13.コボルトたちの進化と採掘
とりあえず落ち着いて話を聞く。
ルシュが言うにはどうやら……今日の朝目覚めたら、突然体が大きくなっていたらしい。
コボルトたちが皆。
いやそんなことある?
あるからこうなってるのか……。
前兆なんかも全くなく、体に不調もない。
だがいきなりこんなことになって混乱しているため、皆を落ち着かせ、代表してルシュが報告に来たようだ。
いや、それにしてもシロみたいに少しずつ大きくなるなら分かるが、一晩にして一気にというのはさすがにわからない。
異世界特有の現象か?
だとしたら俺にはお手上げだが……。
そう思っていたんだが。
フィーネがこの現象のことを知っていた。
「わぁ~すごぉ~い!ルシュちゃんが進化してるぅ~!」
進化? なんだそれは……?
フィーネに詳しく聞いてみる。
「進化って言うのはね~、文字通り存在が次に進むこと……。いろいろな条件が重なり合ったときにのみ起こる奇跡なんだよ~!どうやら~ルシュちゃんはコボルトから……コボルトクイーンに進化したみたいだね~」
「コボルト、クイーン!? 私が……あの伝説の……!?」
ルシュが目を見開いている。
どうやら自分がそんな存在に進化したのが信じられないようだ。
「当然ですよ……!コボルトクイーンといえば、コボルトたちのおとぎ話に出てくる存在です!かつてコボルトクイーンはハイコボルトたちを束ね、伝説の超巨大建築を……って、私がコボルトクイーンになったのであれば皆はまさか……?」
話している途中で疑問に思ったのか、ルシュはフィーネにコボルトたちを見てもらおうとしている。
正直伝説の超巨大建築というのが気になったものの今は確認を優先することにしよう。
コボルトたちも不安だろうしな。
というわけでフィーネにコボルトたちを確認してもらったんだが……。
「うん、間違いないね~!みんなハイコボルトになってるよ~」
「やはり……!」
どうやらコボルトたちは皆、進化を果たしたようだな。
フィーネは様々な条件が重なり合うことでのみ可能と言っていたが何故なのか……。
そこまで考えて俺の頭にひらめきが走る。
まさかこれ……創造神器の力か?
そう、今現在解放されている創造神器の能力、環境最適化。
俺はこれをその種族にとって最適な環境を作り出すものと思っていたが……。
その最適な環境が進化につながったのか?
そうだとするなら……コボルトたちのすぐ後に住み始めたフィーネもそう遠からず進化するはずだ。
そのことをフィーネに伝えると……。
「え~!? 私も進化できるの~!? すっごぉ~い!ありがとぉ~!すっごく楽しみだよぉ~!」
言葉通り……とても待ち遠しそうだ。
心なしか目がきらきらと光っているような気さえする。
「私どもの進化は主様のおかげだったのですか……!?」
話を聞いていたルシュがそう言ってくる。
そしてコボルト……いや、ハイコボルトたちが俺の周りに集まってきたかと思えば、全員一斉に膝をついた。
「主様……根無し草の我らに根を下ろせる地を与えてくださったばかりか、進化という恵みすらいただき……我ら一同、心より感服いたしました。この恩に報いるため、命を懸け主様に忠を尽くすことを誓います」
……ちょっと、大げさすぎないか?
「いいえ、そんなことはありません。我らの感動を思えばこの程度、当然のことです」
そうか、それなら……。
「んんっ!皆の言葉、嬉しく思う。これからもここの発展のため力を貸してくれ」
「「「「「はい、この命に代えましても」」」」」
……重い!正直!
でもまあ、人の上に立つってことはこういうことなのかもな……。
増長だけはしないように気をつけて頑張っていこう。
さて、そういうわけで話は一段落した。
なのでさっき気になったことを聞いてみる。
「伝説の超巨大建築……ですか? ええ、コボルトのおとぎ話にそういう記述がありまして……」
へえ、どんなものなんだ?
「かつてコボルトクイーンとクイーンに率いられたハイコボルトたちが作り上げた……空の雲すら貫く巨大な塔。ただ高いだけではなく、その円周もとても広く、中には多くのハイコボルトたちが住む街が収まっていたとか」
なるほど……そんな建物が……。
実際にあったらロマンがあるな。
もしあったら拠点の裏側にある山脈とどっちが大きいだろうな……。
いや、この世界には魔法だってある。
俺が街を発展させていけばルシュたちの力を借りて、その塔を作ることさえできるかもしれない。
現金だが……やる気がわいてきた。
だが千里の道も一歩からだ。
一気に飛ぶのではなく、一歩一歩少しずつ進んでいこう。
というわけで……俺は今、山に来ている。
畑は作り終わって時間があるし、岩塩や火打石、火魔石も掘っておきたかった。
それに浅いところだとこの三種しか出なかったが、深いところならもっと他の何かが出るかもしれない。
今ならハンマーを使って周囲を固めれば深くまで掘り進めるしな。
じゃあ何でハンマーが解放されてすぐやらなかったのかというと、一番大きな理由は暇がなかったからだ。
ハンマーが解放された時はコボルトたちの受け入れでてんてこまいだった。
食料を確保するために耕作したり鹿を狩ったり……。
それでも時間が全くないわけではなかった。
が。
もう一つ理由があってあまり拠点の外に出られなかった。
それは安全問題だ。
コボルトたちは徒党を組んで挑んでも、角兎相手に犠牲が出る可能性があった。
なのでシロに狩りに行ってもらっている手前、俺が拠点からあまり離れることが出来なかった。
万一があるからな。
だが今は違う。
ルシュはコボルトクイーンに、コボルトの皆はハイコボルトに進化した。
それでどうなったかというと……。
勝てるようになったのだ。
角兎に。
一対一で。
正直びっくりした。
角兎の突進をひらりと避けたかと思えば首に一閃。
危なげなく角兎を狩っていた。
ルシュたちは進化した自分たちの力に興奮し、これでもっと役に立てると意気込んでいた。
というわけでルシュたちに拠点の警備と狩りを頼み、シロに念のため後を頼んで採掘に来たわけだ。
俺一人というわけではなくムイも一緒に来てくれている。
まあ近くでぽよんぽよん跳ねているだけだが……。
見ていると癒しになる。
だがみんなも頑張っているのだからこっちも頑張らないとな。
早速掘っていく。
ちなみに場所は洞窟周辺ではなく拠点の裏からまっすぐ来たところだ。
かつーんっ……かつーんっ……かつーんっ……。
ふむ。
掘れたものは火打石、火魔石、岩塩……。
継続的に使うものだからありがたいが、この山どこを掘っても浅いところはこうなってるのか?
早速このまま深く掘っていく。
周りをハンマーで固めて崩落を防ぐことも忘れない。
奥まで掘り進めてくると、光が入りづらくなり、薄暗くなってくる。
少し怖いが、適当な木に火をつけて明かりを確保するとしよう。
俺がそう決め、いったん木を拾いに行こうとすると。
光った。
ムイが。
……? あっ…ああ!そう言えば光れたな!ムイは!
最近はずっと明かりは火で何とかしていたから忘れかけていたが……。
最初ムイが案内してくれた洞窟!
あそこの薄暗さはムイが光って解決してくれたんだった!
とてもありがたい。
ムイがついてきてくれてよかった。
俺は感謝を込めてムイを撫でまわす。
ぷるぷる震えて喜んでくれているようだ。
ムイのおかげで光源が出来た。
このまま掘り進めていく。
すると……見慣れない物が出てきた。
真っ黒で……光を当てると少し照り返すような……もしかして石炭かこれ?
いったん外に出てその真っ黒な石に火をつけてみる。
すると……燃えた。
ぼうぼうと。
やはりこれは石炭か!
ありがたい。
燃料はいくらあっても困らない。
それにもし街が発展して大きなエネルギーが必要になったら、石炭を使うことができるようになる。
これも今のうちからガンガン掘っておきたいな。
そう思い採掘に戻ろうとするが……もう日が傾き始めている。
今日は採掘の前にいろいろあったから採掘に時間を割けなかったな。
まあ、焦ることはない。
そう自分に言い聞かせる。
時間的余裕はある。
また明日から少しずつ掘り進めればいい。
俺はそう決心し、帰途に就いた。




