163.対策
昨日投稿出来ていなかったので二話投稿します
ちょっと途中でいろいろ……まあちょっといろいろあったが。
とにかくレースピアの街は大雨の影響からは脱することが出来た。
だけどまあ、今回は何とかなったが次はより被害が出てしまうかもしれない。
ということで。
対策をしておくことにする。
「災害対策……ですか?」
うん。
大雨も通りすぎ、水もはけ、街が普段通りの姿を取り戻した日。
俺は屋敷の会議室に人を集めそう宣言していた。
一応通常の雪や雨、嵐なんかは想定していたけど……さすがにこの前クラスの大雨とかは想定してなかった。
そのせいで見張り塔が漏水したりもしたし。
次はそうならないように対策しておきたい。
「それはもちろん構いませんが……対策とは具体的にどのような?」
ああ。
対策として思いついたのが二つ。
まず一つが用水路の拡張。
これまでの街の中にはある程度水路を引いていたが、この前の大雨では完全に水路のキャパをオーバーしてしまっていた。
なので大量の雨が降ってもいいように水路を拡張しておきたい。
そしてもう一つが耐震。
今までは起きなかったがもしかしたら起きるかもしれない。
優先度は低めにするが、耐震補強も徐々に進めていきたい。
とりあえず俺からはこの二つだが、他にも何かあれば言ってくれ。
「そういうことならはいはーい」
俺が水を向けると真っ先に発言したのがシエル。
「別に私には要らないけど念のためってことなら。糸で凄く大きい網みたいなもの作っておくのもいいんじゃないかな」
それはどういう?
「ほら、もし空飛んでる時に思い切り風にあおられて着地しづらいー、みたいなことあるかもでしょ? 私は無いけど。そういう時の為に、突っ込むだけで着地できる大きい着地地点用意するのはいいんじゃないかなってー。私には必要ないけど」
ちょこちょこ自慢が挟まったが、要するに空を飛ぶ種族用に墜落防止ネットを張ったらいいんじゃないかってことか。
確かに必要なことかもな。
そんな空中姿勢が崩れるほどの強風の中を飛ばせる気なんて俺には無いが、この世は何が起きるか分からない。
備えはしておくに越したことは無い。
それに使ってないときはアスレチックとかトランポリンとかとして使えるだろうしな。
というわけでシエルの意見も受け入れ、その後も意見を募ったり、どこに作るかなどを相談して、早速作ることになった。
ザクッザクッザクッ……!
と、言うわけで。
俺は今創造神器を振るい用水路の改装工事をしている。
とりあえずやることは二つ。
既存の用水路の流量を増やすことと、水が溜まる場所には新しい用水路を作ること。
本来なら前世みたいに地下に配管通したりとかしたかったんだが……流石にノウハウも無しにそんなことしても大事故になりそうだったので今は普通に地上に用水路で行く。
地下配管はそのうちルシュたちに頼んで実験から始めよう。
というわけでガンガン水路を拡張していく。
拡張自体はあんまり時間はかからなかった。
創造神器なら簡単に掘れるし、水路の舗装は建築チームが手伝ってくれるし。
時間がかかったのは……蓋だな。
「むぅ……本当によろしいのですかな?」
その手に銀色に光る網目状の板を持ってきたイアンがそう俺に声を掛けてくる。
ああ、構わない。
「ふむ、代表様がそう仰られるのであれば」
俺の返答を聞いたイアンはそう言って、拡張された用水路にその手に持った網目状の板をはめ込んでいく。
流石はイアン……ぴったりはまるな。
今回水路を拡張するに当たって、水路には蓋を付けることにした。
それなりに幅を広く取った水路もあり、転ぶ危険があったからだな。
そのための蓋をイアンたちに鍛ってもらっていたわけだが……。
この蓋、材質はミスリル。
うん。
ミスリル。
イアンがもうはめ込むだけという段階にきてなお確認を取ってきた理由がこれだな。
まあ……気持ちは分かる。
俺だってミスリルと言えば武器や防具だなってイメージがあるし。
まあうちの街では採掘道具とか調理道具に使ってたけど。
それでも用水路の蓋に使うっていうのはちょっともったいないって気持ちが出るんだろう。
実際拡張したこともあって結構な量使うしな。
だけどミスリル製の水路蓋は……案外便利なんだ。
まず何といっても軽い。
蓋はそれなりの大きさがあるが……それでも俺が軽々と持てるくらいには軽い。
それでいて水があふれても浮かないしな。
それに、魔力もよく通す。
いざという時に魔法での排水を行う際、助けになってくれる。
あとはまあ……正直結構余り気味だったから。
住民が増えるにつれて使用量も上がってるんだけどそれ以上に採掘量が多い。
なのでここでかなり使ってしまっても大丈夫だろうと判断した。
ケットシーたちがミスリルをこんなに湯水のように使うのかと戦々恐々としていた。
まあ、そういうわけで、どんどん蓋を作ってもらい水路にはめ込んでもらう。
出来上がった水路は銀色に輝いていてとても綺麗だ。
これなら上空からでも水路が綺麗に視認できることだろう。
……上空から水路視認して何になるのかは知らないが。
「代表様。こちらも無事に完成いたしました」
その後。
水路は後は蓋をはめ込むだけ、という工程まで来たので、俺は作業をイアンたちに任せて、シエルが提案した墜落防止ネットの様子を見に来た。
が、リネイア曰くもうこっちの作業は終わったみたいだな。
まあ、糸を張るだけだからそれもそうか?
「張るだけ、なんてそんなことはありませんわ! はぁ……はぁ……」
そんな俺の感想に食い付いてきたのはクトネー。
なぜだか息を切らしている。
「はぁ……はぁ……ご機嫌麗しゅう、代表様。ご挨拶……はぁ……申し上げますわ……」
息切れしながらも優雅に礼をしてくるクトネー。
いや、なんだか辛そうだし無理して挨拶しなくても……。
「ぜぇ……はぁ……疲れているからと、代表様への挨拶を欠かすなど……出来ませんわっ! はぁっはぁっ……」
そ、そうか……。
嬉しいがちょっと気圧される。
というか何でこんな息を切らしているんだ?
「それは私から説明いたします。……クトネーさんは少しお休みを」
「あ、ありがとうございますわ……」
クトネーを気遣ったのであろうリネイアから話を聞く。
まず最初。
クトネー含むアラクネたちは楽観していたようだ。
墜落防止ネットだか何だか知らないが、自分達ならそんなもの簡単に作れるだろう、と。
しかし残念ながら初回のネットは失敗。
試験として、上空からある程度脆く作った木人形を落としたらしいのだが……。
ネットは木人形を受け止めはしたものの木人形は破損。
糸を強く張りすぎて衝撃を吸収しきれなかったらしい。
この失敗を受け止め、アラクネたちは次は衝撃を吸収しきれるよう、かなりゆるく糸を張った。
その結果……緩すぎて木人形は地面に激突した。
ここでアラクネたちは悟ったらしい。
これ、難しくないか、と。
そこからは試行錯誤の繰り返しだったそうな。
糸をどんな強さで張るか、糸自体の強度はどれくらいがいいか、ネットの目はどれくらいの感覚にするか……等々。
「ふぅ……本当に大変でしたわ」
息を整え復活したクトネーが俺にそう言ってくる。
「糸自体の強さを調節しながら作るなんて初めてでしたもの。慣れない作業な上、この大きさのネットの作成。息を切らすのも当然というモノですわ」
そしてそのままそう続けるクトネー。
それは……本当にお疲れ様だった。
ありがとう。
「いえいえ、他ならぬ代表様の頼みですもの! ですが謝意を示したいということなのであれば昨日作ったばかりの服の試着を――」
あー、ネットが出来たってことは上空から木人形落としても大丈夫だったんだよな。
「はい、もちろんです。ご覧になりますか?」
凄く前のめりに捲し立ててきたクトネーから逃れるように話題を変える。
すると俺の意図をくみ取ってくれたのか、リネイアがそう提案してくれた。
ありがたく乗らせてもらう。
見せて欲しい。
「かしこまりました」
リネイアがそう言ってスッと手を上げると、デモンズの一人が木人形を抱えて離陸。
ネットの上空へ移動する。
そしてそのまま……抱えた木人形を手放した。
手放された木人形はそのまま加速しながら落下。
ネットのど真ん中に着弾。
すると。
ぐにょぉぉ~~ん……!
ネットが思い切りたわみ……見事に木人形を受け止めた。
俺はたわんだネットの下から木人形を確認。
木人形は全く破損していない。
見事だ。
「ふふっ、これが私どもの試行錯誤の成果ですわ~!」
その結果を目にしたクトネーが高笑いでもせんばかりのテンションでそう言う。
「お~っほっほっほっほっ!」
いや実際に高笑いした。
ともかく、本当に素晴らしい。
これで空を飛ぶ種族のための、万が一のセーフティーネットが出来た。
ありがとう。
「お安い御用ですわ!」
「私はお手伝いしただけですので」
二人はそう返して来た。
よし、これで例えこの前のような大雨とか嵐が来ても大丈夫だな。
でもいつ何が来るかなんてわからないからこれからもしっかり備えは続けていこう。




