114.発覚と手伝い
「あぁ~……いえぇ……隠してたわけではなくぅ……”あれ? この人たち私のこと知りませんねぇ……じゃあうるさく言われないしチャンスですねぇ……”なんて思ったなんてことは一切なくぅ……」
別に問い詰めてもないのになんかボロボロこぼし出した。
スロールとターヴィーが目を見開きながら、トゥーナのことを人魚族の姫だと口に出した後。
暴露された? トゥーナは少し固まって、再起動したかと思うと、先述のような言い訳を延々とし始めた。
「だから……はいぃ。ほんと……聞かれなかったからであってぇ……追い出すのは止めてくださいぃ……」
軽く涙目になりながらそう言ってくるトゥーナ。
いや一度受け入れたんだからめったなことでは追い出さないけど……、とりあえず、話は聞かせてもらっていいか?
「はいぃ……」
と、そういうわけで、ちょっといろいろトゥーナに聴取する。
聞くことが出来たことはこうだ。
どうもトゥーナが人魚族の姫であることは本当らしい。
そもそも人魚族にそういう王族とか国とかあるのかと聞いたらある、と断言された。
まあ人間のそれとはいろいろ違うらしいが……。
まあそこは今は割愛。
まあとにかく人魚族には王族が存在し、トゥーナはそこに属している。
とはいっても、現在の女王の子、三姉妹の一番下らしいが。
いわゆる第三王女というやつ。
だから全然これっぽっちも凄くなくてほぼ普通の人魚族と変わらないようなもの、とトゥーナは熱弁していたが……いや、だいぶ変わるだろう。
そしてまあトゥーナは姫なんて立場を持ちながら、ちょっと型破……我が道を行……まあ自由奔放なようで。
家出してこの港にやって来たらしい。
いやまあ、いずれ今の人魚族の里にも訪れるかもしれない人間たちからの排斥に備え、新天地を探す、という目的もあったと本人は語っているが。
でも報告することもなく居座って新天地ライフ満喫してたしなあ……。
「いえぇ、違いますぅ。これは……そうぅ。実際に住んでみないと分からないことというものはあるでしょうぅ? ですから私が人身御供として体感しているんですぅ。ある程度体感してから帰るつもりでしたぁ」
うーん……? まあ、確かに実際に住んでみないと分からないことというのはあるが……。
「でしょうぅ? ですから隠してたとか怠慢とかそう言うのでは全然ないんですよぉ……!」
トゥーナは凄く必死だ。
うーん、でも家族が心配しているんじゃないか? もしかしたらこっちが誘拐したとかそんな誤解が……
「生まれません大丈夫ですぅ! あの人たちは私の心配なんてしない冷血魚ですからぁ! それにその時は私がどうにかしますぅ! だから追い出さないでくださいぃ! もっともっといっぱいお魚さんとか獲ってきますからぁ~~!」
いやだから追い出す気は別にないが……。
う~ん、まあ本人がこう言ってるんだからいいか……?
……でもああは言ってるが、やっぱり心配はしてるだろう。
うん、一つ条件を付けるか。
「条件、ですかぁ?」
ああ。
一度帰って家族を安心させてあげることだ。
「えぇ……えぇぇ~~……」
なんかすっごく嫌そう。
……もしかして仲悪いのか? 家族と?
「いえぇ……そんなことは……ないのですがぁ……。……要するに今どこで何をしているのかを知らせればいいのですよねぇ……?」
うん? ああ、まあそうか?
「分かりましたぁ。では家族には手泡を送ることにしますぅ。これでばっちりですよねぇ?」
手泡?
「あぁ、すみませぇん。地上で言う手紙のことですぅ」
うーん、正直直接顔見せてあげた方がって言いたいが……いやでも他所の家庭に口出すのはな……まあ、今はそれでよしとするか……。
「よしっ!!」
よし?
「あっ……いえぇ、こほんっ。お気になさらずぅ、準備が出来たら送っておきますぅ……」
ああ、分かっ……ん? そもそもどうやって送るんだ? 手泡とやら?
疑問に思い、トゥーナに聞いてみる。
「ああ、泡に声を込めて、えいやっ! と送り出すんですぅ」
すると帰ってきたのはそんな返答。
さすが異世界……なのか?
泡に声をって……そんなことできるのか、というかそれで届くのか?
「はいぃ、人魚族なのでぇ」
そうなのか……人魚族って凄いな……。
トゥーナが街に来てから今までに見たこともないほどきりっとした顔で断言されてはこっちも納得せざるを得ない。
まあ、じゃあこの話はここまでにして……。
そう言って俺はトゥーナと話している間、水揚げの手伝いをしてもらっていたスロールとターヴィーを呼び戻す。
「話はまとまられたか」
「……。」
ああ、大丈夫だ。
ちょっと込み合っちゃって、手伝いしてもらって悪かったな。
「いえ、構いませぬ。水揚げもここで働き始めればやるであろう作業ゆえ、いい予習になりました」
「……っ!」ぶんっ……ぶんっ……。
そうか。
そう言ってもらえると助かる。
……まあ、この様子を見れば聞く必要はないかもしれないが、問題はなかったか?
俺は、護衛をしながらもスロールとターヴィーの二人に目を配ってくれていたハイラに小声でそう聞く。
「……はい、全く。むしろとても良い働きぶりだったと思われます。他の作業員たちも、いつから本格的に来てくれるのか、と何回も聞いておりました」
ハイラも小声で返してくれる。
そうか、しっかり受け入れられてるようで何よりだ。
さて、それじゃあ……。
トゥーナ。
「はいぃ?」
この二人を連れて漁の手伝いに行ってほしい。
「この二人を連れてですかぁ~?」
ああ、アリゲイターとタートラーも漁の手伝いが出来るかどうか確かめたいんだ。
「むむぅ……分かりましたぁ」
「……ふむ。代表殿は我らにトゥーナ様についていけ、とそう仰られるのですな?」
ん? ああ、そうだけど……。
「……了解いたした。全力で臨ませていただく」
「……っ!」
……何だ? なんか二人ともやけに気合い入れているような……?
まあ疑問には思ったが、気合が入っているならいいか、ということで早速送り出す。
俺は例のごとく船に乗る許可が下りなかったので、港で見送ることになったので……。
いやぁ……凄いな。
聞いてはいたが……タートラーは水の中だと陸上とは比べ物にならない速度で動けると。
実際みると驚くな、あれだけのんびりしてたターヴィーが、船の周りを結構なスピードで周回してる。
これなら全く問題ないだろう。
結果を楽しみに待つことにする。
「今帰りましたぁ~」
「はぁっ……はぁっ……げほっ! 帰還……いたしました……っ!」
「……っ! ……っ!」ブルッ……ブルブルッ……!
問題あったか?
帰ってきたスロールとターヴィーは息も絶え絶えだった。
トゥーナは全然何事もなかった感じなのに。
何があったんだ?
「何も……ありませんでした……っ!」
「っ……!」ブンッ……ブンッ……!
何かあったやつだろそれは。
とりあえずスロールとターヴィーには息を整えてもらって……。
俺はトゥーナに聞く。
何があったんだ?
「? 何もありませんでしたよぉ……?」
トゥーナまで……じゃあ何であの二人あんなに息絶え絶えになってるんだ?
「私に着いてきたからだと思いますけどぉ……」
ふむ? それはどういう……?
「え? ……言ってませんでしたっけぇ?」
言ってないって……何を?
「私ぃ……これでも結構速いんですよぉ。海中なら私に並ぶ者なんていませんよぉ?」
それは結構じゃなくて一番というのでは?
「そうとも言いますねぇ」
……うん。
まあ理解できた。
そんな超早いトゥーナの追い込みに全力で付き合って……二人ともああなったってことか。
「はいぃ」
うーん、それなら漁を手伝ってもらうのは止めておくか……? かなりきつそうだし……。
「いえぇ、二人とも私ほどじゃなくてもかなり出来ますのでぇ、大丈夫かとぉ」
そう俺に言ってくるトゥーナ。
「……それに手伝いが増えるなら私も楽になりますしぃ……」
……ちょっと余計なことも聞こえたが、今のところ負担結構かけてるのは事実だからな。
聞き流す。
まあ本人たちにも聞いてみるか。
スロール、ターヴィー。
漁の手伝いはやれそうか?
「はぁ……無論」
「……無、論」
二人とも即答してきた。
その瞳はやる気満々に輝いている。
うん。
二人もこう言っているのなら追い込みも頼もう。
それじゃあ……これから港での仕事もろもろ、よろしく頼む。
住居もすぐに出来上がるから、引っ越したら早速。
「了解いたした。任されよ」
「任、せて、くれ……!」
頼もしい返事だ。
スロールとターヴィー、アリゲイターとタートラーの奮闘に期待しよう。




