129.視察終わり
昨日ミスで投稿できてなかったので2話投稿します
「警察署にもですが……この街の代表たる主様のお部屋が無い、というのは容認できません。なのでお作りしておきました」
俺をその部屋に招き入れながら、ルシュが俺にそう言う。
通してもらったその部屋の第一印象は……なんかすごい豪華。
入口の真ん前には広いスペースがあり、そこには大きなじゅうたんがひいてある。
そしてその絨毯の先には俺が丸二人分くらい寝そべられそうな大きな机。
さらにその大きな机の斜め後ろには二股に分かれた階段が鎮座していて……部屋の中に二階がある。
しかもロフトみたいな感じじゃなくかなりしっかりしてそうな二階。
ここ最上階のはずなのに何で二階があるんだ?
そして天井には……めちゃくちゃ大きい光石。
まるでシャンデリアみたいだ。
いやー……凄い。
ここ俺の部屋なのか?
魔法学校の校長室だって言われても信じちゃう感じ。
というかそうだ、校長室は?
「こちらに御座います」
そう言ってルシュが案内してくれたのはこの部屋を出てすぐ横にある扉。
俺用の部屋の豪華な扉に視線を吸われて気付かなかった。
その扉の先にあったのは……うん、校長室にしては豪華な部屋。
こちらにもじゅうたんが敷いてあり、執務机と、応接用の机とソファが運び込まれている。
だけど。
うん。
この部屋の豪華さを見ると、ちょっと……というか普通に見劣りする。
それくらいこの部屋が豪華すぎる。
落ち着いてよく見ると、部屋の壁には天井まで届く棚が備え付けてあるし、今気づいたが天井も高い。
校長室の二倍くらいないか? これ?
しかも部屋自体の面積は軽く校長室の五倍はある……。
必要か? こんな豪華な部屋。
「必要です」
いやでも別に学校なんてそんな頻繁に来る場所でも……。
「来られた時に箔が付きませんから」
……うん。
まあもう出来上がっちゃってるしな……実際。
どうしても使用頻度が気になるようだったらその内有効活用する方法でも考えたらいいし。
そんな感じで自分を納得させ。
とりあえずさっきから気になっていることをルシュに聞く。
それで……一つ聞きたいことがあるんだが。
「なんなりと」
ここって、最上階だよな。学校の。
「はい」
なのに何でこの部屋二階があるんだ?
「作ったからです」
そりゃ作ったからあるんだろうけども。
「ああいえ、言葉が足りませんでした。正確には……最上階のさらに上を作ったからです。主様自らの目で確かめてもらえば分かりやすいかと」
その言葉に実際に自分の目で確かめてみようと思い、部屋の二階……学校は地上五階建てだから六階になるのか? ちょっとややこしい。
まあともかく行ってみる。
下からはかなりスペースがある事だけは見て取れていたものの、具体的な内装は見えていなかった。
上がってきて初めて詳細な内装が見えたが……うん、豪華。
何回豪華と言えば良いんだ俺は。
二階部分。
まず目につくのは巨大なベッド。
こういうのキングサイズって言うのか? 俺が軽く十人は寝ることが出来るような巨大さ。
さらにベッドの四方からは柱が伸びておりベッド自体に天井が付いている。
そしてその天井部分から、向こう側が透けるくらいの布が垂れさがっている。
うん。
どこの王侯貴族のベッドだこれ?
「主様にふさわしい物に仕上がったと自負しております」
やはりと言うべきか。
作ったのはルシュたちらしい。
いやまあ俺が作った覚えがない以上、うちの街の家具作りは基本コボルトたちがやってるので当然なんだが。
「このとても薄いカーテンはクトネー殿にご協力いただきました。主様のためだと言ったらとても快く協力してくれました」
そのルシュの言葉に何気なくベッドのカーテンを触ってみるが……。
うわすごい。
めちゃくちゃ手触りが良い。
まるで手の中を滑るようだ。
いや、まあ正直嬉しいのは嬉しいけど。
ちょっと困惑が勝つ。
ここ学校だよな?
「はい。しかしどうしてもお疲れの時もあると思いますので」
いやまあ、確かにあるかもだが……。
「そんな時、主様を休ませられないようでは名折れ。ですので用意しておきました」
その気遣いは嬉しいんだけど。
本当に。
ま、まあ。
善意でやってくれたんだし、野暮は言わないようにしよう。
別に仮眠室とか……宿直室みたいな。
そんな使い方したって良いんだしな。
そう思いながら二階部分をぐるりと見渡すと、俺の目に映ったのは、キッチン、トイレ、テーブル、椅子、等々……。
うん、本当に宿直室みたいだ。
そしてその中でも目に付いたのは、壁に着いた扉。
そう。
扉。
俺は本来の最上階に存在した部屋に入り、更にその部屋の中の階段を上がった。
と言うことはこの扉を開けた先にあるのは普通に考えれば、学校の建物の上部分、つまり屋上。
つまりこの部屋、建物から一か所だけぽこんと飛び出すような形で建ってるのか?
そう予想しつつその扉を開け、くぐる。
そこにあった光景は、予想通りだが予想外の光景。
俺が予想していたのはまっ平らなコンクリートの床……よくある学校の屋上のイメージまんまの光景。
だがそこにあったのは、土の地面に石畳がひいてあり、さらには地面には花が咲いている。
少し先にはこれもまた石で出来ている手すりが存在し……そこまで言って下を見ると、俺が予想していた学校の建物の上部分が見える。
どうやら屋上から一段……どころか五段か六段くらい高くなっている場所に作られている……バルコニーらしい。扉を抜けた先は。
衝撃を受けながら後ろ……入ってきた扉の方を見ると。
そこにあったのは、まるでお城の尖塔のような姿。
……俺は、よくある学校に屋上の入口みたいに一部が四角くぽこんと飛び出している、と思っていたが、実際には学校の屋上にお城の上の方にあるような塔が建っているみたいな感じだったらしい。
しかもその塔……思ったより高い。
ちょこんとあるだけかと思っていたら割としっかりした感じだ。
なんか円錐状の屋根に当たる部分に窓が付いているのも見えるし……この部屋? 二階があると思ったが、二階どころか三階もあるなこれ?
「はい、こちらにございます」
そうルシュが指し示す方を見ると、そこにあったのは塔の外側を囲むように作られた螺旋階段。
やはりさらに上があったらしい。
「上は四方の眺望が楽しめる部屋になっております。それとこのバルコニーはハイラたちに協力してもらい作り上げました。エルフたちが管理してくれることになっているので、いつ来ても美しく咲き誇った花をご覧いただけます」
なるほど。
結構な人数が俺の為に当初なかった作業に参加してくれたらしい。
ここまでされたら必要ないだろうとかもうそんなこと言えないな。
ルシュ。
「はい」
ありがとう。
「……もったいないお言葉です!」
ぶんぶんと激しくしっぽを振るルシュ。
ルシュだけじゃなく、協力してくれた皆にもお礼を言っておこう。
流石に全員に個別に……は、難しいので、全員あてには機会を見つけて言うとして。
主だったメンバーにはしっかり感謝を伝えておきたい。
そう考えつつ、校舎以外の学校設備も視察する。
運動場、体育館、プール、植物園、図書館、購買食堂……。
見て回ったがどこも問題は無かった。
建物はしっかり出来ている。
まあ別に心配もしていなかったが。
「恐縮です」
後はしっかり運営できるかどうかだが……これは正直やってみなければ分からない。
備えることは出来るものの、学校の運営経験なんてない以上、どうしても完璧な備えなんてのは出来ない。
いや普通ある方がおかしいんだけど。
まあそんなわけで始まる学校運営に備えつつ、ここでもう一つ街全体の人手を必要とする作業が発生する。
そう。
収穫だ。




