148.粉物
「うっ……美味いッ!! 何だこれは!? こんな食がこの世に存在したのか!?」
「はふっ……熱いでふっ……でも美味しいでふねっ……!」
「中に入っているもの……これがあのタコなんですか?! あれがこんなに美味しくなるなんて……!」
「あっつぅ!? じゃがこの熱さがクセになるぞい……!」
「にゃーッ!? 舌っ! 舌ぎゃーーっ!!」
たこ焼きは大好評。
熱いから十分に気を付けろという忠告あまり聞かなかった者が若干名居たけど。
とにかく並んだ者たちに振る舞ったところ、皆一様に美味しいと口にしてくれた。
たこ焼きにしてもたこが食べられない者が居るかもしれないといろいろな具を用意したが別にそんな気遣いもいらなかったな。
タコ入りのたこ焼きをみんなパクパクと食べている。
「いえ、芋が入ったこれもこれはこれで……」
「中のキャベツのパリっと感がとてもいいです」
まあ、用意した変わり種の方も楽しんでくれているみたいだし何よりだ。
さて、昨日の焼きそばの時は焼きそば調理に追われ他を作るなんて出来なかったが……今日は違う。
昨日の反省を生かし、初回のたこ焼きを作る際、家事妖精たちに教えながら作っていた。
これで……。
「ご安心くださいご主人様。これだけ丁寧に教えていただいたのです。たこ焼き……何の問題もなく作れます」
よし。
ありがとう。
礼を言ってたこ焼き機を家事妖精たちに引き継ぎ、俺は横……通常の鉄板の方へ。
火を入れ、鉄板を温める。
その間に生地の準備だ。
焼きそば、たこ焼きときたら次はこれ。
お好み焼きだろう。
小麦粉、水、卵を混ぜた生地にみじん切りにしたキャベツを投入する。
そして再びかき混ぜる。
この時あまりかき混ぜすぎない方がいい。
その方がふっくらに仕上がるからな。
そして混ぜ終わったら、アツアツになった鉄板に生地を広げていく。
ジュウウウ! という音とともに鉄板に生地が広がっていく。
その生地をヘラを使い良い感じに丸く整えていく。
俺はお好み焼きは大きくあって欲しいのでかなり大きく広げたタイプ。
そして広げ過ぎて返すのミスるまでがワンセット。
なので今回は気持ち小さ目。
そうして整え終わったら、広がったお好み焼きの生地の上に薄くスライスした兎肉を乗せていく。
生地が見えなくなるくらいまで大量に乗せ、そして生地がある程度焼けたのを確認したら。
お好み焼きづくりで一番楽しいところ。
ひっくり返しに入る。
ふぅ……。
息を整え集中。
一発勝負だからな。
慎重にヘラを生地の下に差し入れ……一思いにひっくり返す!
ふわっ……ばふんっ! ジュゥゥゥーーーー……!
……成功。
お好み焼きは見事に天地がひっくり返り、先ほど生地の上に敷いた兎肉が今度は下になり、食欲をそそる香りと音を出している。
ここまで来たらもう難しいことは無い。
後は、少し待って豚肉と生地に火が入ったことを確認したらお好み焼きをもう一度ひっくり返す。
この時は先ほどと違って、両面に完全に火が入っているのでよほどのことが無ければもう崩れたりはしない。
そして再びのひっくり返しを終えたら、ソースとマヨネーズを格子状にかけていく。
別に格子状である必要はないが、やはりお好み焼きのソースとマヨネーズといったら格子状にかけてこそだろう。
そうしてかけ終わったら完成。
シンプルな豚……いや兎肉なので兎玉。
早速ヘラで食べやすいサイズにカットして一口。
もぐもぐ……うん、こっちも美味い。
ふっくらとした生地にキャベツの甘さ、そこにソースのしょっぱさとマヨネーズの旨味。
最高だ。
具が少ないから物足りないんじゃないかと作る前は少し思ったけど、全然そんなことは無かった。
こっちもいくらでも進む。
と、目を閉じお好み焼きの出来に感動しているところで、俺は現実に目を向ける。
目を開くと鉄板の前には再び綺麗に並んだ大行列。
いやまあお好み焼きとソースの匂いまき散らしたらそりゃこうなるよな。
俺はそう思いながら深く礼をしながら皿をこちらに差し出してきている先頭の住人にカットしたお好み焼きを渡した。
その後。
お好み焼きマシーンと化した俺は、しばらくお好み焼きを返し続け、住民にある程度お好み焼きが行き渡ったところで解放。……というか休憩。
たこ焼き、お好み焼き、そして個人的に作った焼きそば。
このお祭の夜粉物三種の神器と俺が勝手に呼んでいるトリオと、家事妖精に揚げてもらったフライドポテトを手に、卓に付き一息。
「酒も美味い。たこ焼き美味い。お好み焼きとやらも焼きそばとやらも美味い。芋も美味い。なんじゃここ天国か?」
しようと思ったら。
美味い美味いと連呼しながら、俺が持ってきた料理を片っ端からつまみ食いしてくるつまみ食いドラゴンに絡まれた。
「済まぬ済まぬ。許せ許せ」
落ち着いたのか、つまみ食いを止めそう言ってくるリーア。
そういいつつ目線はまだ全然料理に向いているが……。
まあ、そんなに食べたいならということで一緒に食べることにする。
足りなくなったら家事妖精たちに追加を頼めばいいし。
「おお! 話が分かるな」
いやまあいいさ。
と、そんなことより……何か話があって来たんじゃないのか?
俺はリーアにそう言う。
流石に俺の抱えていた料理を食べるためだけに俺の元へ来たわけでは……ちょっとありそうだけど。
「うむ。頼みたいことがあってな」
良かった無かった。
……頼みたいこと?
「そうじゃ。我をこの街に住まわせて欲しい」
移住希望か?
べつに構わな――。
と、そこまで言ったところで気付く。
いやでも……危なくないか?
そう、相手は本気を出せばそれだけで街の住人をパニックに陥らせるほどの強大なドラゴン。
もし何かあれば……最悪の事態も見えてくる。
なので、普段なら二つ返事で受け入れるが、今回だけはちょっと慎重にならせてもらうことにした。
あー……構わないん……だが。
この街に住みたいならこの街のルールに従ってもらう必要がある……勝手に暴れたりとかは止めてもらう。
「む? こちらから頼んでいるのじゃ。その程度当然のこと。……何じゃ、もしかして我が無差別に暴れることを心配しておるのか?」
……見抜かれてしまった。
いやまあ俺も分かりやすく言い淀んだしな。
「ハッハッハ、それであれば心配はない。よほど機嫌が悪くない限り本気で暴れたりせんよ我らは」
そうなのか?
「そうじゃ。実際お主と戦った時もそうであったじゃろう? 別に殺す気など無かった」
……まあ、たしかに襲来したときから、創造神器は危険反応を伝えてこなかった。
だが……。
でも最後に撃ったブレスは殺す気だったよな?
あの時だけ創造神器が危険伝えてきてたし。
「むぐっ……! いっ……いやあれは何というか、我も昂ったというか殺す気など無くただ単に高揚に任せて撃っただけで……! というかきっちり防いで返しの一撃で我の翼と鱗持って行ったんじゃから良いじゃろ!」
目を逸らし汗をだらだら流しながら言い訳したかと思ったら、そう言い返してくるリーア。
いやまあ確かにそう言われたらこっちとしてはこれ以上言えない。
今更だがあれだけの傷……大丈夫なのか?
やったこっちが言うことじゃないかもしれないが。
「律儀じゃのぉお主……あの程度は何とも……あるが」
あるんだ。
「それでも大丈夫じゃ。美味い物たらふく食ってぐっすり眠れば回復する」
そうなのか?
ああ、だからこの宴会で酒も食事も大量に食べて……。
「いやそれはここの酒と料理が美味いからじゃが」
あ、そうなんだ。
いやまあ美味いって褒めてくれるのは嬉しい。
「うむ。……と、そんなわけじゃから心配は無用じゃ。身体も……暴れる心配もな。というか自分より強い者が治めている場所で暴れるバカなど居る訳ないじゃろ」
そう言ってぐびぐびと酒を飲むリーア。
その台詞に周りからもちょっとホッとしたような雰囲気を感じる。
やはり皆暴れられたらどうしようと大なり小なり感じていたようだ。
まあそういうことなら……。
分かった。
それじゃあうち……レースピアの街はリーアを受け入れる。
これからよろしく頼む。
「おお! ありがたい! 任せると良い! 我は役に立つからの!」
俺の台詞に豪快に笑いながらさらに酒を煽るリーア。
そのまま夏祭り兼第一回闘技祭お疲れさまでした会兼リーアお出迎えパーティーは盛り上がっていった。




