123.試着と人員
「素晴らしい……素晴らしいですわ代表様! 決まっていますわよ!」
「はい。とてもお似合いです主様」
……いや、まあ、嬉しいけど。
ちょっと恥ずかしい目にあってる。
クトネーにお願いしていた警察と消防用の制服。
それが出来たとクトネーが俺のところにやってきたんだが……その両手に抱えた見本用の制服だと思ったものはなんと俺用だった。
そのまま、クトネーにせっかく作ったのだから、とか、実際に着ているところを見て次以降の制服づくりのイメージを固めたい、とかまくしてられ。
急遽、演者俺一人のファッションショーを開くことに。
いや普通に恥ずかしい……。
でもクトネーのきらきらした瞳を見たら断れなかった……。
「本当に素晴らしいですわ! 次はこちらを!」
「では主様、再びこちらへ。主様専用の更衣室でお着換えを」
うん。
何でそんなものが?
さっきも思ったけど。
ここは警察署内に何故か作られた俺専用の部屋。
なんとこの部屋は一室だけではなく、俺専用の更衣室も併設されていた。
いや普通に要らないだろう専用の更衣室とか。
一階と二階両方に職員用の更衣室作ってるんだから、着替える必要があるにしても俺もそっちで……。
「いえ、主様がお着換えなさるのであれば専用の部屋が必要です」
「もちろん。常識ですわね」
常識なのか?
……まあもう用意されてる以上異議言っても無駄だしな。
ありがたく使わせてもらおう。
そういうわけで先ほども使った更衣室に再度入室。
今着ていた消防服を脱ぐ。
流石はクトネーと言うべきか……素晴らしい出来だった。
俺がリクエストした制服のうちの一つ、消防服。
見た目はオレンジ色で全身覆うタイプの作業服と言う感じ。
前世のそれと大体同じっぽいかもしれない。
しかし前世のほどちょっとダボついているような印象は無い。
結構シュッとしているスタイリッシュな感じ。
消防服と言うからには大事なのは耐火、耐熱性能。
前世では不燃布とかそういう燃えない布、燃えにくい素材で作られていたのだろうが、残念ながらうちの街にそんなものは無い。
だがその代わり、前世にないものがこっちにはある。
そう、魔法だ。
水魔法を使えるハイウンディーネたちに全面的に協力してもらい、糸に水の属性を練り込んでから布を織り上げた。
具体的にどうやったのかは俺じゃ理解できなかったが。
……創造神器で魔力感知できるとは言え素人だから……。
そうやって出来上がった布は、焚火に突っ込んでみても燃えず、焚火が自然に消えるまで置いておいても汚れるだけで燃えはしなかった。
そんな異世界式不燃布で織り上げたのがこの消防服。
燃えない上に、着るととてもひんやりする。
これならたとえ火元に近づいてもあまり熱を感じることなく消火活動できるだろう。
……というか、暑い時期にめちゃくちゃ便利だな、これ。
異世界の夏は前世ほど厳しくないけど。
後はさらに万全を期すためここに耐火用のアクセサリーもつけるつもりだ。
まあ消防服はこんな感じ。
そして頼んでいた制服はもう一つある。
警察服。
今から着替える方。
早速袖を通す。
こっちは青と白のシンプルな服装。
上からプロテクター……ではなく、鎧も着けられるようにとそうなっている。
まああって欲しくはないが、武力で相手を制圧する場面もあるかもだしな。
ちなみに鎧とかそういうのは申告制。
相談したときに、鎧なんて着ずに回避だけで戦う方がやりやすいといったものも居たし、盾や鎧できっちりガードした方が戦いやすいといったものも居たため。
別に統一する必要もないと考え、制服以外の武器防具等は個人の申告に任せることにした。
……ああ、申告されても武器は当然刃引きする。
そういう事態が訪れたとしても警察の役割はあくまで制圧だ。
そしてもちろん俺は武器も防具も装備しない。
武器は創造神器があれば十分すぎるほどだし、防具……鎧とか着慣れてない上に絶対重さで身動きとりにくいだろうし。
というかそもそもこの制服クトネーが勝手に作ってきたやつだから俺は申告とか全然してない。
まあそんな感じで着替え終わる。
さっきも思ったけど、さすがだなクトネーは。
消防服とか警察服とか、こういった制服は結構固めなイメージで、凄くしっかりしている分結構動きにくいイメージだったんだが……。
クトネーが作ったこれらの服はそんなこと全然ない。
思い切り腕を振っても足を振っても動きが阻害されている感じが全然しない。
これを着たまま思い切りスポーツだって出来そうだ。
そんなことを思いながら専用更衣室から出る。
「……素晴らしいっ! 素晴らしいですわっ! 流石私! 代表様の魅力をさらに引き出せています! 代表様も素晴らしい着こなしです! とても凛々しいですわ! 代表様に捕まることが出来るのであれば罪を犯す! という住民も出るでしょう!」
いや本末転倒じゃないかそれ?
「クトネーさんのおっしゃる通りとても素晴らしいです。これならばどんな罪人であろうとその威光にひれ伏し、自ら改心すること間違いないでしょう」
流石に言い過ぎじゃないか?
いやまあ嬉しい。
すっごく肯定してくれるのは正直ちょっと背筋がぞわぞわしてくるくらいうれしいが……恥ずかしさも勝つ。
まあとにかく……。
特に制服に問題は無いということか?
一応目的としては俺が実際に着てみて問題が無いかどうか確かめる、というものだったため二人にそう聞く。
「もちろんございませんわ! 私共が丹精込めて作り上げた服ですもの! 問題などそんなもの最初からございません!」
それなら俺に着せる必要なかったよね?
「……ですが、万が一と言うこともあります! 代表様にご助力いただいたおかげでその万が一が潰せましたわ!」
……まあ万が一に備えるのは大事なことだしな。
「こちらから見ても問題は全くありませんでした。流石は主様です」
そこは作ったクトネーを称えるところじゃないのか?
「いえ! 着こなした代表様を称えるべきですわ!」
何でだ。
その後。
再び褒めフェーズに入った二人を何とか落ち着かせ、元の服に着替える。
二人には残念そうにされたがこれ以上はさすがにだ。
よし、それじゃあクトネー。
正確な数は決まってないが……決まったらこの制服の量産頼めるか?
「ええ、もちろんですわ、代表様。どれだけの数だろうと全て完璧に仕上げてみせますわ」
……頼もしい。
頼んでクトネーが工房に戻るのを見送る。
さて……完成した警察署の見学も終わったし、制服も自分の身出来を確認した。
物は問題ない。後は人だ。
立派な建物、立派な制服があってもそれを使う人がいないんじゃ意味がない。
消防署や警察署を建てたからには、そこに所属する人員も選抜しなければならない。
だけど俺は正直こういうのには疎い。
消防隊員の方には水魔法を使えるハイウンディーネに入って欲しいと漠然と思ってるくらい。
警察の方に至っては腕が立つ方がいいだろうなあ、と思っているだけで誰が腕が立つかとかよく分かってない。
まあ多分シロが一番強いんじゃないか? とは思ってる。
なので餅は餅屋と言うことで……。
「わたし~? わかった~?」
「……分かりました。代表様がそうお望みであれば」
来てもらったのはフィーネとハイラ。
彼女たち二人にトップをやってもらおうかと思っている。
理由は……まあそんな深い理由なんてないんだけど。
フィーネの方は単純にハイウンディーネに消防隊員に入ってもらいたい都合上、フィーネトップの方がいいかな? と考えたから。
後は、前にフィーネが言っていた、やろうと思えば街全体の火を消せるかもしれない、という言。
それにいざという時は頼らせてもらいたいなあと思って。
まあ……フィーネは……なんというか、ふわふわしてるけど。
やる時はやるし問題ないだろう。
ダメだったらその時はその時だ。
警察の方はハイラ。
これは正直自分でもいい人選なんじゃないか? と思ってる。
ハイエルフたちはエンジェルたちと協力して見張り塔を使い街の警備を行っている。
それを統括しているのがハイラ。
街の警備を行っている者たちも警察に入ってもらってパトロール要因になってもらおうと考えていたし、それならトップはハイラにするのが一番いいだろう。
と言うことで頼む。
「はい」
「は~い」
よし。
本格稼働はまだ先だが形は出来た。
人もそろうその日を楽しみにしておこう。
「……ところで代表様。ルシュとクトネーさんにだけ制服姿をお見せになられたとか……? 私も常と違う代表様の姿見てみたいです」
「え!? 私も! 私も見たい~!」
えっ……い、いやっ……あれはっ……。
……いっ……いつか機会があったらで……。




