120.消防署完成
いや、弁明させてくれ。
火事が起きたらウンディーネに急行してもらって火を消してもらう。
そのアイデアが出ていたのか出ていなかったのかで言うなら……正直出ていなかった。
前世での消火のイメージが先行して、ウンディーネたちに魔法で火を消してもらうという発想が出なかった。
だけど……うん、まあ、もしかしたら。
もしかしたらウンディーネたちが居ない状況で火事が起こるかもしれないだろ?
例えば全員街の外に出かけてるタイミングでの火事とか。
……いやそんなタイミングまずなくないか?
例えば、火事が起きまくってウンディーネたちの手が回らなくなったときとか。
……いやそんな状況になったら俺は間違いなく街を捨てて全員避難させるな……。
例えば、突然何かの理由で魔法が使えなくなるとか。
……これはあるかもな……。
まあとにかく。
ウンディーネに頼るだけじゃない。
他の種族でも消火できるように……色んな状況に対応できるように消防署を建てるんだ。
「おぉ~! さすがあるじ~! いろいろ考えてるんだね~!」
ああ、まあ……まあな!
フィーネに消火はウンディーネが担えばいいんじゃないか? と聞かれ、咄嗟に頭を回して出た俺の早口での言い訳に顔を輝かせて納得してくれたフィーネ。
いや、うん、何で頭から抜けてたんだろ……。
これまでウンディーネの水魔法に何度も何度もお世話になってきたのにな……。
……まあしょうがない。
こういうことは誰にだってある。
切り替えていこう。
とりあえず、さっき咄嗟に言った通り……他の種族用の消火手段は用意しておきたい。
ウンディーネに頼り切るんじゃなくな。
そういうわけで消防署の建設は止めない。
これからも作っていく。
だが、消防隊員には……ウンディーネを入れたい。と、今考えた。
理想としては……前世みたいに街の色んなところに消防署を作って、そこに最低一人ずつウンディーネを配置したい。
やはり水魔法は有用だ。
それこそ例えば……俺の屋敷が丸ごと燃えているところに、とても大きい水球を空中から落として一気に消火……なんて芸当も可能だろう。
「ん~? ハイウンディーネならたぶんできるんじゃないかなぁ~?」
フィーネにもたぶん出来るとお墨付きをもらった。
ちなみにフィーネならどれくらいの規模の火事を魔法消火できる?
話の流れで気になったので、フィーネにそう質問を投げてみた。
「え~? あるじが言ったみたいに上から水を落としてってことでしょ~? うーんとね~……」
そう言いながら顎に指をあて少し考え込むフィーネ。
ハイウンディーネなら俺の屋敷の規模丸ごと消火行けるって言ってたし、クイーンであるフィーネならそれ以上……屋敷の二軒や三軒、いやあるいは区画丸ごと行けたり……?
そうちょっとドキドキしながら返答を待っていると。
「うん~。今のこの街なら丸ごと行けるかも~」
全然予想の上を行く答えが返ってきた。
え? 街丸ごと?
「え? うん、出来るよ~」
そっ……か、街丸ごとか……。
ちょっと予想以上すぎて飲み込み切れてない。
今の街丸ごとって……結構頑張って拡張したからかなり広いんだが? 今のレースピア。
これその気になればフィーネは意図的に街に水害起こせるってことじゃないか?
いや、あくまで火を消せるレベルの水量だからそこまでにはならないか……いや畑とか鍛冶場とか大ダメージだろ。
……フィーネが味方でよかった。
「どうしたの~あるじ~? そんな優しい目して~?」
いや、何でもない。
ちょっと幸運をかみしめてただけだ。
街全体が火事になるなんてもちろん絶対にあって欲しくないことだが……もしそうなったら消火頼む。
「えへへ、任せて~!」
と、そんなわけで。
ちょっと変更を加えつつも消防署の建設を進めていく。
レースピア建設チームは言うまでもなく超優秀なので大して時間をかけることなく消防署は完成。
見た目はコンクリで出来た四角い建物。
大きさはかなり大きい。
学校の体育館か? ってくらい。
建材は見た目通りのマナコンクリ。
消防署が燃えるとかシャレにならないので、しっかり耐火性能を考えて作った。
中は二階建て。
とはいっても一階と比べたら二階の面積は半分から三分の一程度で、オマケ程度だが。
いちおう、更衣室とか会議室とか、そういったものを二階に備え付けている。
そしてメインは一階。
壁がほとんどなくだだっ広い空間になっているそこには今、いくつかの馬車が並んでいる。
これが消防車……いや消防馬車。
火事が起きた時には、荷台部分をタンク風に改造したこの馬車に水をたっぷり積んで出動する。
さらに横にはバールなんかを取り付けて合って、いざという時周囲を壊して延焼を防ぐこともできる。
この馬車が出動するために、通常の入口の他に、出入り口はもう二つ。
いや一つは出入口っていうかは怪しいけど。
一つは当然消防馬車用の出入り口。
馬車が数台まとめてでも詰まることなく出ていけるように、めちゃくちゃ大きな出入り口になっている。
と言うか四角い建物の一階部分の一面が丸ごと出入り口になっていると言った方がいいかもしれない。
そんな大きい出入り口に普通のドアとかつけられるわけもなく。
このサイズのドア付けたら開けるのにとんでもない怪力必要になるし。
というわけで取り付けたのはシャッター。
ハイドワーフたちに作ってもらった。
結構無茶を言ったと思うがさすがはイアンたち。
俺のうろ覚えの説明から、しっかり巻き取って開くタイプのシャッターを作ってくれた。
しっかり強度もある。
おまけにこっちもしっかり頑丈な、巻き取り用チェーンまで作ってくれて……どんどん鍛冶の腕が上がってないか?
受け渡しの際にそう聞いてみたところ。
「ははは! 代表殿が必要とするのであればどこまでも精進いたしますぞ!」
イアンはそう言って大きく笑っていた。
とてもありがたいし頼りになる。
ちなみに鍛冶妖精のヴィーラントはシャッターとチェーンの出来栄えに再び気絶したらしい。
そんなわけで一つはシャッター付きの大きい出入り口。
もう一つは、うん、水路。
消防署の隣には、フィーネに引いてきてもらった水源から作った池がある。
実はこの池を作る際、池の深い位置から消防署の中まで続く地下水路を作った。
イメージとしては、消防署の中に井戸があって、そこと池がつながっている……みたいな感じか。
火事が起きたらここから水を補充して出動する感じだな。
ここを一応出入口って言ったのは、消防隊員にウンディーネを加えた場合大体ここから出入りすることになるだろうから。
陸上を移動するのも出来なくはないが、水中移動の方が快適だろうし。
それに、水路内の点検とかもお願いするしな。
消防署はだいたいこんな感じだ。
自分で言うのもなんだが初めてにしては結構上手く出来ていると思う。
いや完全に皆のおかげだが。
とても立派な、しっかりとした建物を作ってくれたルシュ率いる建築チーム。
シャッターやチェーンなど俺の無茶ぶりにも対応してくれたイアン率いるハイドワーフたち。
そして最も大事な水源を引いてきてくれたフィーネ。
皆が居なければここまで立派なものは出来なかった。
あらためて感謝。
……さて、消防署は建った。
が。
まだまだ作りたい公共施設はある。
それに消防署を稼働させるためにも作っておきたいものはまだあるし……書類なんかも作っておいた方がいいってリネイアにも言われたし。
実際の業務のことやらなんやらも詰める必要あるしな……そう言ったもろもろを頼んでいる間に俺は次の公共施設を作りに行くことにする。
次に建てるのは……警察署だ。




