136.祭りの提案
「……闘技祭?」
「はい、そうです」
デュークベア襲来から少し経ち、暑さも少しずつ増してきているレースピアの街。
その中心にある屋敷の会議室で、俺は聞き間違えたかと発言を聞き返す。
聞き違いじゃなかったみたいだが。
今現在、俺は会議室にそれぞれの代表メンバーに集まってもらい、今年やる祭の相談をしていた。
そんな中真っ先にハイラから出た発言がこれ。
とりあえず……どういうものか聞いていいか?
「もちろんです」
そうしてハイラから聞いた闘技祭の内容はこう。
闘技祭は……簡単に言うならバトルロイヤル。
参加者たちが会場に集まり、そこで集団戦を行う。
最後までたっていた者が勝者だ。
そしてそれを観戦して皆で盛り上がる……と。
簡単にまとめるとこんな感じ。
いや、まあ大分おおざっぱというか……。
何で急にこんな提案を?
「この間のデュークベアの襲来。あれをきっかけに思ったのです。これからもあのような脅威が街に近づいてくることもあるかもしれない。その脅威から街を、代表様を守るためには力をつけておかないと、と」
それで闘技祭を?
「はい」
周りを見渡す。
ハイラの提案に一切反対意見が出なかったことから見ても、皆多かれ少なかれハイラと同じ意見のようだ。
「それに、この街で自身がどれだけ強いのかに興味が無いと言えば嘘になるので」
続くその言葉に深くうんうん、と頷く会議参加者たち。
……そっちが本音だったりしないよな? デュークベアが都合よく襲来してきたから、それをだしに使おうとしているわけじゃなく。
「バレてしまいましたか」
ちょっと。
「冗談です。……それに、他にも闘技祭を開く利点はあります」
ハイラの冗談は分かりづらいな……他の利点って?
「選抜です。主殿に任されている、警察や消防に配置する人員。その見定めもここでしてしまえばいいのではないかと思いまして」
……ふむ。
なるほどな……。
俺は少し考えてみる。
そんなこと無ければいいと思っているが、警察は犯罪に対抗する為それなりの武力は必要だろうし、消防も火事現場という極限状況で動くことを求められる。
強靭な人材を選ぶための試験としても闘技祭を使ってしまおうということか。
まあ理屈は分かる。
分かるが……。
……流石に加減無しの戦闘なんて危険じゃないか? それに警察はまだしも消防の方の選別ならもっと違う方法にした方が……。
「と、おっしゃりますと?」
え? ……例えばそうだな……参加者はいきなり戦わされるんじゃなくて、いろいろな競技……競争や力試しなんかに参加してもらって、それで上位に残った者に今度は一対一で戦ってもらって、それで一番を決めるっていう……。
ハイラの聞き返しに俺は特に何も考えずに頭を回してそう返す。
すると。
「なるほど。さすが素晴らしいアイデアです代表様。ではその通りに」
「「「異議無し」」」
なんかシームレスに意見が通った。
いや待って待って待って待って。
まだやるとすら言ってない。
「ですが今、代表様自ら内容を制定……」
してないしてないちょっと意見出しただけだから。
流石に本気で戦うっていうのは結構危険だから……。
そう。
前世の格闘技なんかでもきっちり防具をつけた試合でけが人が出たりするからな。
さっきハイラに聞いた分には、闘技祭は武器の使用を許可するものだった。
流石に危険性が大きすぎる。
「ご心配なさる必要はありません、代表様」
及び腰な俺にハイラがそう言ってくる。
「武器の使用は可ですが、もちろん刃引きはします。それに……代表様に作っていただいた薬草畑を使えばどんな外傷であろうと傷一つなく治療することが出来るでしょう。代表様に様々な種類の薬草を栽培させていただいているので」
確かに、今薬草畑にはかなりの種類の薬草が生えている。
調査団が持ち帰ってきた物とか開拓の過程で見つかった物とか片っ端から栽培したからな。
俺は把握してないが……その薬草群のすべてを把握しているハイラがそう言うのであれば、恐らくそうなんだろう。
ふむ、まあ……それなら……いいか……?
安全面が担保されるのなら、悪くない提案だ。
むしろ良い。
格闘技が興行になっていたりするように、戦いを観戦するというのはかなり盛り上がる行事だ。
そうでなければコロシアムとか作られない。
俺はそこまで考えて俺はハイラに向き直る。
本当に大丈夫なんだな?
「はい。無いとは言いませんが。危険性はかなり小さいでしょう」
ふむ、それなら……。
ハイラの返答に俺は賛成することに決める。
せっかく出してくれた提案だしな。
しかも街のことまで考えて。
ああ、だけど……。
言うまでもないことだが参加者は自分から参加するといった者だけだからな。
全員参加はダメだ。
戦いに不慣れな者だっているだろう。
そんな者に祭だから全員参加、などというのはさすがに可哀想だ。
俺も前世では運動苦手だったから全員参加での体育祭は辛くて……。
っと、話が逸れた。
「もちろん分かっております」
うん。
なら良いか。
俺は賛成する。
「ありがとうございます。では今年の祭は闘技祭を行うということで」
え? いや、俺は賛成すると言ったけど他の者の意見も……。
「大丈夫です」
何が?
「代表様が賛成すると言えば皆賛成します」
いや、流石にそれは……。
……本当に反対意見出ないな。
え? 皆いいのか?
別にそんな俺の意向に完全同意、みたいなことはしなくていいんだからな?
「「「大丈夫です」」」
何が?
そんな感じでそんなつもりは無かったが俺の鶴の一声……鶴の賛成? で闘技祭を行うことに決まり、会議はその後、祭の内容を詰めるものになった。
「先ほど代表様がおっしゃられた通り、戦い一辺倒ではなく前段階で競争や力試しを盛り込みましょう。警察や消防の人員の選抜のことも考えると純粋な武力以外も見ておきたいです」
「良い案だと思ってるけど、それだと力や足には自信ないけど戦いの技術には自信あるー、って人が取りこぼされちゃわない?」
「……確かにそうですね。それではこういうのはどうでしょう? そういった者たちを拾い上げる為に…………」
「……後は闘技祭用の武器の用意もじゃな。数は早めに伝えてくれんと間に合わないかもしれん」
「やることは決まったのですし、今日から早速参加者を募りましょう。武器の用意はどれだけかかりそうですか?」
「特殊な物が無いのであれば七日あればなんとかなるじゃろうな」
「……なるほど。流石ですね」
「会場は観戦も行う都合上、コロシアムのような形にするのがいいのでしょうか?」
「それがいいんじゃないっすか? ステージは戦いで傷つくっすし、自分らが作るっすよ!」
「ふふ、では共に作りましょう主様にご満足いただけるものを」
「っす!」
先ほどまでハイラの提案を邪魔しない為か静寂を保っていた皆が議論を回している。
どんどん内容が決まっていくな。
俺もそのまま議論に加わって闘技祭の内容を詰めていく。
やると決めたら俺もいろいろとやってみたいアイデアが出てきたからな。
そんな熱の入った会議からおよそ十日後。
「えー……ではここに第一回! レースピア闘技祭を開催する!!」
「「「「「ワァァァァァァァーーーーーーーッッ!!!!」」」」」
レースピア闘技祭は無事開催の日を迎えた。
いやー凄い熱気。




