121.相談と警察署
そういうわけで早速警察署を建てる……前に。
「ふむ、犯罪を取り締まる……? なるほど、衛兵の詰所のようなものでしょうか……?」
「そこに牢もついている造りでしょうか? ……あるにはあるが本格的な牢はまた別? なるほど」
「じゃが、一時的なものであれ牢が必要ならば、頑丈な鉄格子を用意しなければじゃな」
「私たちが付けられたみたいに首輪用意する? それと私たちが捕まってたとこで良いなら教えられるよー」
「……他にもいくつかの部署に分かれて落とし物や市民の相談事にも対応する? ならば、こちらにも執務室がいくつも必要になりますね」
まずは建てる前に構想を話して皆に意見を聞く。
ふむふむ……なるほど。
消防署は異世界にはたぶんないだろうし、完全に俺の知識だけで作ったが。
警察署……というか犯罪を取り締まる側の拠点なら異世界にも当然あるだろう、と、そう考えてまずは意見を聞くことにした。
「……申し訳ありません、主様。お力になりたいのはやまやまなのですが。これ以上は……その。知識がなく」
「申し訳ありません、代表様。私も……森の中で過ごしていたので」
ルシュとハイラがそう言ってくる。
多少は知識としてあるものの、元居た村と言うか集落の規模的にこういう治安組織の詰所なんて無かったからよく分からない、と。
まあそれはしょうがない。
ないところにはないだろう。
「何度か人間の街に行ったことはありますので二人よりは分かりますが……似たり寄ったりですぞ」
イアンもそう言ってくる。
……残り二人は……。
「そりゃあ捕まってたからねー。それなりにはわかるよ」
「はい。ですが……代表様の求めるモノかどうかは疑問が残るかと」
残り二人。
シエルとリネイアはそう言ってくれる。
ふむ?
話を聞いてみる。
「代表様が仰っているモノに一番近いのはルシュさんがおっしゃられたように衛兵の詰所が一番近いと思いますが、そこには一時的な牢などありませんし、民衆が気軽に駆け込む場所でもありません」
そうなのか?
話を聞くと。
そう言った詰め所は上からの命令で出動するのがほとんどであり、たとえ民衆が駆け込んでもここを空けるわけにはいかない、と、出動してくれないと。
牢もそれこそ、軽い罪で合っても本格的な場所へ移送する為、詰め所自体にはついていないと。
というか牢が空いてなかったら、軽犯罪でもその場で処断されることもあるらしく……厳しくないか?
「少なくとも私が知るところではそのようなモノでしたので……」
「だから衛兵なんてほぼ恐怖の対象みたいなものだよ民衆にとっては」
……なるほど。
まあ、厳しい処罰、恐れられる衛兵もそれはそれで犯罪の抑止にはつながると思う。
別に否定はしないが……でもうちの街では警察組織には恐怖よりも頼もしさ、親しみやすさを感じてもらいたい。
参考にしようと聞いておいてなんだが……住人が気兼ねなく立ち入れるような組織にしたい。
「よろしいのではないでしょうか。それが代表様のお考えであれば」
「「「「異議無し」」」」
俺がそうこぼすとリネイアが間髪入れずにそう言ってきて……さらにすかさず他の四人が同意してきた。
いや、嬉しい。
正直嬉しいよ? でも俺が間違ったりとか街に不利益なこととかしちゃったら……。
「「「「「大丈夫です、そんなことをするはずがないので」」」」」
いや……まあ、うん。
ありがとう。
ちょっと頬を赤くしながらも早速警察署の建設に入る。
こっちもマナコンクリで建てる三階建ての予定だ。
いや、地下に留置場作るから四階建てか? まあいい。
まず俺は留置場の入口を決め……そこから早速地下を掘り始める。
掘るだけなら俺一人でもできるが、鉄格子やらなんやらも準備する為イアンたちにも手伝ってもらう。
「お任せください、ドラゴンすら破れぬ牢を作りましょうぞ」
いや留置場だからそこまでの強度はいらないが……。
まあやる気を出してるようだしいいか。
……というかこの異世界ドラゴンいるんだな……。
地上の建築も同時に進めるよう頼んで、俺はつるはしを振り下ろす。
ザクッザクッザクッザクッ……!
振り上げ、振り下ろす。
振り上げ、振り下ろす。
創造神器のつるはしは硬い土もまるで豆腐のように削り、しかも一振りで軽く一メートル範囲を掘れる。
俺だけ整地できるゲームをやっているみたいな気分。
毎回思うが凄く楽しい。
「いやぁ、何度見ても流石ですな」
イアンもそう言ってくれる。
他のハイドワーフたちも地下を広げる為につるはしを振っているが、俺の方が圧倒的に速いからな。
さて、地下を掘り拡げるのは大事なことだが、もっと大事なこともある。
それは……。
ブンッ!
ぶわぁっ!
創造神器のうちわを振ること。
大体十分に一回くらい? それくらいの感覚でうちわを振っていく。
理由は、念のための空気確保。
一応、入口は開けっ放しだし、そこから空気は入って来るが念には念を入れている。
そしてなぜうちわかと言うと……この創造神器のうちわ、おそらく空気を生み出しているからだ。
結構前。
俺はふとした瞬間に……創造神器のうちわ、風を起こせるならもしかしたら水中で使えば水流を生み出せるのでは? と思いついた。
そして早速確かめてみたんだが、結果として水流は起こせなかった。
だがその代わり……うちわからとんでもない量の気泡を生み出した。
あの時は驚いて俺の口からも気泡が出たな。
その後、再び実験をしてみたところ、この創造神器のうちわ。
ただ風を起こしているのではなく、大量の空気を生み出してそれを押し込んでいるのだと判明したのだ。
だからたとえ空気が無いような状況でも、うちわを振っている限り窒息することは無くなるわけだ。
……いやそんな状況になりたくないが。
まあそんな感じで。
空気を生み出すうちわだと知ってからはこういう地下作業とか鉱山とかで重宝しているわけだ。
というわけで、つるはしとうちわを交互に振りながら地下拡張。
こんなに広げる意味あるか? と、ちょっと思ったが。
人口が増えれば、考えたくないがここのお世話になる者も増えるだろうし、それに種族柄大きな者たち用の牢も作ることを考えるとある程度広さはあった方がいいだろう。
それにまだまだ土地は余ってるしな。
足りなくなるよりは持て余した方がいいだろう。
結局はそう考えてガンガン拡張した。
そうして十分なスペースを確保し、換気用の小穴も開けて次の工程。
「お任せを。拡張している間に他のハイドワーフたちに作らせておりました」
イアンがそう言い運び込ませたのは見るからに頑丈そうな銀色の棒。
鉄格子の材料だ。
……これ鉄じゃなくてミスリルじゃないか?
「そうですぞ。やはり頑丈さを求めるならこちらの方が良いかと思いましたので」
そう言ってくるイアン。
まあ確かに今のうちの鉱物事情ならこうなるのか?
にしても鉄格子ならぬミスリル格子とは。
ミスリルは武器とか道具に使う物だと思ってたからちょっと驚いた。
驚きはしたものの、ミスリルの産出量的には全然問題ない。
さっそくミスリル格子を設置していく。
まずは掘った時に出た土で大雑把に部屋の形を作り、ミスリル格子を設置する場所以外は全て創造神器のハンマーで固める。
創造神器のハンマーで土を固める際、硬さは俺がどれだけ硬くしようと考えているかで決まるらしく……かつて俺が本気で固めた土は同じ創造神器のつるはしでなければ破壊出来なかった。
もちろんここは留置場なので本気で固める。
ドラゴン……にはもしかしたら破壊されるかもしれないが、大抵の者には破壊出来ないだろう。
そうやって周囲を固めた後、開けた一か所にミスリル格子を設置。
まずは漢字の「井」のような形になるように土台を設置し……もちろんハンマーでしっかり打ち込んでおく……その土台にミスリル棒を設置していく。
小柄な種族でも抜け出せないよう間隔に気をつけながら。
これで牢第一号完成だ。
ちなみに俺は全然頭から抜けていたが、イアンたちはしっかり考えてくれていたらしく。
ちゃんと入口用のミスリル扉も用意してくれていた。
ミスリル格子全体の強度が落ちないようしっかり考えて作ってくれたらしい。
とてもありがとう。
一回完成させたら後は簡単だ。
それぞれ牢自体の大きさや、ミスリル格子の間隔に気をつけながら量産していくだけ。
俺も創造神器をふんだんに使っているし、イアンたちも全面的に手伝ってくれている。
留置場はすぐに出来上がった。
「いやあ……出来上がってみると牢だというのに壮観ですな」
ほんとにな。
出来上がった留置場は、天井から吊り下げられた光石の光がミスリル格子に反射して……ギラギラしている。
牢だというのに結構高級感が出ているような気さえする。
……ここで寝るの大変だろうなあ……いやそれが罰になるか?
そんなことを考えながら、留置場を完成させた達成感を胸に地上に上がる。
地上部分の建設もこのまま手伝おうと思って。
そして地上に上がると……そこは立派なミスリル格子に囲まれたコンクリ製の部屋。
え? もしかして地上部分もう出来たの?




