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ゆるっと街づくりin異世界~すべての種族が住む街を作れ!?~  作者: 下河スズリン


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178.魔封じの……縄?

 ふぅむ……少しは落ち着いてきたとはいえ、まだまだラッシュは続いてる……やめておいた方が良いか?


「いいえだからこそやるべきなのです代表様! ファンタスティックに!」


 出産も大分落ち着いてきたレースピアの街。

 落ち着いてきたとはいえまだまだ続いているその状況に、俺は執務室で頭を悩ませながらそんなつぶやきを漏らした。


 すると、誰も居ないはずの執務室にそんな声が轟き、天井からフォイルが降ってきて、俺の目の前にすたっと着地する。


 ……え?


 俺はその光景を目を擦ってもう一度見る。


 俺の目の前にフォイルが現れたという光景は変わらない。


 上を見る。


 何の変哲もない天井がある。

 何か隠し入口が開いたような、そんな痕跡は無い。

 というかこの屋敷は俺も建築に関わったから分かっているが、隠し通路の類とかはない。

 建てる時ちょっと欲しいなとは思ったけど。


 えぇーー……と。

 どうやって入ってきた?


 俺は目の前でまだ着地の時のポーズのまま、そんな自分の姿に少しうっとりしているフォイルに問う。

 姿を隠す魔法が使えるのは知っているが、さすがに姿が見えずともドアを開けたら俺も気づいたはずだが……。


「ああ、それはもちろん転移魔法で」


 ぱっぱっ、と埃を払うような動作をしながら俺にそう言ってくるフォイル。


 この部屋には……というか屋敷には埃なんて欠片も落ちていないから安心していいぞ? 家事妖精たちの誇りが埃を許さないみたいだからな。


 なんてダジャレを言っている場合ではなく。


 そういえばその手があったな。


 俺はフォイルは姿を隠す魔法だけではなく、転移魔法も使える事を思い出す。

 最近は使ったところ見なかったから頭から抜けてた。

 いやだってフォイルが神出鬼没なのは、街ではほぼ常識だからいちいち転移魔法使ったのかな? とか考えなくなってたし……。


 ちなみに転移魔法は他に使える者は街にはいないし、他の住民たちに聞いても転移魔法を使える者なんてほぼ伝説の域らしい。

 嘘か真かどこぞの国に転移を可能にする魔法遺物があるとか、住民が知っているのはそれくらいだった。


 そんなほぼ伝説の転移魔法を当然のように使われるとそんなに貴重なものでもないのかな? って気がしてくるから不思議だ。


「ふふ、分かります。貴重とは普通の中にあってこそ輝くもの。周り全てが貴重なのであれば、それはもう普通と呼べるものです。転移が使えようとこの街では普通。そういうことですね?」


 いや、ちょっと違うが……。


 と、そんな話をしていると。


「私たちはこの街でも貴重であってほしいと願っていますよ」


「ええ、その通りです。仕事が増えますから」


 ぽん……と、俺と話していたフォイルの両肩にそれぞれ手が置かれる。

 ピタリ……とまるで彫像のように止まったフォイルがゆっくりと振り向くと、そこに居たのはハイラとリネイア。


「代表様の元から急に魔力反応がしたので急いで駆けつけて見れば……転移で屋敷に入るのは禁止だと前に言いませんでしたか?」


「こんな事案が増えるようであればこちらもそれなりの対応を考える必要がありますから、転移魔法が使える者は増えて欲しくないですね」


 笑っていながらも……どこか背筋が冷たくなるような圧を二人から感じる。

 傍目で見ているだけの俺がそう感じるのだから、フォイルはもう冬かってくらいの寒気を感じてるんじゃないか?


 そんな俺の推測を裏付けるように。


「あ……ははは……それはファンタスティック申し訳ない。こちらの礼儀がなっていなかった。本当に。……というわけで失礼っ!」


「「ダメです」」


 フォイルは謝りつつも即座に身を翻して逃げようとした、が。

 残念ながら二人の方が上手だったな。

 目にもとまらぬ速度でフォイルは縛り上げられ、二人からのお説教を受けることになった。




「えー……この度は私の浅慮で関係各所に迷惑をおかけしてしまい誠に申し訳なく思っております……」


 しばらく後。

 フォイルは耳と尻尾をしおれさせていた。

 ハイラとリネイア二人がかりでのお説教は大分効いたらしい。

 ファンタスティックも言えなくなってる。

 ……まあ、傍から見てる俺でもこの二人からのお説教は受けたくないな……って思うくらいだったしな。


「代表様にお説教などすることはありません」


「はい。代表様がなされることはすべて正しいですから」


 そう言われるのはそれはそれでちょっと怖いが……まあ良い。

 フォイル、大丈夫か?


 俺はしおれているフォイルにそう声をかける。

 転移でここに来た目的をまだ聞いていなかったからな。


 さっき転移してくるや否ややるべきだって言っていたのはやっぱり……。


「ファン……タ……スティック! もちろん文化祭ですっ!」


 あ、復活した。


 そしてやっぱりか。


 そう。

 俺は先ほど、去年やった文化祭をやるかどうか悩んでいた。

 毎年やりたいとは思っていたが、今年は初めて子供世代が産まれ始めた年。

 来年以降なら経験も積み上げられているから余裕は出るだろうが、今年は念のため見送った方が良いか? とそう考えていた。


「とんでもない! とんでもファンタスティック!」


 とんでもファンタスティック?


「だからこそです代表殿! 出産を控えた、もしくは終えたものは精神的に少しファンタスティック不安定になります! だからこそ文化祭を開きその心をファンタスティックに慰撫すべきなのです!」


 完全に勢いを取り戻したフォイルが、縛られたまま俺にそうファンタスティックまくし立ててくる。

 ……移った。


 まあ芸術大好きフォイルからしてみれば文化祭の非開催は大問題だしな。


 そう言われると開催しても良いかもしれない、とそう心が動く。

 ふむ……どうするか。


「開催するのが良いと思います」


 ハイラ?


 悩んだ俺に開催票を投じてきたのはハイラ。


「病院で出産している者たちの様子を見ておりますが……フォイルの言う通り、精神が不安定になる者も少なくありません。そんな彼女らから不安を取り除くのは良い案だと思います」


 ……なるほど。

 病院も管理しているハイラがそう言うのであれば、俺の想像以上にブルーになっている者が多いって事か。

 俺が様子を見に行ったときは皆心配かけまいと空元気を出してくれていたのかな?


 うん。

 それじゃあ開くべきだな。

 そんな住民たちの不安を減らせるというのならやらない理由がない。


 だが……。


「もちろん分かっております。万が一の無いよう努めます」


 ああ、頼む。

 開いた結果、出産の方がおざなりになったらいけないからな。

 そっちの方はしっかりお願いしておく。


 だがまあ、病院のエルフたちもそれなりに慣れては来ている。

 大丈夫だと信じよう。


 ……念のため救急馬車用意しておくか……それなりの数……。

 うん、まあね? 信じてはいるけど事が人命にかかわる以上ね? 


「ファンタスティック! 話はまとまったようですね!」


 いまだに縛られたまま、大人しく話を聞いていたフォイルが確認を取ってくる。


 まあ、まとまったけど……いつまで縛られてるんだ? 転移魔法で抜けたら?


「そうしたいのはやまやまですが出来ないのですよ。ファンタスティックな縄です。これは」


「その縄は特別性ですからね」


 縛っている縄の端を持っているリネイアがそう言う。

 なんかちょっとシュール。


「この縄は、アラクネが自身の糸とゴールデンシープの毛を縒り合わせて作った物に、私が魔力を注いだモノです。縛られている者は魔法も使えず、身体能力も極度に抑えられます。かつて私たちがつけられた魔封じの首輪も参考にした代物ですね」


 そう言えば魔封じの首輪なんてものもあったな……。

 リネイアとシエルがフォイルに連れられてやってきたときに着けられていたものだ。

 少し懐かしい。

 確かアレは……ムイが外したんだったか。


「そうですね。ですがいくらムイ様でもこの縄を外すのは……」


 と、リネイアがそこまで言ったところで俺の方に柔らかい衝撃。

 見ればそこに居たのはムイ。

 どこから来た?


 俺の疑問を置き去りにして、ムイは俺の方から飛び降りる。

 一度俺の肩経由する必要あった?


 そのままぽよんっ、と縛られたフォイルに取り付くと、ずぶずぶと見る見るうちに縄がムイの身体に取り込まれ……。


 ほどなく、するり、と、強く縛られていたフォイルは自由を取り戻した。


「なんと……当然のように。凄まじいですね、ムイ様は……」


 ムイがリネイアが持っていない方の端から縄を飲み込んでいっているため、ムイを釣り上げているように見えるリネイアがそう漏らす。

 ムイはそのまま縄を飲み込みながら、リネイアの手まで移動しきり、縄を全てのみ込んだ後、ぺいっ! と束ねた状態で縄を吐き出し、俺の肩に戻ってきた。


 さすがはムイだ、片付けもできる。


 ムイは誇らしげだ。


 さて。

 なんかものすっごく話が逸れちゃったけどとりあえず。

 文化祭は今年も開催することにしたからよろしく頼む。


「「はい、かしこまりました」」


 自由を取り戻して伸びをしているフォイルもな。


「もちろんさ代表様! こちらから開催の再考をお願いしたのだからね! 全て安心して任せてくれていい! ファンタスティックにね!」


 よし。

 頼んだ。


 さて、となると俺も何か作らないとな……何を作るか。


 そう考えたところで肩のムイが視界に入る。


 せっかくだからムイも何か一緒に作ってみるか?


 ふと思いついたので俺はムイに提案してみる。


 すると。

 ぶぶるぶるぶるぶるぶるっ!


 ムイは激しく震えだした。

 うーん……どっちだ?


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