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ゆるっと街づくりin異世界~すべての種族が住む街を作れ!?~  作者: 下河スズリン


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176.出産

「やった終わったー!」


「お疲れさまでしたにゃ……」


「お疲れさまでした、代表様」


 ああ、皆お疲れ。





 収穫作業が一段落した後。

 収穫が終わっても奮闘が終わらなかった管理班を手伝い、収穫完了から少し遅れる形でなんとか収穫の管理業務も終えることが出来た。


 本当に大変だったな。


「ほんとだよー、正直ほんともうこんなのこりごりなんですけどー」


「商品が多いのは嬉しいことですにゃ……でもそれはそれとして疲れましたにゃ……」


「二人とも……いえ、今は見逃しましょう」


 大漁の書類が片付いてスペースが出来た机に突っ伏すシエルとニャジッタ。

 そしてそれを見つめながらふぅ、とため息を吐くだけで済ませるリネイア。


 まあ本当に忙しかったしこれくらいは良いだろう。


「でしょー!? これくらい許されるよね! はー疲れた! 私はもうしばらくは絶対働かな――」



「――申し訳ありません主様、緊急のご報告です」



 と、シエルがそんなことを言いかけた時に入ってきたのはルシュ。


 緊急? どうした、何があったんだ?


 俺はすぐに気持ちを切り替えてルシュにそう聞く。


「はい、つい先ほど……ハイコボルトの一人が産気づきました。おそらく、今頃は出産していると思われます」


 ……ここで来たか! 予想はしてたけど!

 ルシュ、案内して欲しい!


「はい、こちらです」




「これって……もしかしてさ」


「シエル。戸籍を用意してください。コボルト用の物を」


「終わったばっかなのに仕事増えたー! やだー!」




「あっ……主様! 私どものためにわざわざ……!?」


 ああ、もちろんだ。


 ルシュに案内された先はレースピア病院の一室、その手前。

 不安そうに尻尾をバタバタさせていたハイコボルトの男性が俺にそう声を掛けてきた。

 その問いに答えを返し、そのまま俺も問いを返す。


 おそらくもう産まれているって聞いたが……?


「はい、つい先ほど――」


 ──オォォォォォォォーーーーン…………


 ……今のは?


 目の前のハイコボルトの男性が答えようとした瞬間、目の前の一室からか細い遠吠えのような声が。


「ああまた! すみません主様少し失礼します!」


 あっちょっ……また?


 ハイコボルトの男性は行ってしまった。


「申し訳ありません、主様。彼も普段ならこんな無礼は……」


 ああ、分かってるルシュ。

 出産という一大事に焦るのは当然のことだ。

 それにこれくらいのこと無礼なんて思ってない。


「寛大なお言葉に感謝します」


 さて、俺もちょっと様子を見に行くか。

 邪魔にならないよう遠目から見よう。




 そうして一室……というか病室に入った俺は、ベッドの上で抱き合っているハイコボルトの男女の姿を目撃する。

 その間には布に包まれたおそらく赤子。

 さらにその周りをエルフたちがパタパタと動き回っている。


 さっきのかすれたような遠吠えみたいな声はコボルトの産声だったんだな。

 まあ種族が違うんなら産声が違っても不思議はないか。


「……あっ、主様! すみません先ほどは……!」


 ああ、構わない。

 気にしないでくれ。


「ありがとうございます……!」


 しばらく病室の端っこで様子を見ていると、ハッ、と我に返ったハイコボルトの男性が俺の方に頭を下げてくる。

 その言葉で状況を理解したのか、ベッドに横たわっている女性の方も上半身だけでぺこぺこと頭を下げてくる。


 出産を終えたばかりの母親に無駄な消耗をさせるわけにはいかない。

 俺はすぐに構わない、と静止し、祝福の言葉を贈る。


 出産おめでとう。


「「あ……ありがとうございます!」」


 感極まったように興奮し、さらにぺこぺこしてくる二人。

 だからいいって……まあ、そんなに喜んでくれるなら良いか……。


「本当に、嬉しいです。主様からの祝福を頂けて……! これからの活力になりました!」


 うん? これから……?


 と、喜びからやっているのが分かるから止めづらかったが、出産直後なんだし落ち着いてもらおうとやんわりと落ち着かせようとしていると、ちょうど気遣おうとしていたハイコボルトの女性からそんな言葉。


「はい! これからもう三人ほど産むので!」


 ……もう三人?


 目が点になった俺の視界に入ってきたのは、さっきまでベッドの影にあって見えていなかった小さいベッド。

 そこには今も母親に抱かれている赤子と同じように布でグルグルに巻かれているこちらもおそらく赤子。


 ……そっか……またって言ってたなそういえば。

 双子……いやあと三人なら五つ子か……。


 その数に衝撃を受けながらも、俺は二人と周りのエルフたちにもねぎらいと激励の言葉をかけてその場を後にした。

 当事者でもないのにずっと俺がいたら気を使うだろう。




 と、言うわけで病院を出てきたんだが……。

 いやにしてもいきなり五つ子か。

 出産自体は無事に済みそうで良かったが。


「コボルトは多産が基本ですので。主様には先にお伝えすべきでした。申し訳ありません」


 いや、別に構わない。

 ちょっと軽くワールドショック受けただけだから。久々に。


 スッ……と頭を下げてきたルシュに俺はそう言う。


 しかし、そろそろかと思っていたが案外早かったな。


「そうですね、予定ではもう少し後からだと聞いていましたが……やはりこういうことはなかなか予定通りとは行かぬものなのですね」


 ああ、俺も痛感した。


 予定というのはさっきの……要するに出産予定日のことだ。


 今年のレースピアでは待望の子供の誕生が予定されていた。


 発端は今年……というか去年の冬。

 人口も増え、余裕もでき、多くの時間を室内で過ごすとなると……まあそう言う考えに至るものが多いのは言うまでもない。


 そんなわけで今年の春の時点でもう妊娠が発覚し、今年の秋辺りに一気に出産が来るだろうということが予想されていた。

 畑をガンガン増やしたり、学校を作ったりしていたのも子供が生まれた後のことを考えてだな。もちろん人口増加とか識字・計算率の増幅なんかの理由も大きいけど。

 それにさすがに気が早すぎるだろうって突っ込みもあるだろうけど。

 まあ作れるうちに作っておいた方がいいし、こういうのは。


 と、いうわけで出産やその後に向けていろいろ準備していたわけだ。


 本来ならもう少し後から出産ラッシュが始まる予定だったんだが、ちょっと早く始まったな。


 まあこんなこともあろうかと薬草もしっかり増産してこの前収穫しておいたから問題ない。

 ちなみに収穫の人手が減っていたのは、流石に妊婦にこんな労働させるのは……と俺がNG出したからだ。

 まあ夫側が張り切って働いてくれたしそれほどは問題も出なかった。


 さて、これからは色んな種族の出産が次々とはじまるだろう。

 戸籍やらなんやらの書類作業で再びてんてこ舞いになるな。

 シエルたちにはつかの間の休みを与えたかったが……しょうがない。


「もちろん私もお手伝いいたします」


 ああ、頼む、ルシュ。


 俺は手伝いを申し出てくれたルシュにそう返した後、早速仕事にとりかかろうと屋敷に戻――。


「……ところで、主様」


 ん? どうした? ルシュ?


 ――ろうとしたところで。

 ルシュから声を掛けられる。


 何か報告漏れでもあるのかと思って俺は聞き返す。


「コボルトの出産はコボルト同士ならばかなりの多産になるそうです。しかし……コボルトと人間であれば基本的には一回一産になるとか」


 え? ああ……そうなのか……。


 いきなり雑談……雑談? を振られてちょっと困惑しながらも俺はそう返す。

 いやでもなんか……ルシュの目が輝いて見えるような……?


「私もそう聞いたというだけで実際に見た訳では無いのですが……どうでしょう、主様? 確かめてみたくはありませんか……?」


 ……えーっと、それはつまり……。


「……そろそろ子どもを作るのもいいのではないかと……そう思っているのです」


 じわじわ……じわじわと。

 ルシュが近づいてくる。


 い、いや……まだその……忙しいし……ああほら! 今から出産ブームで忙しくなるし! だから忙しいからちょっとそういうのは……。


「では、忙しくなければ良いのですね?」


 え……それは、その……まあ……うん……?


「それなら……忙しくない冬になれば構いませんよね……?」


 え、いや、うん、ほら……冬も冬で忙しいのは忙しいっていうか……。


「……だめ、でしょうか……」


 ルシュは尻尾と耳を垂らし、瞳を潤わせながらそう言ってくる。


 ……。

 ……い……いいよ……。


「っ! ありがとうございます! では冬に! 楽しみにしております、主様」


 ……うん。


 悲しげな顔から一転、ぱあっと花開くような笑顔を浮かべるルシュに俺はそうとしか言えなかった。


 俺は弱い。


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