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ゆるっと街づくりin異世界~すべての種族が住む街を作れ!?~  作者: 下河スズリン


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135/178

135.襲来

「代表様、緊急事態です」


 何だ? 何が起きた?




 ムイたちと遊んで疲れ切り、他のゴム製品を作るのはまた今度にしようと決めて休んだ翌日。

 俺の居る執務室に、ハイラが勢いよく入って来る。

 かなり慌てている様子だ。

 それだけまずいことが起きたのか?

 俺は急いでハイラに話を聞く。


「デュークベアが現れました」


 デュークベア? パードに報告を受けた熊の魔物が? この街に?


「はい」




 俺はハイラに案内され、急いで見張り塔に駆け付ける。

 駆けつけて街の外、ハイラが指し示した方を見たんだが……うん。

 何も見えない。

 目を凝らしたり、軽く見まわしてみるが変わらない。

 俺の視界に映るのはなだらかな平原と森だけだ。


 何だ? どこにいるんだ? もしかして森の中か?


 俺がそうはてなを頭に浮かべていると。

 上から声。


「だめじゃんハイラ―。皆ハイラたちほど目が良くないんだからさー。森の中に潜む獲物とか普通見えないって」


 声と共に上から降りてきたのはシエル。

 呆れた様子でハイラにそう声を掛けている。


「……すみません。少々焦っておりました」


 シエルのその言葉に、ハイラはハッとしたように目をぱちぱちと瞬かせると、落ち着くように一回深く呼吸して俺に謝って来る。


 いや、全然謝る必要はない。

 慌てる気持ちも十分分かる。


 俺はそう声を掛ける。

 ビル並みの大きさの熊とか街に近づいてきたら慌てて当然だろう。


「ありがとうございます、代表様」


 それで改めてなんだが……デュークベア、どこにいるんだ?


 その俺の問いに答えたのはシエル。


「うーん、ここからじゃどれだけ説明されても見えにくいだろうし……あたしがよく見える場所まで連れて行ってあげる」


 よく見える場所?


 疑問に思っていると、シエルは後ろから俺を抱えるように抱きつき、そしてそのまま……飛んだ。


 うわっ……とっと……。


 身体を襲う浮遊感につい声が出る。

 俺はシエルに抱えられて空を飛んでいた。


「暴れないでねー? 暴れられても落とさないけどさ。この命に代えてもー」


 真後ろからそう声を掛けてくるシエル。

 もちろん言われずとも暴れてなんてない。

 俺だけじゃなくシエルも危なくなるかもだしな。


 それにしても命に代えても、か。

 冗談だろうけど別に危なくなったら放り出してくれてもいいぞ? 多分着地は出来るし。

 自分の身の安全を最優先にしてくれ。


 そう言っておく。

 俺には創造神器があるからな。

 うちわの形態に変えて、着地の瞬間に思い切り風を起こせば十分軟着陸できる。


「あははー気持ちは嬉しいけど、あたしたちにとは代表様の身の安全が最優先だからー」


 そんな感じの話をしながら飛ぶことしばらく。

 先ほどハイラが指し示していた方向の森の上空辺りまでやってきた。


「ほら代表様ここからなら見えるよーあっち見て」


 到着したシエルはそう言うと、抱えた俺の身体をそちらの方へ向ける。

 その誘導に従って森の中を見てみると……居た。


 森の中、上から見たら分かりやすい少し開けている場所。

 そこに巨大な何かが丸まって……おそらく眠っている。


 その巨大な何かの大きさは一軒家サイズ……を、軽く超える大きさ。

 あれが熊だというのなら、確かに二足で立てばビル並みの大きさになるだろう。


 なるほどあれが……。


「そー、あれがデュークベア。あたしも見るのは初めてだなー」


 呟いた俺にシエルが答える。

 やはりアレがデュークベアらしい。

 だが、なんというか……うぅん?


「いやー、ほんとすっごい大きさ。しかもこの距離でも威圧がビンビン来てる。とんでもないなー。……わ、動き始めたよ。代表様、どうする?」


 俺たちの視線の先ではデュークベアが起き始めていた。

 丸めていた身体を伸ばし、ぐっと伸びる。

 そして四足で大地を踏みしめると前足を上げ……思い切り振り下ろす。


 ズドンッ! と、爆音が鳴る。

 上空に居る俺たちにも軽く衝撃が届く。


 俺たちは空中に居るからこの程度で済んだけど、街にいる者たちもしかしたら地面の揺れ感じたんじゃないか?


 そう思うくらい強力なストンプ。


「いややっばぁ……あんなのまともに受けたらぺっしゃんこになっちゃうよー……。なんとか戦わずに追い払えたり……無理かな……気性荒いし……」


 俺の背後でシエルが戦々恐々としている。

 その様子を感じても……うん、なんというか……あまり脅威を感じない。

 創造神器を出してみても同じだ。


 創造神器は俺に対する脅威に対して反応するが……かなり反応が小さい。

 創造神器もデュークベアにあまり脅威を感じていない。


 これなら……うん。

 シエル。


「はい?」


 ちょっとデュークベアのところまで行ってくれ。

 上から落としてくれればいいから。


「はいぃ?」




 とても怪訝そうにされ、考え直すように言われたが、説得して押し通した。

 街に近づかれたら大変になるかもだし今のうちにやっておきたい。


「まずそうだったらすぐに抱えて連れ戻すからねー? 絶対だからねー?」


 分かってる分かってる。

 大丈夫大丈夫。


 そうやってシエルに声を掛けつつデュークベアの真上まで運んでもらい、そこで手を離してもらう。

 デュークベアは……落ちてくる俺に気付いたのか、顔をこちらに向けた。


 その頭部には太い一本の角が生えており、目は赤く、とても大きい牙が生えている。


 いやあ……こんなのといきなり森で遭遇したら怖いなんてもんじゃないな……。


 そんなことを考えながらも不思議と俺の心は落ち着いている。

 そのままデュークベアの方へ落下していく。

 そして手に出していた創造神器のつるはしをデュークベアの首元目掛けて思い切り振りぬいた。




 ズズゥン……と、先ほどのストンプよりは小さな、それでもかなり大きい音を立ててデュークベアの巨体が地に沈む。

 その頭と胴は泣き別れしていた。

 創造神器の一撃で落ちたのだ。


 やはりと言うべきか……簡単に倒せたな。

 脅威を全然感じなかったから、こう出来るだろうとは思っていたが。

 それにしても創造神器の威力? 上がってないか? 三頭鹿倒していた時はここまでじゃなかったような……。


 俺がそうデュークベアの前で顎に指をあてていると。


「すっっごっっっ……!」


 唖然、といった様子のシエルが降りて来た。


「代表様がかなりやるのは知ってたけど……あれを一撃なんて……! ほんっとすごい!」


 珍しく興奮した様子のシエルにまくしたてられる。

 いや、創造神器の力なんだが……。


 神器の感謝の念を送りながらシエルが落ち着くのを待……とうとしたが。

 そこで気付く。


 ……あ! 仕留めたんだから早いところデュークベアを運んでしまわないと!


 最近は自分で狩りなんてあんまりやらなくなってたから頭から飛びかけてた。

 大体シロたちかハイエルフたちに狩ってもらってるからな……。


 まあとにかく早いところデュークベアを運んでしまわなければならない。

 街まで運んだら処理はハイエルフたちに頼める。


 そういうわけで、シエルに飛んで戻って人手を連れてきてくれるように頼み、俺はそのままデュークベアを頑張って運ぶ。

 ときどき邪魔になる木を撤去しながら運んだため、かなりノロい運搬速度だったが、俺が思っていたよりもだいぶ早くフリストル率いるケンタウロス族が到着。

 人海戦術で街までデュークベアを運びきった。


「これほどの魔物を一撃で……代表様には本当に驚かされます」


 街にデュークベアを運び入れ、解体をお願いすると、引き受けてくれたハイラがそう言ってくる。

 かなり焦っていたからか、驚きもひとしおのようだ。


 驚いている者はハイラだけではなく、他の住民も唖然としている。

 時折、「代表様……すご……」や「この街に住めてよかった」、なんて声が聞こえてくる。

 ちょっと面はゆいが、この街に住めてよかったとそう言ってもらえるのは嬉しい。




 その後。

 解体が済んだデュークベアの肉は保存用にしてもかなり多かったので、パーっと食べてしまうことに。

 肉質はかなり硬かったが、ワイルドな旨味がある肉だった。

 住民の間でも美味しいけど……と、少し好みが分かれる味だったようだ。

 今度美味しく調理できる方法でも考えてみるか。


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