130.収穫と実をつけない木
昨日ミスで投稿できてなかったので2話投稿します
毎年……いや、毎季節待望の収穫の時。
少し前まで学校建設を手伝ってもらっていたのでちょっと心苦しいが……再び総出で収穫作業を手伝ってもらう。
収穫は大事だからな。
「ご心配なさらず、代表様。皆、食料の重要性は分かっております。不満などあるはずがありません」
「そうっすよ! それに、ここの作物は美味しいっすからね! 不満どころかみんな喜んで手伝うっすよ!」
今年初めての収穫。
俺の隣で手伝ってくれているハイラとラウームがそう言ってくれる。
うーん、確かにそう言ってくれるのはありがたいが……。
……いや、そうだな。
皆のその厚意はありがたく受け取ろう。
そしてこの街をもっともっと発展させることで返せばいい。
「そうするのがよろしいかと」
「これ以上に発展とか……今から楽しみっすね!」
そういうわけで気合を新たに収穫を続けていく。
毎度のことながら……今回も豊作だ。
冬明けに作った畑にわさわさと作物が実っている。
見るだけで気持ちが上がってくる量だが……その分収穫の手間が増える。
しかし収穫作業は俺の予想よりかなり速く進んでいた。
増やした作物以上に人手が増えているからだ。
「にゃふぅっ……! これほどの質の作物がこんなにたくさんっ……! まさに宝っ……目の前にあるのは宝の山っ……!」
「ニャジット殿、興奮なされるのは良いが収穫は落ち着いて丁寧にやった方が……」
「……。」
少し離れたところで作業をしているのはニャジット、スロール、ターヴィー。
ニャジットはうちの街の作物に大興奮みたいだな。
一応収穫物自体は見ていたはずだが……まあ実際に実っているところを見るのはまた別なんだろう。
そしてそれを何とか落ち着かせようとしつつ、体格に見合わぬ丁寧さで収穫を行っているスロールと、黙して語らずもくもくと収穫に精を出すターヴィー。
二人……というかその二種族は港に居住している。
なので別に街の方の収穫を手伝う必要はないと言ったのだが……。
「いえ、世話になっているのにそれではあまりに薄情というもの。港の仕事もありますし皆連れてくると言うわけにはまいりませんでしたが……我々だけでもお手伝いいたします」
「……!」 コクッコクッ!
と、そう言ってくれて。
手伝ってくれている。
二人だけとはいえ、体格は大きく力も強い、しかも仕事も丁寧だ。
とても助かっている。
まあ、ニャジットも……うん。
興奮は止まらないようだが、収穫はしっかりやってくれている。
しかもその手付きも至極丁寧。
もしかしたら俺より丁寧なんじゃないか?
「これほどの宝! 雑な手つきでなんて触れませんにゃ~!」
……うん。
宝じゃなくて作物だけど……まあ丁寧にやってくれてるし別にいいか。
他にも……。
「何でこの私が収穫なんて……。私たちが採集するのは蜜であって作物じゃないんだけど」
「家庭菜園の手入れ、収穫も家事妖精の仕事の内です」
「家庭菜園って規模ではないんじゃ……?」
「こんなに実ってるの見るとパーッとやりたくなってくるなあー……よし!」
「やらせないよ? 大人しく手伝うのと終わるまで凍り付いてるのどっちがいい?」
エイリスと妖精たち。
エイリスはなんだかんだ文句は言いつつもきっちりやっている。
その辺りは真面目だ。
妖精たち。
大半は問題ないが、ヤーファはちょっと……いや普通に問題。
建てたばかりの消防署がいきなり稼働する姿は見たくないので、フィノウにしっかりお目付けしておくように頼む。
それ以外にも、コボルト、エルフ、ドワーフ、精霊……。
増えた人手によって、個人個人の作業量も、畑を増やしたにもかかわらずトントン……いやちょっと楽になっているかもしれない。
「シエル。記入数が一間違っています」
「ひー! これだけあるんだから一個くらいいいでしょー!?」
「ダメです」
「うわー! ほんと収穫時期は地獄だー!」
……まあ、忙しさがさらに上がっているところもあるが。
収穫の記録はな……学校が動き始めたら、識字率も上がって人手も増えるんだけど、現状はまだ学校動いてないので……。
一応ケットシーとハイエルフたちの一部が手伝いに行っているものの……流石に焼け石に水。
というか天使が地獄とか言っていいのか?
いやそもそも異世界に地獄が……? いやこれは翻訳で俺にそう聞こえているだけか。
まあそんな感じで。
一部を除き作業自体は順調に進んでいる。
そして作業だけじゃなく作物自体も順調。
先にも言った通り、既存の作物は今年もしっかり豊作になっている上、新しく植えた作物もしっかり実っている。
例えば、蕎麦だ。
いつも通り鉱山を掘っているときに出てきた種。
それを植えた結果実った。
俺はうどんかそばかで言えばそば派。
なのでこれはとても嬉しい。
鰹……みたいな魚はまだ見つかってないが、昆布はある。
出汁は取れるからそばは作れる。
というかそれを言うならうどんだって作れるし、ラーメンだって作ろうと思えば作れるか?
その内麺料理大量に作るパーティー開いても良いな。
他にも、デーツ、小松菜、サンチュ……あと多分スパイス系と思われる実、など。
またいろいろと食卓を彩ってくれそうだ。
しかも、スパイスが俺の思っている通りのモノなら……もしかしたらカレーが作れるようになるかもしれない。
楽しみ。
後は野菜だけじゃなく果物も。
こっちの今回の目玉はメロンだな。
種を植えた地面からつるが出てきて……あの薄緑色の実をつけた時の俺のテンションの上がりようと言ったら。
ついガッツポーズしちゃったもんな。
そして実をつけた後もメロンはすくすくと育ち……一玉が俺の頭の二倍くらいまで大きくなった。
……メロンってここまで大きくなったっけ?
前世ではあまり縁が無かったから分からない……。
……まあ、いいか。
きっと美味しいだろうし。
後、これは食用じゃないが……推定ゴムの木。
植えた種の中に一つだけ、果実をつけないものがあった。
俺は首をひねっていたが、すくすくと成長はするし、果実をつけないこと以外は問題があるようには見えない。
もしかしたら木材として使えるのか、と思って、性質を調べてみようと枝を切ってみたところ……切り口から白い液体が滴ってきた。
そこで気付いた。
これまさか……ゴムの木なのでは? と。
俺の推測は正解しているのかどうなのか、実際にゴムを作ってみなければ分からないが、ゴムを作るためには確か硫黄が要る。
この推測を確かめるのは硫黄が見つかってからだな。
硫黄なんて火山周辺でしか見つからないが……ここは異世界だし、何よりいつも掘りに行っているあの山には信じられないほど鉱物資源が山盛りだからな。
硫黄だってきっとあるだろう。
ゴムが出来ればゴム製品が作れるようになる。
こっちも楽しみだ。
さて、そんな感じで。
作物自体も収穫自体も凄く順調。
俺が考えていたよりずっと早く収穫は終わった。
手伝ってくれた住民の皆に感謝。
お礼を言う。
「いえ、当然のことですから」
「そうっすよ! 頭に声かけられたら力を尽くす! 当然の話っす!」
ハイラとラウームを筆頭に皆がそう言ってくれる。
本当にありがとう。
感謝の気持ちを込めて……採れたばかりのメロンを切ってふるまう。
俺も正直味が気になっていたからな。
結果。
「こんな……こんなに美味しい果実が……!」
「甘いっすっ……口の中が幸せっすっ……!」
大絶賛。
俺も含めて。
いや本当に美味しい。
噛むと口の中で溶けてとてつもなく甘い果汁が飛び出し、口の中に広がっていく。
こんなに美味しいメロンは初めて食べた。
美味しすぎて……俺の目の前では今、メロン争奪戦が行われている。
それぞれ自分の得意なもので勝った者がメロンを手中に収めているのだ。
よく見ると、模擬戦をやっているものまでいる。
……うん。
メロンは速やかに増産した方が良いな。
「それがよろしいかと」




