14.採掘結果と調査団
そうしてしばらく。
俺は拠点裏手の山を掘り続けた。
ある程度深くまで掘って新たに見つかったのは四つ。
石炭、粘土、水魔石、鉄鉱石。
そして……また何かの種が出てきた。
二粒ほど。
順番に行こう。
まず石炭。
石炭は言わずもがな。
最初に掘れたときから安定して掘れている。
火にくべてみても問題なく使えるし、街を発展させていけばいずれ使うことになるだろう。
火気に気を付け保管する。
次に粘土。
掘っているとき妙な感触が手に伝わり、疑問に思い調べてみると柔らかい土……粘土だった。
これもありがたい。
粘土があればかまどもアップグレードできるし、焼いて器も作ることが出来る。
今は狩りに出ていないハイコボルトたちに頼んでいろいろ粘土器を作ってもらっているところだ。
そして水魔石。
もつとなぜだかひんやりするような石で、全く何の石かわからなかったのだが、誰かが知っているかと思い拠点に持ち帰った。
するとフィーネが知っていたのだ。
水魔石は火魔石と同じで、属性を持つ魔力をため込んでいる石だそうで……属性は水。
水魔法を使うときに強化できるほか、近くにあるだけでフィーネ……ウンディーネに安らぎを与える効果もあるらしい。
フィーネがとても欲しがったので、掘れた分はすべて与えた。
フィーネには世話になっているし、必要になる時が来たらまた掘りに行けばいい。
あとは鉄鉱石だ。
俺は最初掘り当てたとき、火打石が出たのかと思った。
火打石は深く掘っても出てくるのかと思い、打ち合わせてみたんだが……火花が出なかった。
俺は疑問に思い何度か打ち合わせてみたが結果は変わらない。
だが、打ち合わせてみた感じは火打石と同じくらい硬い。
なのでこれも持ち帰って聞いてみたが、今度はルシュが教えてくれた。
声はおそらく鉄鉱石であろう、と。
どうやらこの異世界では火打石と鉄鉱石は全くの別物らしい。
この世界の火打石はわずかに火の魔力を帯びている鉱石のことらしい。
だから出た火花が簡単に燃え移るのだとか。
なるほど……そうだったのか……。
最初から簡単に火をつけられたが、俺の腕じゃなくて異世界鉱石のおかげだったんだな……。
さらに話を聞く。
そして鉄鉱石とは何の魔力も帯びていない純粋な鉄の鉱石。
なんの魔力も帯びていないがゆえに、加工次第で様々な属性を後付けできるのだとか。
なんとも夢が広がる話だが、残念ながら今の拠点に加工技術はない。
今は掘れるだけ掘って倉庫に仕舞っておく。
そして最後に、種。
そう。
採掘していたらまた種が出てきたのだ。
しかも二つ。
前回掘れた種は、植えてみたらジャガイモだった。
ならこの種も何かの作物だと思うが……。
何で鉱石に混じって作物の種が出てくるんだ?
疑問には思うが、出るものは仕方ない。
そういうものだと考えてありがたく植えさせてもらおう。
そうして採掘を続けていると早いもので、一回目の収穫時期が訪れた。
皆に手伝ってもらって手早く収穫をしていく。
ジャガイモ、にんじん、玉ねぎ、小麦。
今回も豊作だ。
ハイコボルトたちが熱心に世話をしてくれていたし、ウンディーネの水を水やりに使っていたからな。
ありがとうと伝える。
「いえ、主様に使える種族として当然のことです。それにそもそも畑を作ってくださったのは主様ですから」
「そうそう~。まあどうしてもお礼したいっていうなら……またあのスープ作ってほしいな~!」
もちろんだ。
というわけで収穫を終え、お疲れ様会を開く。
収穫した野菜にハイコボルトたちが狩ってきた肉を煮込んだスープ。
それにパンを合わせて食べる。
やはり美味い。
料理自体も美味いがそれ以上に場の雰囲気がいいからだろう。
美味しい、この肉は私が狩ったんだ、明日も頑張ろう……みんな笑顔で食事を楽しんでいる。
こういうのを見るとこっちまで元気になってくるな。
またこういう食事会を開くためにももっと頑張ろうと思える。
願わくばもっともっとたくさんの種族をまとめて。
生活基盤の心配はもうほぼなくなった。
種族を集めることについても本格的に考えていかないとな……。
俺がそう考えていたのを察していたのか。
ルシュから提案があった。
それは食事会から少し経ち、次の畑づくりを終え、山から出た二つの種も植え終わり、作業が一段落した時だった。
「調査隊?」
「はい。そうです。主様のお望みは、さまざまな種族を受け入れ、ここを街として発展させていくこと……ですよね?」
「あ、ああ……その通りだけど……」
「ゆえにこその調査隊です。我らコボルトはハイコボルトに進化し、ホーンラビットも問題なく狩れるようになりました」
ホーンラビットとは角兎のことだ。
前から名前を教えてもらってはいたが、俺の中では角兎で定着してしまったので俺はそう呼んでいる。
「ああ、そのおかげで肉には困らなくなった。感謝してる。」
「ありがたきお言葉。それで、なのですが。今の我らならば問題なく果ての森の中も探索できると思います。かつての我らのように住処を終われこの地に流れ着いている種族も……おそらくいる、はずです」
「なるほどな……確かに、俺もちょうど街をもっと発展させていきたいと思っていたところだったんだ。でも……」
「でも?」
「この……果ての森って。出る魔物は兎だけじゃないだろ? あの二頭鹿や、下手をすれば……もっと危険な魔物も出るかもしれない。いくらなんでも危険すぎる」
そう、この森の魔物は兎だけではない。
二頭鹿や他の魔物の脅威も考えたら簡単に許可は出せない。
「ご心配いただけるのは心からありがたく思います。ですが……危険な魔物は隠れてやり過ごしたり、迂回すればいいのです。今の我らならできます。お願いします……主様。我々はもっと主様のお役に立ちたいのです」
……うぅん……。
そう言ってもらえるのはうれしいが、だからと言って危険な調査に送り出すのは……。
俺がそう考えていると。
「ウォンッ!」
「ん? シロ? どうしたんだ……?」
俺とルシュが話し合っているところにシロが来た。
ルシュのそばに寄り添って俺に訴えかけている。
「もしかして……シロが調査の護衛についてくれるのか? でも……」
煮え切らない俺にシロはもうひと吠えして森の方に歩いて行った。
どうやら待っていろということのようだが……。
そうして待つことしばらく。
森の中からドスドスと大きな足音が聞こえてくる。
二頭鹿だ!
シロが二頭鹿を拠点近くに誘導してきている。
俺は慌てて駆け寄って二頭鹿を仕留めようとした。
したが……。
俺が駆け寄るより早くシロはその牙で二頭鹿の首をかみ砕いた。
二頭鹿の巨大な体が倒れる。
一撃で決着はついたようだ。
俺は口をあんぐりと開ける。
えぇ……? いや、冬の間にシロは大きくなったし、大きくなった分強くもなっているかもしれないと思っていたけど……二頭鹿すら一撃で仕留めるレベルに成長していたとは……。
シロは俺の前で誇らしげにキメポーズをしている。
どうやら自分が護衛につけば調査団に危険はない……と、そう言いたかったのだろう。
目の前でこれを見せられたらこれ以上何も言えないな。
俺は強くなったな、とシロを撫でまわす。
シロも嬉しそうだ。
そしてルシュに声をかける。
「……分かった。調査団……頼めるか?ルシュ。シロを護衛に、街に住んでくれる種族を探してきてくれ」
「っ!はい!もちろん!この命に代えましても!」
「あーいや!命には代えないでくれ!ルシュたちは大事な住人なんだ。危険がせまったら命を最優先にしてくれ。逃げ帰ってきたっていい。たとえ何も成果がなくったっていいから、とにかく無事に帰ってきてくれ」
「主様……そこまで我らのことを……!はい!かしこまりました!必ず無事に帰ってくると約束いたします!」
「ああ、頼む」
そうして俺は調査団を送り出した。
内訳はルシュとハイコボルト4人、そしてシロ。
長くても一か月ほどでいったん帰ってきてほしい、とそうお願いしておいた。
さすがに初回からそんなに長く送り出したら、心配で作業が手につかなくなりそうだったからだ。
ルシュたちは快く受け入れ調査の旅に出た。
とはいっても……俺は正直期待していなかった。
いくら何でも一か月で他の種族を見つけてくるなんてできないだろうと。
そう思いながら日々の生活を続けていたのだが……。
一か月後。
ルシュたちは新たな種族を連れて戻ってきた。
しかも二種族。




