15.新たな種族との出会いと歓迎会
まさか……こんなにあっさり見つけてくるとは。
一か月後。
俺の目の前には帰ってきたルシュたちと、その後ろにそれぞれ十人ずつの新たな種族がいた。
片方は金色の髪にとがった耳、見目麗しい透明感のある容姿。
もう片方は小柄でずんぐりしていて、もじゃもじゃのひげを生やしている。
どちらも見るからに俺のイメージ通りの容姿。
有名なファンタジー種族……、エルフとドワーフだ。
そしてもう一人……いや一体。
護衛についていたシロに寄り添うようにして、シロよりも小さいがそれでもよく似た真っ白な毛並みの狼がいた。
俺は正直何から聞いていいか分からなかったので、とりあえずルシュに出発してからのことを順番通りに話してもらった。
ルシュの話によると……まず見つけたのはもう一体の狼。
シロと同じフェンリルらしい。
拠点を出発して一週間ほど。
それまで順調に進んでいた調査団だが、進行方向から大きな音がしているのを確認。
迂回するようにして進もうと話していると、鼻をヒクヒク動かしたシロが調査団を近くにあった木のうろに押し込んだ。
まるでここで待っていろと言わんばかりに。
そしてシロは大きな音のした方に駆けていったのだそうだ。
ルシュたちは少々たじろいだが、シロを信じそこで待つことにした。
そうしてしばらく。
大きな音が止んだ。
ルシュたちが様子を見に行こうかと話し合っていたところ。
シロが帰ってきた。
その後ろに傷だらけの狼を連れて。
ルシュたちは驚いたが、その傷だらけの狼も彼らが敬愛するフェンリルだった。
なので傷を治療し食料を与えたらしい。
その後ルシュたちが改めて出発しようとすると、そのフェンリルがついてきた。
どうやらシロから離れたくない……と、そういった様子だったようだ。
シロが受け入れていたこともあり、ルシュたちも新たなフェンリルを受け入れることにした。
こうして調査団に仲間がまず一体増えることになった。
そしてルシュたちは新たなフェンリルを仲間に加え、さらに進んでいた。
目的地は……拠点前方に見える山のふもと。
どうやらそこには裂け目……自然のトンネルがあり、ルシュたちはそこからここ、果ての森に入ったらしい。
ルシュたちは自分たちと同じようにここから果ての森に入った種族がいないかと考え、そこを目指した。
そうして無事に着いたのだが……残念ながらそこには誰もいなかった。
そのこと自体はルシュたちも想定内だった。
裂け目出口でたまたま他種族に出会うことなんてよほどのことがない限りないだろう、と。
だがこの裂け目が果ての森への入り口であることに変わりはない。
なのでルシュたちはその裂け目周辺を仮拠点にし、そこを中心に周囲を捜索することにした。
そして探索すること五日。
その探索で……エルフとドワーフを発見したそうだ。
エルフは木の葉で作った迷彩の中に、ドワーフは偽装された岩の裂け目の中にそれぞれいたらしい。
シロともう一匹のフェンリルがその嗅覚で見つけてくれたとルシュは語った。
その後、ルシュたちは彼ら彼女らに食事をふるまい、移住についての話を持ち掛けた。
彼らの答えは……了承。
その答えを聞いたルシュたちは一か月の期限も迫っていたためエルフとドワーフ、そしてフェンリルを連れ帰還した……とのことだった。
「なるほどな……。ルシュ、まずは無事に帰ってきてくれてよかった。そしてありがとう。よくエルフとドワーフを連れ帰ってきてくれた」
「っ!……もったいなきお言葉……!」
そんなにかしこまらずとも……と思うが、ルシュがそうしたいなら好きにさせておく。
さて、まずは食事にしよう。
ここまで歩いて疲れているだろうしな。
というわけで早速、歓迎も兼ねた食事会を開く。
いつも通りのスープとパンをよそい、彼らにふるまう。
もちろんルシュたちやフィーネ、シロにもだ。
すると……。
彼らは料理を涙を流しながら食べている。
「おっ……美味しいっ……!こんなに美味しいものがこの世にあったなんてっ……!」
「手が止まらんっ……!体が勝手に求めてしまうぅっ……!」
「わふっわふっ!わふぅっ!」
……どうやらとても喜んでもらえているようだ。
来たばかりのルシュたちのことを考えるとエルフとドワーフたちも苦労してきたんだろう。
それにフェンリルも食事の勢いが止まらないようだ。
お代わりもよそい、まずはたっぷり腹を満たしてもらう。
そして。
食事を終えある程度場が落ち着いた。
ふむ……新たなフェンリルの方は、シロにべったりくっついているな。
邪魔したら悪いし後回しにしよう。
シロもまんざらじゃなさそうだしな。
というわけで俺はまずエルフとドワーフに話しかける。
「あー……そちらの代表者と話したいんだが……こっちに来てもらえるか?」
俺がそう言うと、エルフとドワーフの集団からそれぞれ一人歩みだしてきた。
「美味しいお食事をありがとうございました。私がエルフの代表……ハイラと申します。以後お見知りおきを」
「美味い食事感謝する。ワシがドワーフの代表、イアンじゃ。よろしく頼む」
「ああ、どういたしまして。そしてよろしく。俺がここの代表、築だ。それで早速なんだが……二種族ともここへの移住に前向きだと聞いたが……」
「その通りです。我らエルフはこの街への移住を希望します」
「我らドワーフも同じじゃ」
よし!
つい心の中でガッツポーズする。
俺の目的はここにすべての種族を集めた街をつくること。
移住を決めてくれるのはとてもありがたい。
「それで、いくつか聞きたいことがあるんだが……」
「かまいません、なんでもどうぞ」
「その、気を悪くしないで聞いてほしいんだが。エルフとドワーフって中があまりよろしくない……ってイメージがあるんだが……」
そう、勝手なイメージだが俺の認識だとそうだ。
もし俺のイメージ通りだったならいろいろ気を遣わないといけないから聞いておく。
「ああ。そのイメージは間違っていません。エルフとドワーフの仲は、良いとは決して言えませんでしたからね」
「そのとおりじゃ。じゃが……こんな状況になってまでもそれを引きずるほど我らも愚かではない。ここの代表として心配していることは理解できるが、その心配は無用な心配じゃと言っておこう」
「ええ、その通りです」
ふむ。
まあ確かに放浪生活で、下手をすれば生きるか死ぬかのような状況にいたのならかつての確執もなくなるってものか。
それならこちらも安心できる。
「それで……こちらからも聞きたいことがございます」
「ん?なんでも聞いてくれ」
「ここのことはルシュさんにお聞きしました。そして今しがたふるまっていただいた食事からも、ルシュさんが真実を語っていたのだろうと実感しました。しかしまだ一つ信じきれないことがあり……」
「それは?」
「この街で暮らす種族は……進化を果たすことが出来るというのは真実なのですか?」
ハイラがこちらをまっすぐに見つめて聞いてきた。
イアンも口には出さずとも同じ疑問を抱えていることが分かる。
事実だけど、実際目にしないと実感はできないか……。
さて、どう答えたものか……と俺が悩んでいると。
急に光が走る。
なんだ!?
俺は光った方向を見る。
そこにはフィーネがいた。
そして光がより強くなったかと思うと……フッ、と消えた。
するとそこに居たフィーネはより輝きを増した姿となってそこに居た。
心なしか何か……清らかなオーラのようなものを感じる気もする。
「これは~!?私、進化してる~~~~っ!」
フィーネが進化した。
進化? フィーネが?
え、今!?
俺は唖然とした。
周りも皆固まっている。
「ね~!見て~!私進化したよ~~!」
だがフィーネはよほどうれしいのか、周りに手当たり次第に声をかけている。
反応が鈍いことも気にしていない。
い、いや……これはラッキーだ。
俺は気を取り直してそう思う。
なんせどう進化のことを信じてもらおうかと頭をひねっていたからな。
これで信じてくれるだろうと、ハイラとイアンの方に顔を向ける。
「おぉ……まさか……本当に進化が……!」
「信じられん……真実じゃったのか……!」
二人とも……いたく感動していらっしゃる?
なぜだか体も震えているようだが……。
俺がそう考えているとハイラとイアンが俺に向き直し、こう言ってきた。
「疑ってしまい申し訳ありません……神よ」
はい?神?
「その通り……もはや神話でしか語られぬ存在の進化。それを為せるのであればあなた様は神。ここは神の住まう地……。これまでの非礼おわび申し上げる」
いや非礼なんてなかったが……ってそれより俺は神ではない!
と、そう否定しようとしたとき、俺の頭にある考えがよぎる。
あれ? でも創造神器は神様にもらった力で……ここはその創造神器で作った地。
ならあながち間違いでもないんじゃ……。
そうやって少し考え込んでしまったのがいけなかった。
ハイラとイアンはそれぞれエルフとドワーフに俺が神だと宣言し、皆俺の周りに跪き祈り出したのだ。
俺は助けを求め周りを見渡すが、ルシュたちは一緒になって祈りだすし、フィーネはまだ喜びまわっている。
シロも我関せずと新たなフェンリルと身を寄せ合っている。
おれの額に一筋の冷や汗が流れた。
その後……時間をかけて何とか俺は神ではない、ということを理解してもらった。
心から納得したわけではなさそうだったが……とりあえず呼び方も、代表様にまで何とかダウングレードさせた。
これ以上は譲歩してくれなかったが……。
はぁ……歓迎の食事会でこんなに疲れるとは思わなかった。
だけどまあ、新たな種族を受け入れることができたんだ。
疲れてはいるが……いい気分だ。




