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ゆるっと街づくりin異世界~すべての種族が住む街を作れ!?~  作者: 下河スズリン


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180/213

180.告知

 よし。

 放送機は無事に完成した。


 量産のめども立っている。

 イアンが言うには火の精霊イフリータたちと風の精霊シルフたちにも協力してもらうことで、自分たちでも精錬は十分可能だ、とイアンは胸をドンと叩いていた。


 なので俺は次の段階に移ることにした。




「ふむ……この辺りに設置するのが良いのでは?」


「でもこれだとこっちに壁があってあっちの方には届きづらくない?」


「……確かにそうですね。では──」


 次の段階とは……そう、設置だ。

 作成が終わったのだから設置する。

 当然の流れだな。


 次の段階に進んだ俺は今、リネイアとシエルに手伝いを頼み、空から見渡してもらって、効率よく街全体に声を届けるための配置を一緒に考えて貰っている。


 いや一緒にって言うか、向こうに考えて貰っているって言うのが正しいかもしれない。

 俺は高い所に設置すればいいんじゃないか? みたいなふわっとした提案しかしてないから。

 具体的な場所は二人がああでもないこうでもないと検討し合ってくれている。

 ……戦力外で申し訳ない


「いやいやそんなことないよ! 高い柱を立ててそのてっぺんに設置すればいい、って発想は私たちからは出なかったしねー」


「はい。このアイデアのおかげで必ずしも建物に設置する必要はない、という知見を得られました。ありがとうございます」


 ……そう言ってくれるならよかった。


 こっちを気遣ってくれているのかもしれないが、いやというかまず間違いなく気遣ってくれているんだが。

 ちょっと心が軽くなった。


 そういうわけで設置場所の検討を進めていく。


 理想としてはもちろん最小の数で街全域をカバーできるような配置。

 こう言うとパズルみたいだな。


 現在のレースピアには高層の建物が……まあそれなりにはあるが……多いというわけでもない。

 畑もかなり多いしな。

 なので俺の柱を立ててその天辺に放送機を置くという案もそれなりには有力だ。


「ですが街全域となると畑も含みます。そうすると最小の数で済ませるなら畑の中に柱を立てることになりますが……」


「それだと畑の世話とか収穫の時とか邪魔だよねぇ……なんとなく見栄えも悪いしー……畑は除外するのじゃダメなのー?」


 うーん。

 直近の予定は文化祭の告知だからそれでもいいと言えばいいんだが。

 今後はこの放送機をそう言った告知だけじゃなく緊急事態の周知なんかにも使いたいんだ。

 そのためにも畑で作業している者にも届くようにしておきたい。


「なるほどー。万が一聞き逃して逃げ遅れでもしたら大変だもんねー……。……じゃあ、その時には私たちが放送機? 持って飛ぶのは?」


「緊急事態に迅速に情報を伝えたいというのに、わざわざ無駄に手間と時間を増やしてどうするのですか」


「言ってみただけだってばー……まあダメかー……」


 そんな話をしながらも作業の手は止まらない。

 ある時は空を舞い、ある時は大地を歩き。

 高低差も計算に入れながら放送機の設置場所の意見を出し合うリネイアとシエル。


 俺も時に意見を出しながらテキパキとこなし。

 そう時間はかからずに設置場所は決定した。




 ふむ……。


 俺はリネイアとシエルが放送機の設置場所を記入してくれた簡単な地図を見ながら声を漏らす。

 その地図にはおおむね等間隔に印が書かれており、街全体をカバーしている事が一目で分かる。


 ……まあ、一部ちょっと偏っている場所はあるが。


「畑はねー……しょうがなく柱建てたけど、邪魔にならない場所選んだらちょっと偏っちゃったよねー……」


 そう。

 畑に放送機用の柱建てるのは見栄え悪くない? 何か他の方法ない? 問題は、特に解決方法が思いつかなかったので、しょうがなく柱を立てることにした。

 まあ最後の抵抗で柱じゃなくノームに頼んでかなり高い木を生やしてもらったけど。


「柱よりましだけど畑の中にでん! と高っかい木がそびえたっているとちょっと違和感があるよねー」


「果樹たちの間であればあまり違和感はないのですが」


 うん。

 まあこれはしょうがない。

 そのうち何か妙案が出たら入れ替えておこう。


 ノームの中でもハイノームに頼めばあの五メートルは軽く超えてる木も移動できると分かったし。


「あれは驚きましたね……木が根を使って地上を歩き出すのですから……」


「一瞬トレントが入り込んだのかと思っちゃったよ」


 トレントって木に擬態する魔物だったか? やっぱりいるんだな……。


 と、そんな話もしつつ。


「さて……話を戻しますが、極力数を絞ったとはいえ、選定した地点すべてに放送機を置くとなればおよそ百個ほどが必要になりますが……」


 うん。

 思ったより多くなったな……。


 俺はリネイアに伝えられたその数に、ちょっと衝撃を受ける。

 街の広さは分かってはいたが、あらためて実感するとやっぱりちょっと驚く。


 だけどまあ問題はない。

 放送機は今現在もイアン達が量産してくれている。


 原料の隧音石と拡音石、あとサファイアとルビーも決して尽きぬほど……ではないが、放送機百個作っても問題ないくらいには有る。

 問題ない。


「かしこまりました。それでは放送機の数が用意出来次第……」


 ああ。

 早速、放送を始める。




 ……えーそういうわけで。

 参加を希望する者は俺の屋敷で参加登録を行って、提出する作品の制作に取り掛かってほしい。

 皆の作品を楽しみにしている。

 それでは。


 …………切れたか?


「はい。問題はないと思われます」


 三日後。

 俺の姿は屋敷の屋上にあった。

 普段は開放されてないが、こんなこともあろうかと一応上がれる階段は作ってある。


 そこで俺は、目の前にある銀色に光る棒に青く輝く石……隧音機が取り付けられた、さながらマイクスタンドのようなそれに話しかけ、話しかけ終わると傍に控えていたリネイアに問いを投げた。


 リネイアからの答えは、”問題ない”。

 つまりここまでは目論見通りいったということだな。


 さて、目論見というのは言うまでもない……街全体に放送を届けることだ。

 俺の屋敷の屋上から街中に俺の声を届ける、そのためにここまでいろいろやってきた。


 さて、リネイアが言ってくれたが、とりあえず今のところは問題ない。

 一番近場の放送機から、問題なく声が届いたことと、流した魔力をカットしたことでしっかり放送機の機能も停止したことが確認できた。


 ちなみに確認の方法は旗信号だ。

 成功なら白、失敗なら赤の旗を掲げてくれと言っておいた。

 上げられた旗は白一色みたいだな。


「さーて後は無事に来てくれるかどうか……来てくれないとまたやり直しだから来てー! 仕事増えるのやだー!」


 一緒に待機しているシエルが、ひー、と頭を抱えながら泣き言を言っている。


 うん。

 夏が終わってからというものずっと働いてもらってるからな。

 本当に申し訳ないんだがもう少し頑張ってほしい。

 冬にはきっと……うん、きっと休めるから……。


「なんで歯切れ悪いのー!?」


 ごめん、ここ正直何が起こるか分からないとこあるから……。


「分かるけどー!?」


 そんな話をしていると。


「……来ましたね」


 リネイアが周囲の空を見ながらそう言う。

 つられて俺も見るとそこには白い翼をはためかせながらこちらへ向かってくるエンジェルたち。

 全方向から集まってきている。


「ほっ……良かった、成功したみたいだねー」


 まだ正確には分からないけどな。


 放送を行う前。

 俺は見張り塔に詰めているエンジェルたちに、もし放送が聞こえたら一人報告に送ってくれ。聞こえなかったのならそのまま見張り業務を続けて欲しい。と、お願いしておいた。


 見張り塔は街の外周、一番外側に存在する。

 つまり見張り塔まで聞こえたなら街の全域に聞こえている事とほぼ同義だ。


 なのでこれは俺の頼んでおいた通り、聞こえた報告を送ってくれたんだろう。


「ご報告します。第一見張り塔、問題なく聞き取れました」


「第二見張り塔、同じく」


「第三見張り塔──」


 次々と俺の目の前に降り立ってくるエンジェルたちが次から次に矢継ぎ早に報告してくれる。

 俺も矢継ぎ早に報告に対する礼を送りつつ、最後まで聞き終わる。


 報告に来なかった見張り塔は……ゼロだ。


「はーよかったーっ! 肩の荷が下りたーっ!」


「お疲れ様でした、代表様」


 いいや二人こそ。

 イアン達も頑張ってくれたし皆のおかげだ。


 俺たちは放送が無事成功したことを皆で祝い合う。


 ……さて。


 これで告知も終わったし……文化祭の開催に向けてこのまま頑張ろう。


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