142.闘技祭二日目ー第一回戦
翌朝。
闘技祭、二日目――。
「――それではここに、闘技祭本戦の開始を宣言する!!」
「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!!!!」」」」」
二日目も俺の開始の挨拶により闘技祭が開始される。
いや昨日開始の挨拶やったんだからよくない? と思ったが。
「いえ、昨日は昨日、今日は今日ですので」
「はい。代表様の挨拶が無ければ始まりません」
皆にそう説得され、挨拶をすることに。
まあ、盛り上がりはしたみたいだしいいだろう。
というわけで挨拶も終わった。
ので、早速……。
「それでは! 闘技祭本戦、第一回戦を開始します!」
本戦の開始だ。
「それでは第一試合……開始!」
司会のフォイルの掛け声とともに、ドォォーーンッ! と、馬鹿デカい銅鑼が鳴る。
……いやいつ用意した?
昨日は無かったぞあんな大きい銅鑼。
「ええ、昨日の夜、大急ぎで鍛ちましたからな!」
俺の疑問に答えをくれたのはイアン。
ガハハと笑いながらそう言ってきた。
いや、一晩であれほどのモノを鍛えたのは流石だが……何で作ったんだ?
「ハハハ! 昨日代表殿がおっしゃられたではありませんか!」
俺が?
「ええ! ”フォイルの宣言も良かったが、開始を告げる銅鑼かなにかの音があればもっと盛り上がったかもなあ……”と!」
……言ったか? そんなこと?
……言ったな。思い返してみたら。
昨日、大人気の焼きそばを必死こいて作ってる時に……この鉄板叩いたら結構いい音鳴りそう、みたいな雑談からそんな話に繋げた気がする。
それでその後銅鑼っていうのはこういうのだよ、的な説明もした気がする。
「ですので代表殿の期待に応えるべく、大急ぎで仕上げましたぞ!」
あー……それは……ありがとう。
完全に俺発端だったのに頭から抜けていた。
イアンに礼を言いつつ反省。
さて、反省しつつも目線は眼下の舞台に向ける。
銅鑼の音とともに第一試合が始まっているからな。
対戦カードは……マイコニンのニチャと、ハイノームの一人。
「いひひ……やるね……」
「負けません!」
戦いは、ハイノームが仕掛ける側、ニチャが受ける側、という感じに推移している。
ハイノームはイケイケといった具合で土魔法を使いガンガン攻めていくが……ニチャはその全てを避けたり受け止めたりしていく。
そしてハイノームが大技……ゴーレムを使ったところで。
「ひひ……はい残念……」
「きゃーっ!?」
ゴーレムに急速にキノコが生えだしてその表面を埋め尽くし……ゴーレムは崩壊。
ハイノームは場外に落ち、第一試合はニチャが勝利した。
「決着ぅっ! 決め手となったのはニチャ選手のキノコ魔法とでも言うべきキノコの急速成長! 第一回戦! 見事にニチャ殿が勝ち抜きました!」
フォイルの実況に会場が盛り上がる。
俺も盛り上がる。
まさかニチャがあんな強いとは思わなかった。
「素晴らしい展開でしたね」
「うむ、相手の攻めを受け切り準備を整え一瞬で決める、鮮やかじゃった」
「自分としては残念っすけど……勝ったニチャさんを称えるしかないっすよ!」
銅鑼と同じく夜のうちに増設され、種族代表たちが座るための椅子も追加されている俺の観戦席で、皆が感想を述べる。
ラウームは自分のところのハイノームが負けてしまったからか少し複雑そうだが、それでも勝ったニチャを褒めているな。
「……さて、次は私の出番ですね。行って参ります、代表様」
感想戦をほどほどで切り上げそう言ったのはハイラ。
土魔法で荒れた舞台の修繕も済んだみたいだし、二試合目はハイラだからな。
俺は頑張ってくれ。と声を掛ける。
するとハイラは……。
「ありがとうございます。代表様。代表様の応援に恥じない戦い方をして参ります」
俺の激励に、見てわかるほど顔を綻ばせ、そう返答すると、そのまま観戦席から飛び降りていった。
……飛び降りていった!?
ハイラの綺麗な微笑みについ気を取られて反応が遅れた俺は急いで下を覗き込む。
すると、飛び降りていったハイラは、観客席や柱なんかを足場にして行って……見事舞台に華麗に着地した。
「おおっと、ハイラ選手これはファンタスティックな登場! 気合はファンタスティック十分と言ったところか!」
フォイルも……観客席もその登場に盛り上がっている。
俺はほっと胸をなでおろす。
……いやまあ、着地の目途もないのに飛び降りとか普通やらないよな、そりゃあ……。
俺が安堵していると、大きい銅鑼の音。
第二試合が開始された。
されたんだが。
うん。
正直、ちょっと気の毒だった。
ハイラの対戦相手は敗者復活で勝ち残ったハイエルフだったんだが……ハイラとは、その、かなり実力差が開いていた。
ハイラも同種族ということで手の内は完全に分かっていたんだろう。
全く危なげが無かった。
終盤の方なんてもう戦いじゃなくて指導だったもんな。
これはこれで盛り上がっていたけど。
「ありがとうございました! 自分の未熟さがよく分かりました……! 次は、もっと腕を上げてきます!」
「あの子はとても素直でまだまだ伸びしろがあります。今から次の闘技祭が楽しみです」
そんな感じで第二試合の勝者はハイラ。
……にしてもこんなさわやかな師弟物語みたいなのやられると次回の開催は未定だなんて言いづらいな……考えておこう……。
そしてそのままどんどん試合は進む。
順当な結果もあれば番狂わせな結果も……いや、番狂わせはそんな無かったかも……。
というか俺は皆の強さの正確なところはよく分かっていない。
種族の代表はまあ強いんだろうなってくらい。
まあ自分の強さを分かりやすく示すために闘技祭開いてるんだしな、そもそも。
まあそんな素人な俺だがそれでも印象に残った試合はあった。
いやまあ全部印象に残ったが。
皆頑張っているんだしな。
やはりその中でも特に印象に残ったのはルシュ対フリストルの試合だな。
第一、第二試合と違いいきなり種族代表同士がぶつかり合った試合。
いやまあ出場数考えたら当然ではあるんだが。
この試合はとんでもない高機動戦だった。
出場者のことを考えたら広く作っておくべきと進言され、かなり広めに作られた舞台。
そこを、クイーンケンタウロス、フリストルが凄まじいスピードで駆け巡る。
……そう、フリストル……いや、フリストルたちはつい先日進化を果たしていた。
同じ時期に街に来たクトネーたちとニチャたちも。
第一試合、ニチャが結構あっさり勝ったのもおそらく進化したためだと思われる。
全貌は見えなかったが。
あんなキノコを生やす魔法? とか今まで見たことなかったしな。
そしてフリストルは予選では相手が相手……シロ……だったので、正直よく分からなかったが試合の光景を見ればわかった。
とんでもなく速い。
下手したら音速にすら達しているんじゃないか? って速度。
それが舞台上を縦横無尽に駆け回っている。
……というかこの速度相手に手加減したうえで張り合えるシロがヤバいな、これは。
だがルシュもさるもの。
そんな超スピードで襲い来るフリストルのランスによる攻撃をその手に持った二刀で全ていなしていく。
ギンギンギン! と、交差する度に鈍い音が響きまわっていた。
決着は一瞬だった。
フリストルが勝負を決めるためかさらに速度を上げて突っ込んだところ……ルシュの姿が消失。
ズザザザザァ! と、音を立て止まったフリストルが舞台を見回しルシュを探したところで……フリストルの首に二刀が突き付けられる。
自身の最高速の突進を躱され、背後に馬乗りにされたことに気付いたフリストルはそこで潔く降参し……ルシュが勝利。
「あーっ! クソっ! 勝てると思ったのになぁ……! クトネーのヤツにもリベンジしようと思ってたのに!」
「あの突進、とてもお見事でした。もし真っ直ぐ突進してくるのではなくフェイントを入れられていたのなら……危なかったかもしれません」
「……それでも負けていた、とは言わないんだな?」
「はい。主様の御前ですから」
「かーっ! ちくしょう! 分かってたけどやっぱつええなあんた! ……完敗だ! 俺に勝ったんだから頑張れよ!」
「ええ、もちろんです」
と、二人はさわやかに握手。
大歓声の中決着がついた。
そんな風に盛り上がりながら試合は続き、第一回戦はすべて終了。




