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ゆるっと街づくりin異世界~すべての種族が住む街を作れ!?~  作者: 下河スズリン


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161/213

161.豪雨

 夏のとある日のこと。


 ザァァァァァァァァーーーーーー……!


 外からは大量の水が地面に打ち付けられている音がしている。

 レースピアの街に大雨が到来していた。




「わーーーいっ! 雨だーーーーっ!」


 屋敷の外。

 雨の音に交じってそんな声が聞こえる。

 フィーネの声だなこれは。


 フィーネ以外にも声が聞こえるから外を覗いてみたら、ウンディーネたちが揃いも揃って外ではしゃいでいる。


 結構な勢いで降っているのにまるでお構いなしだ。

 いやまあ、水の精霊なんだし大雨でテンションが上がるのも当然なのか?

 かくいう俺も外ではしゃぎこそしないものの結構テンションは上がってるしな。


 大雨とか嵐とかってなんでこんなにテンション上がるんだろう。

 謎だ。


 にしても……流石ハイラだな。

 ぴたりと当てた。




 今から数日前。

 ハイラが俺の元へやって来て、数日で相当な雨が来ると警告してくれた。


 俺はそれを聞いた後、空の様子を見てみるが、雲一つない完全な晴れ。


 ここから数日で大雨なんて本当に来るのか? と思ったが、確信が無ければこんな報告はしないだろうと考え、いろいろと対策しておいた。


 そうして今に至る。




 うん……今のところは問題ないみたいだな。


 俺は屋敷を軽く見回ってそう結論を出す。

 俺が見ていたのは土嚢。


 アラクネに作ってもらった布袋にノーム達に土を込めて量産してもらった逸品。

 数日しかなかったとはいえ、それなりの数を用意した。

 いざという時に水をせき止める壁にする為だ。


 屋敷だけじゃなく各建物にも配っている。


 問題があったら報告してくれと言っておいたが、今のところ報告は無い。

 役に立っているなら用意した甲斐もあったが……まあ、詳しいことは大雨が去った後に報告を聞こう。




 さて、とりあえず建物が浸水する恐れは無いみたいだ。

 少しだけ安心する。


 安心すると、ちょっと鳴りを潜めていたテンションが再燃してくる。

 外に出てみたいという欲求が鎌首をもたげる。


 だが……今は無理だな。


 現在。

 レースピアの街には傘やレインコートといった雨具は無い。

 まだ撥水性のある布が作れていないからな。


 水着は普通の布で出来ているしな。

 いや普通ではないか……水の魔力を使って水が抜けやすい布にしてるって言ってたし。


 まあともかく完全に水をはじく素材がない以上、雨具は作れていない。

 というかこれまでは雨が降ったとしても大した雨じゃなかったから必要性を感じなかった。


 確か、漆とか松脂とかそういう樹脂的なものでコーティングするんだっけ?

 レースピアに松とか漆の木は無いから……調査団に探してもらうように頼むか。




 そんなことを考えながら今日は屋敷の中で過ごす。

 皆もそうするだろうと思っていたが……。




 えぇと、ハイラ? どうしたんだ。


「ああ、代表様。せっかくの大雨なので。この中でしかできない訓練をしようと」


 え、この雨の中訓練? それは危険じゃ……。


「問題ありません。ハイウンディーネの方たちにも協力は要請しましたし、街の外には出ませんから」


 あー……そうなのか。

 それじゃあ……くれぐれも気をつけてな……?


「はい!」




 ……あれ、シエル? どこに行くんだ?


「あー代表様。ちょっと見張り塔にねー」


 見張り塔に? こんな雨の中?


「そうそう。ほら、この街ここまでの雨とか経験無いでしょ? だから一応様子見に行っとこうかと思って。サボりたいって気持ちもあるけど、何か問題起きてたらさらに面倒な事態になっちゃうかもだしー」


 ……なるほど? でも何か問題って……ここまでの雨だったら魔物とかも動かないんじゃ?


 さらに面倒な事態とは、この雨で魔物を見逃して、街に魔物の侵入を許すことか? と考えて俺はシエルにそう聞く。

 すると。


「あー……まあ、確かに大抵の魔物は動かなくなるけどねー。でも雨の時だけ活発に動く魔物とかもいるんだよー」


 そうなのか。


 シエルの言葉に俺は驚く。

 まあ異世界だしな、そういうのが居てもおかしくないんだろう。


「そうそう、だから面倒だけど一応様子見にねー」


 そういうことであれば……こっちからも頼みたい。

 皆の安全にかかわることだしな。


「もちろんー」


 俺の頼みに即答してくれるシエル。

 こんな雨の中だと大変だと思うが、よろしく頼む。


「まっかせてー。……あ、でも一ついい?」


 何だ?


「いやほら、雨の中飛んだら翼ぐしょぐしょになっちゃうでしょ? だからー代表様にお手入れしてもらいたいなーって……」


 ? そんなことで良いなら構わないが……。


「やたっ……忘れないでねー! それじゃあ行ってきまーす!」


 あ、ああ……頼む。


 その後。

 帰ってきたシエルには約束通り丁寧に翼の手入れをした。

 手入れされている間中シエルは顔が真っ赤になっており、俺は風邪でも引いたのかと心配するが、大丈夫との一点張りだった。

 謎だ。




「ふぅっ……! 濡れた濡れた!」


 ……フリストル? ずぶ濡れで……外に出てたのか?


「おっ代表さん! ちょっと軽く港の様子を見にな!」


 いや港までは全然軽くって距離じゃないんだが……それにこれだけ雨が降ってたら道もかなり悪くなってたんじゃ……。


「あーまあ、確かに多少ぬかるんじゃいたが……この程度の雨やぬかるみ俺らには大したことじゃねーよ。……まあ? ちょっと? ほんのちょっと? 往復に時間かかっちまったが……」


 少し目を逸らしつつそう言ってくるフリストル。

 俺はとりあえずフリストルに体を拭くための布を渡しつつ話を聞く。


「おっ、ありがとな代表さん! そんでまあ港まで行ってきたんだが、まあ大丈夫そうだったぜ」


 身体を震わせ水気を飛ばし、飛ばしきれない水気を布で拭いているフリストルに話を聞く。


 どうやら、港は海が時化になってこそいたものの、港に高波が打ち寄せる、とか雨によって家屋が浸水する、とかそんな被害は無かったらしい。

 あっても道で滑って転んで頭を打った者が居た程度で……問題なく漁にも出ていたとか。


 いや、この大雨の中の漁は危険すぎるだろう!


「まー俺もそう思ったけど……俺が行った時にはもう漁から帰って来てたしな。一応聞いたけどこの程度の雨、漁に出ない理由にならないって言ってたぜ? ほらこれ今日獲った魚だってよ」


 そう言ってフリストルが傍らに積んでいた箱を俺に差し出す。

 その中には見るだけで新鮮だと分かる魚が多く入っていた。


 いや……確かに魚はありがたいがこの大雨の中、海に出るのは……。


 俺がそこまで言ったところで屋敷に誰かが入って来る。

 誰かというか、シロだな入ってきたの。


 シロはずぶ濡れの状態で……その口には五匹ほどの兎を咥えている。


 えぇと……シロ? それは……? もしかして今狩ってきたのか……?


「ウォンッ!」


 身体をぶるぶると震わせながらそう返事するシロ。


「うおっ……水かかったっ……!」


 ぶるぶるぶるぶるっ!


 両者とも体を震わせているのを見ながら思う。


 もしかして大雨だから大人しく室内で過ごすべきと考える俺が少数派か?


 俺がそんな風にワールドショックを受けていると。


「……フリストル様。そう水をまき散らされては掃除が大変なのですが」


 うおっ……!


 音もなく近くに寄ってきていたのは家事妖精のキール。


 周囲に水がまき散らされている玄関ホールを見ながらフリストルに声を掛けている。


「うぉっ……や、これは……全部布で拭くのは流石に面倒だったから……」


 まあ、半分は馬体だからな。


「……そうですか。では僭越ながら私共がお拭きいたします。こちらへ」


「えっ! いや、そう気を使わなくても……うおっ力強っ! 代表さん助けっ……!」


 あー……うん、ごめん。


「うわぁぁぁぁぁ――――――……っ」


 フリストルは連れていかれた。


 ちなみにシロはしれっと姿を消していた。

 咥えていた兎だけを残して。

 凄まじい危機察知能力。

 流石シロ。




「いやー久々に受けたのお~……」


 ……リーア? なんか……その、身体中がバチバチしてないか?


「おお、お主~! ちょいと雷を浴びてきてのお!」


 テンション高いな……。……今なんて言った? 雷?


「そうじゃ。これがクセになるんじゃよな、このビリリと来る感じが……」


 あー……うん。

 帯電したまま屋敷に入るのは止めるように。

 プールにでも入って放電してきてくれ。


「なんじゃ面倒じゃのぉ……お主にも分けてやろうか? ほれ――」


 外の、誰もいない場所で、放電してくるように。


「分かった! 分かったからその武器を我に向けるのは止めろ! 鱗が逆立つ!」


 リーアは大人しく言葉に従ってくれた。

 聞き分けが良くて良かった。




 と、まあ、そんな感じで。

 皆豪雨の中なのに全然室内に籠らずに外に行ってるな。

 異世界ではこの程度の雨では行動を止めるには至らないらしい。


 でも危険だから出来れば屋内で過ごして欲しい。

 そう思う日だった。


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