしばらく走り続けるのでは……。


「もちろんこれだけではありません。当然通常のブレーキも備え付けてあります」


 俺の危惧もすでに解決されていたようだ。

 まあ当然か。

 ブレーキ無しトロッコなんてただの危険物だしな。


 転がったトロッコを起こしてハイデモンズが指す場所を見てみると、そこにはレバーがあった。

 魔導エンジンの反対側に大きくでん、と備え付けられている。


「魔導エンジンを止め、そしてブレーキをかける。これで問題なく止まることが本来は出来たのです。両方同時に操作できるように今回の試乗には二人乗せましたしね」


 なるほど、それで……。


 俺は納得する。


 先ほどハイドワーフが木の人形を乗せると止まれなくなると言ったのは、停止操作には人の手が必要だからだったんだな。


 物理ブレーキは頑張れば外側から操作できるかもしれないが、魔導エンジンの停止操作は遠隔で行うのは難しいんだろう。

 ブレーキかけたところでエンジンかけたままだったら止まり切らないしな。


 そして今回の試乗では念には念を入れて、物理ブレーキ操作役と魔導エンジン停止操作役で二人乗せた、と。


 ……それなら何で事故ったんだ……?


 聞けばしっかり安全策をとってのテスト走行だったようだ。

 ならなぜ……?

 そんな思考が俺の頭に走る。


 俺がはてなを浮かべているのを察したのか、それとも単に報告の為か。

 試乗していたハイコボルトとハイドワーフの二人が口を開く。


「その……申し訳ありません、代表様……。実は我々、ブレーキをかけるタイミングをかなり遅らせてしまいまして……」


 はい?


 ……話を聞くとこうだ。


 本来であれば、魔導トロッコは約百メートルあるこの直線線路の八割を走破した地点……つまりは残り二十メートルほどの場所でブレーキをかけるつもりだった。


 しかし、乗っていた二人はせっかくなら俺に良い所を見せようと、ブレーキをかける場所を大きく遅らせた。


 こうすれば速度もアピールできるし、そこから止まれることもアピールできる、と。


 そう考えた二人はその思惑を実行するが……残念ながら魔導トロッコを止めきることが出来ず、ドンガラガッシャンしてしまったらしい。


 ……うん。

 まずは……まあ、うん、ありがとう。

 俺に良い所を見せようとしてくれたその気持ちは嬉しい。

 ……だが、それで危険走行したのは駄目だ。

 そこは怒る。


「「はい……申し訳ありません……」」


 まるでこの世の終わりのような表情で俺の説教を受け入れている乗員二人。

 いや……そこまで落ち込まれるとちょっとこっちもいたたまれなくなるというか……。


 だけど下手したら大けがしてたかもだしな……ここはしっかり言っておかないと……。


 俺はそう考え、心を鬼にして二人にきっちり注意した。




 そしてその後。

 しっかり反省した様子の二人を解放し、派手に転がったにもかかわらずほとんど損傷していなかった魔導トロッコを再び線路に戻して、俺たちはテストを続けることにした。


「こういうこともあろうかと頑丈に作っておりますので!」


 直線は最後の事故を起こしたとはいえ、問題なく走ることは出来ていたので次はカーブ。

 直線コースのように停止を遅らせることの無いよう何度も念押ししてテスト走行。

 何なら俺が乗ってブレーキをかけても構わないと提案した。

 が。


「いえいえいえいえ! 代表様にお手数をおかけすることでは!」


「そうですじゃ! それに危険でもありますし!」


「代表様を危険にさらしたと知られたら我々は……!」


 顔を青くして首をぶんぶん勢いよく振りながら遠慮された。

 ちょっと乗ってみたかったが……まあそのうち本格稼働されてからでいいか。


 そしてカーブ路線のテスト結果だが、問題なく走行成功。

 それなりの速度でカーブに突っ込んだ魔導トロッコは脱線の気配も見せることなく綺麗にカーブを曲がり切り、今度はしっかりと早めにかけられたブレーキによりしっかりと停止した。


 そのまま上り、下り線路と続けていったが……どれも問題なく走行成功。

 何をしているのか、と集まってきたドワーフやノームたちもおおっ、と歓声を上げている。

 一部上げてない者もいるが。


「どうでしたか、代表様!」


 テスト走行を終え、車体ごと戻ってきた魔導トロッコ開発チームの面々が目を輝かせ俺に感想を聞いてくる。

 ので。

 俺は素直に答えた。


 素晴らしかった。


 いや本当に素晴らしい。

 今まで人力で動かしていたのに、魔石があれば自動で動かすことが出来るようになる。

 これは相当の進歩だ。

 しかも魔導エンジンはトロッコだけじゃなく他の物にも応用できるだろう。

 なんなら自動車を作ることだってできるかもしれない。


 魔導エンジンの可能性に興奮した俺は惜しみない賛辞を開発チームに送る。

 すると。


「「「ありがとうございます!!!」」」


 開発チームは感極まったように深く頭を下げたのだった。




 さてそれから。

 しっかり結果を出した魔導トロッコは量産されることになり、作った開発チームも、鉱山に採掘に向かう者たちもかなり喜びをあらわにした。


 が。


 まあ……うん。

 あらわにしない者も居て。


「ぶるる……! 何だよアレ……あんなのより断然俺らの方が早いし……俺らの方がやれるし……」


 うん。

 ケンタウロスだ。


 魔導トロッコの走りを見たケンタウロスたちは自分たちの仕事が無くなる、と、魔導トロッコを敵視、あるいは恐怖し始めた。


 まあこうなるよな。

 鉱石……というか街の運搬は現在ケンタウロスが一手に担っている。

 そこに機械力……いや魔導力を使う乗り物が出てきたらこうもなる。


 あー……落ち着いてくれフリストル。

 どっちも良くてどっちも良いものだ。

 ケンタウロスたちは不安になっているみたいだが、仕事が無くなるなんてことはない。

 代表として約束する。


 俺はそう言って彼女を宥め、フリストルの方からも、ケンタウロスたちを落ち着かせてもらうように頼む。


「代表さんがそう言うならもちろん手伝うが……その……」


 ? めずらしくちょっと歯切れが悪いな?


「いや、代表さんを信じていないなんてことは無い。無いんだが……ほんとだよな? ほんとに俺らの役目が無くなったりとかは……しないんだよな?」


 フリストルの瞳が微かに揺れている。

 不安に思っているらしい。


 もちろんだ。

 ケンタウロスに限らず、皆レースピアの大事な住民たちだ。

 役目が無くなるなんてことは絶対に、無い。


 俺は強くフリストルの手を握り締め……その揺れる瞳をまっすぐ見つめ断言した。


 すると、フリストルの瞳はみるみるうちに落ち着きを取り戻し……。


「……へへっ! 俺としたことがつい弱気になっちまった! 任せといてくれ代表さん! 皆にはきっちり話付けとくからよ!」


 照れからか赤みを増した頬でそう言うと、フリストルはダカカッ、と蹄音を響かせ走り去っていった。


 いや、そんなに急がなくても……。

 ……まあ、元気を出してくれたならそれでいいか。


 俺もしっかりケンタウロスたちに言葉をかけておかないとな。


 そう思いながら俺もフリストルの後を追った。

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