139.予選経過
その後。
予選はつつがなく進んだ。
予選の障害物競走……いや障害物競走とはまた違うか? まあいい。
その第一関門は鬼ごっこ、第二関門は隠れた者をわずかな痕跡から見つけ出すかくれんぼ、第三関門はフィーネたちに空中に長大な水の道を用意してもらって行った遠泳。
これらの関門をクリアし、コロシアムに戻ってきた上位三位。
本選出場者が続々と決まった。
第一組の一位通過。
アラクネ代表のクトネー。
「おっ……んっ! こほんっこほんっ! 光栄ですわ。代表として恥ずかしくないところを見せられたと思います」
別に高笑いしても良いと思うが。
「ほんとですっ……いえ! まだまだ先は長いですから……ほほほ……」
二位。
ケンタウロス代表フリストル。
「くっそー! もう少しだったのになー!」
言葉通り。
第一関門でクトネーに抜かれ、後塵を拝することになったフリストルだが、その後自身も気合いで第一関門を何とか突破しクトネーを猛追。
関門で差をつけられながらも、その走りでじわじわとその差を縮めついに追い抜く……直前で、ゴール。
もう少し……あと数十メートルもあれば一位はフリストルだった。
それくらい紙一重だったな。
「けど負けは負けだ! この借りは本選で返してやるからな!」
後塵を拝しはしたがやる気十分だな。
「いひひ……熱いね……乾燥しちゃう……」
第三位。
マイコニン代表ニチャ。
フリストルの少し後にしれっと三位でゴールしてた。
フリストルの猛遂に目を取られていたというのはあるが……どうやって三位まで上がってきたのか分からなかった。
「ひひ……こういうので……陰からしれっと持っていくのとか得意だから……いひひ……」
うん。
こういう大勢での行事とかあんまり気が乗らないんじゃないかとも思ったが、どうやらやる気は十分みたいだ。
本当にダークホースになるかもしれない。
そして、第一組が終われば次は第二組の予選が始まるんだが……こっちもこっちで見ごたえがあった。
第一組の時に司会のフォイルが、”例えば交渉力でチームを組んで抜けるのもアリ”と、言っていたが、本当にやった者がいたからだ。
ケットシー代表のニャジット。
彼女は、参加していたアリゲイター代表スロールと、タートラー代表ターヴィーと組んで三人で全関門を突破した。
めちゃくちゃ速かった。
チーム組んでるんだから当然だが。
頭脳のニャジット、力のスロールとターヴィーでバランスが良かったのもある。
ちなみにゴールはニャジット、スロール、ターヴィーの順。
スロールとターヴィーは通過できれば順位は別にどうでもいい派だったらしい。
そして次。
第三組の突破者はドワーフ代表のイアン、ノーム代表のラウーム、鍛冶妖精ヴィーラントの順。
「ふぅ……何とか面目は保てたぞい」
「くぅっ……悔しいっす! 次はこうはいかないっすよ!」
「はぁ……はぁ……こっちは必死についていって息も絶え絶えだって言うのに……すさまじい、イアン殿もラウーム殿も……」
ヴィーラントが必死に着いて行ってたが……ここはイアンとラウームの一騎打ちの様相を呈していたな。
全体的に能力の高いイアンと土魔法に熟達したラウーム。
着いて行っただけすごいよヴィーラントは。
第四組。
デモンズ代表リネイア、エンジェル代表シエル、そしてフォイルの順。
ここもリネイアとシエルの一騎打ちだったなほぼ。
競うように関門クリアして行って……最後、ぎりぎりでリネイアが前に出た。
「よしっ……!」
「いやー久々に負けたなー……。本戦ではあたしが勝つからねー?」
珍しくガッツポーズをするリネイアとひょうひょうとしながらも少し悔しさをにじませるシエル。
それと……。
「ファンタスティック! とてもファンタスティックな友情です! 素晴らしい!」
なぜかしれっと参加していたフォイルが三位。
いやこれはびっくりしたな。
司会のフォイルがいつの間にか予選第三組に交じってたんだから。
しかも参加しながらも実況も欠かさないし。
実況してなければぶっちぎり一位も狙えたんじゃないか? フォイルは転移魔法使えるし。
「競争で転移魔法はさすがにファンタスティック無粋ですよ!」
……フォイルの美学的にナシらしい。
第五組。
マーメイドのトゥーナ、家事妖精のキール、ビープルのエイリス。
「やりました~一位です~」
「お見事です、感服いたしました」
「私が三位って……何でよぉぉーーーっ!」
ここも凄かったな。
第五組は道中トップだったのはエイリスだった。
調子に乗りやすいところはあるが、ビープルの代表だけあって能力は高い。
蜂のように舞い、蜂のように刺……しはしなかったが。
順調に関門をトップ通過して行ってた。
それに綺麗に追従して行っていたのがキール。
ロングスカートのメイド服でお世辞にも動きやすそうとは言えない服装で……当然のようにエイリスの真後ろに居た。
エイリスは後ろなんて振り向かず調子に乗ってたから気付いてなかったけど。
音も立てずに着いて行ってたな。
もし俺が夜にやられたら俺もめちゃくちゃ驚く自信がある。
だがさらに凄かったのがトゥーナ。
トゥーナはまあ、序盤はパッとしなかった。
本人が陸上でも活動できる、と言っていた通り、魔法で下半身を鱗の付いた足に変え、参加した。
しかし陸上を走ったりすることには慣れていなかったらしく、どんどん順位を落とし最下位に。
しかしそこから第三関門の遠泳。
ここで全部ひっくり返した。
魔法を解いて元の姿に戻ったトゥーナはここだけで他の全員を抜き去ったうえ、キールとエイリスがゴールまでかけても縮めきれなかった差をつけた。
そして最終結果はトゥーナ一位。
とんでもない速度だった。
一人だけ五十倍速ぐらいで泳いでいるのかと思った程だ。
ちなみにエイリスが三位になったのは、トゥーナとの差を縮めきれず、仕方なく二位でゴールしようとしていたエイリスの横をゴール直前にするっと抜いたからだ。
エイリスは抜かれた瞬間目が点になってた。
いまだに納得できないのか叫んでいる。
第六組。
エルフ代表ハイラ、シルフ代表ユウフ、イフリータ代表イグニータの順。
「分かってはいたけどハイラさんとんでもないな……! こっちも本気で行ったんだけど……!」
「ハハハハハ! 完敗だったな!」
「代表様に恥ずかしいところは見せられません」
ここは全く危なげが無かった。
気合を入れていたハイラが当然のように一位をかっさらって行った。
第二関門のかくれんぼとかすごかったな。
到着して二秒後に地面に潜って隠れてたハイエルフ見つけ出して、いくらある程度手を抜くと言ってもこれは抜きすぎですって指導までしてたもんな。
俺は手を抜かれてもどこに隠れているのか全く分からなかったのに。
流石だ。
そして第七組。
コボルト代表ルシュ、雪妖精フィノウ、火事妖精……いや、火妖精ヤーファ。
「むーりー! こんなの勝てないー!」
「君と同じ意見になるのは複雑だけど……その通りだね、勝てる気がしなかった」
「さすがにこんな所では負けられないので」
全く危なげが無かった(二回目)
ここも気合入りルシュがずっとトップだった。
第一関門も、シロが加減していたとはいえ、これまでの参加者の中でも最速で抜けて行ったんじゃないか?
シロもどこか、やるようになったな……みたいな目をしている気がする。
まあ、進化前のちっこいルシュも知ってるからな、シロは。
最後、第八組。
通過者はスライムのムイ、ウンディーネ代表フィーネ、シロの子供の一頭。
……うん。
ここはカオスだった。
まずムイ。
見かけないなあと思ったらなんかいつの間にか参加していた。
それでしっかり一位を取っていた。
ムイはぽよぽよ跳ねて移動するんだが……一回のぽよぽよで十メートルくらい飛んでいた。
そんな速く移動できるなら俺の肩に乗る必要なくないか?
ぷるぷるぷるぷるっ……!
ゴールした後即座に俺の肩に乗りに来たムイがそれとこれとは話が別だ、と言うようにプルプル震える。
いやまあいいけどな、別に。
そして二位がフィーネ。
「頑張ったよ~あるじ~! 褒めて褒めて~!」
正直凄くよく頑張ったと思う。
凄かった。
「えへへ~!」
本当に心から思う。
なんせこの第八組、シロの子供たちが三頭参加していた。
三位から五位はシロの子供達だ。
ムイの後ろを猛追していたこの三頭を第三関門の遠泳で抜き去り、二位に滑り込んだのは本当に凄い。
シロの子供達もよく頑張ったな。
今の時点で本戦に滑り込めたのは一頭だけだが……この後もまだあるから気は落とさずにな。
「「「うぉんっ!」」」
うん。
いい返事。




