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ゆるっと街づくりin異世界~すべての種族が住む街を作れ!?~  作者: 下河スズリン


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169.解体とクッキング

 さて、そういうわけで船上クッキングの時間だ。


 俺は早速包丁を取り出し調理に入る……前に。

 同乗していたハイウンディーネに頼み、身の三分の二ほどと、骨、カマ、ヒレを急速冷凍してもらう。

 今から食べる分以外は凍らせて鮮度を保っておきたい。


 凍らせずに残したのは身の三分の一ほどだが、デカさがデカさだ。

 この船の全員どころか、今海に出てきている船団の乗組員全員で食べても十分足りる。


 というわけで急速冷凍保存も出来たので、憂うことなく調理に入る……前に。

 まだ憂うことがあるので、創造神器を取り出して残った身の方に向ける。

 反応は……無い。


 よし。


 魚を即座に食べるとなると寄生虫が怖い。

 速やかに解体したとはいえ、居る可能性はあるからな。

 ……というか異世界マグロなんだし俺が知っているものとは違って毒とかある可能性もあったか。

 喜び勇んでその辺りに思考が回ってなかったな。

 反省。


 だがまあ、害がないのは創造神器で確認できた。

 早速調理して行こう。


 というわけで……まず最初に作る、というか切るのは刺身。

 やっぱり船上で捌いて食べると言ったらこれだろう。


 赤い切り落としブロックを台に乗せ、端っこから削ぐようにある程度の厚みを付けて切っていく。

 流石はイアンたちが作ってくれたミスリル包丁。

 全く抵抗なくすっと切れる。


 そのまま何枚もそぎ切り、皿に丸く盛り付ける。


 完成。

 異世界マグロの刺身。


 綺麗な赤身が丸く並んで……まるで皿の上にバラが咲いているようだ。

 早速一口。

 醤油をちょんちょんとつけて味わう。


 口の中に入れた瞬間感じたのは、まるでじゅわっとしみ出して来たと錯覚するほどの旨味。

 そのまま歯で弾力ある身を噛むと、それとは比にならない、それこそ二頭鹿の肉の旨味にも負けないんじゃないかというくらい強い旨味。

 それが醤油のしょっぱさと調和して……。


 うん、最高。


 俺は夢中になって取っては食べ、取っては食べてしまう。

 本当に美味い。


 味見程度にしようと思っていたのに軽く十切れは食べてしまった。


 そんな俺を眺めている皆。

 俺と同じように箸を伸ばしては……いない。


 まあ、魚を生で食うなんて文化馴染みが無いだろうしな。

 前世でも生食なんて基本日本人くらいしかしないって聞いたこともあるし。


 と、そこで──。


「あぁっ! 始めてたなら教えてくださいよぉ~……!」


 マグロの解体中暇そうだったので、可能だったらちょっと海藻とか貝類とか獲って来てくれと頼んでいたトゥーナ達が帰還した。




「おぉ~、とっても美味しそうですねぇ。それではぁ」


 甲板に上がって来て早々、パクッ、と、俺が口を挟む暇もなく、刺身を一切れ口に運ぶトゥーナ。

 その顔がパァァ……と、幸せそうにほころぶ。


「美味しいですぅ~! 前に食べた時はここまで美味しく感じなかったのにぃ……切られ方が違うから? とっても美味しいですよぉ~!」


 ニコニコ笑いながらどんどん口に運ぶトゥーナ。

 その顔に忌避感などはひとかけらも浮いていない。

 んん? マーメイドは生食平気なのか?


「ええ、はい。我らマーメイドは獲物をそのまま食べることもよくありますからね」


 俺の疑問に答えてくれたのは大量に海藻と貝を抱えたルフィン。

 どうやらトゥーナが自分の分を押し付けたみたいだ。

 顔が見えない。


「マーメイドは基本海中に生きる種族故、料理をすることがあまりありません。特殊な方法を使えば問題なく料理を作れますが、面倒だと感じる者も多いので。ですのでトゥーナ様も例にもれず生で獲物を食べることに忌避感はありません。……王族なので基本的に生ではなく調理されていたものを食べていたはずなんですが……」


 と、持っていた海藻と貝を置いてそう続けたルフィン。

 その目はトゥーナ……ではなく、刺身の方を向いているな。


 ……ルフィンも食べたいのか?


「いえ、そんなことは! ……すみません、正直食べたいです……」


 一旦否定するもめちゃくちゃ美味しそうに食べているトゥーナを見てそう言い直すルフィン。


 分かる。

 あんなに美味しそうに食べているの見ると自分も食べたくなっちゃうよな。

 周りの皆もかなり興味をそそられている様子だし。


 俺は醤油をルフィンに差し出してどうぞどうぞと食べることを勧める。

 するとルフィンも最初は遠慮していたが、我慢しきれなくなったらしく……俺が渡した醤油に刺身を付け、口に運んだ。


「う……美味いっ……! 何という美味さっ……!」


 そう叫びながら体をぶるぶると震わせるルフィン。

 相当に感激しているようだ。

 そのまま最初の否定は何だったのか、という勢いで食べ始める。


 とても美味しそうに食べているものが二人に増え、両者ともにとても美味いと口にしたことで、皆も興味が逡巡を上回ったらしい。


 まず一人……ルシュが意を決して刺身を口に運び……顔を綻ばせる。

 そこからは速かった。


 一人一人と意を決し、美味しさに顔を綻ばせる。

 そのループが出来て、船に乗っている全員が刺身に手を伸ばしていた。


 この調子だとすぐになくなるな……追加もさっさと作るか。


「追加が出来ましたら他の船に持って行っても? この美味……他の者にも味わわせたく」


 もちろんだ。

 こっちから頼もうと思っていた。


 さ、そうと決まったらガンガン作らないとな。




 と、いうわけで追加を作っていく。


「お手伝いいたします」


「何でもお申し付けください」


「次まだですかぁ~?」


 刺身を食べた何人かが手伝ってくれることになった。

 トゥーナは完全に食べるモードになっている。

 さっき刺身を置いていたテーブルから離れる様子がない。


「姫様がすみません……」


 いや構わない。

 そもそもマグロはトゥーナが獲ってくれたものだしな。


 感謝を込めて追加の刺身を切る。

 今度は大量に切っていき、数皿をこの船のテーブルに、残りを他の船に運んでもらう。


「お任せください」


 持って行ったらマーメイドたちもそっちで食べちゃっていいからな。


 さて、刺身ときたら次はこれだろう。


 寿司。


 こんなこともあろうかと、米を持ってきている。

 刺身を食べている間に炊き上がっているはずだ。


 目論見通り米はしっかりと炊きあがっていた。

 炊きあがった米の一部を桶に移し、塩、砂糖、酢を投入して切るように混ぜる。

 完全に混ざり切ったら少し冷まし……桶から一口大のご飯を指に取り、マグロの刺身を乗せ、やんわりと握る。


 マグロの寿司……完成だ。


「んん~~なんですかこれなんですかこれぇ~! 美味しすぎますぅ~!」


「口の中でほぐれて……食べる手が止まりません」


「さすがは主様……とても美味しいです」


 寿司も大好評だな。


 最初の忌避感は何だったのかというくらい皆パクパクと食べている。

 俺としても嬉しいな、こんなに美味しく食べてもらえて、皆の生食に対する忌避をなくすことが出来たら。


 ……いやでも美味しいからって何でも生で食べるようになるのは危ないな。

 その辺は後で注意しておくか。

 今は存分に舌鼓を打ってもらおう。


 そのまま寿司も他の船に運んでもらった。

 遠目に見る限り向こうもかなり盛り上がっているようだ。


 次。

 だし茶漬け。


 寿司を作っている間にこれまたトゥーナ達に獲って来てもらっていた海藻と貝で出汁を取っていた。

 その出汁を温め、酢飯の上に大量のマグロの刺身をのっけた海鮮丼にまわしかける。

 すると、食欲をそそられる出汁の柔らかな香りがふわっと広がる。


 完成。

 マグロの出し茶漬け。


「おいひいれふぅ~!」


「はぁ……体が温まります」


「体の奥から活力が湧いてくるようです」


 こちらも好評だな。


 刺身を食べた時も思ったが素材が良すぎる。

 何を作っても美味しくなる新鮮さ。

 これが船の上で食べる魚が一番美味いの意味なのか……確かにこんなに新鮮で美味しかったらそんな言葉が生まれるのも分かるな。


 そんなことを思いながら俺はどんどんマグロを調理していく。

 すると俺のボルテージも皆のボルテージも上がっていき、港に着いてもそのボルテージは下がることは無く……。


 その日はレースピア港でマグロパーティが開かれることになったのだった。


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