113.港への移住と手伝い
「代表殿、此度は我らの為に感謝いたします」
「感、謝、いた、します」
ああ、全然かまわない。
受け入れることを決めた以上、これは当然のことだ。
そうかしこまらないでくれ。
俺はそう、目の前で礼をしている二人……アリゲイターのスロールとタートラーのターヴィーに声を掛ける。
商会の建設をニャジッタと一緒に視察して……視察の割にはニャジッタは結構トリップしまくってたけど……まあ視察して。
この調子で頑張ってくれとルシュに声を掛けて、俺は次に港にやってきていた。
理由は鰐人族と亀人族……アリゲイターとタートラーのため。
彼らにも必要とするものを作ってあげるためだな。
そういうわけで俺は港にやってきているわけだ。
にしても……。
本当に良かったのか? 別に街の方に住んでも良かったんじゃないか?
俺はそう、港の方に居住区を作って欲しいといった二人にそう尋ねる。
「ええ、構いません。我らは陸上でも生活できますが、やはり水に近い方が生活しやすいというもの」
そう、こちらを真っ直ぐ見ながら答えてくるアリゲイターのスロール。
申し訳ないけどちょっと怖い。
口はある程度覆われているとはいえ。
見た目が二足歩行のワニに近いしな……。
……別に街にも結構水路は通ってるし、ちょっと遠いけど川もあるだろ?
「ええ、はい。ですが、こちらでは相応に水仕事や力仕事があると聞き及びました」
うん? ……まあ確かに。漁や水揚げや倉庫作業なんかまさにそれだな……。
「それに我らは、水場での戦闘には自信がありますゆえ。それらの仕事に加え、この港の警護も担当出来ます。受け入れてくださった代表殿の厚意に報いることも出来ると自負しております」
なるほど……だからこちらを選んだと……。
「……。」ぶんっ…ぶんっ……!
自分もまさに同じ理由だと言わんばかりにタートラーのターヴィーもゆっくり首を振っている。
アリゲイターのスロールよりも大柄なその大きさも相まって、圧を感じるかとも思ったがそんなことはなかった。
タートラーは確かに大きいが、姿は二足歩行の亀って感じだし、アリゲイターみたいに牙が見えているわけでもない。
それに……なんというかすっごくのろ……いや、のんびりしているからな。
いざとなったら俺でも走って逃げられそうと感じる。
ちなみに、動作とかしゃべりが遅……のんびりしているのはターヴィーの個性かとも思ったが……種族みんなこんな感じらしい。
街に来る際も彼らに合わせる必要があったから結構大変だったとニャジッタも言っていた。
水の中ではそれなりに速く動けるため、何とかはなったと言っていたが……。
まあともかく。
分かった。
そういうことであればこっちに居住区を作らせてもらおう。
ハイラ、頼む。
「かしこまりました」
俺は後ろに控えていたハイラに言って、早速アリゲイターとタートラーたちのための居住区建設を始めてもらう。
一応最後に確認を取っておきたかった形だな。
さて、これでそう遠くないうちに居住区は完成する。
もう既に港の住居を作った経験はあるからな。
大柄なアリゲイターとタートラーに合わせる必要はあるとはいえ、そう時間はかからないだろう。
あとは……。
あー……スロールとターヴィーいいか?
「もちろん構いませぬ」
「もち、ろん……」
何も聞かずに肯定の返事を返してくる両者。
いやもっと疑いとか……。
「受け入れてくださった代表殿の何を疑うことがありましょうか。そうでなくとも、街やこの港の様子を見れば人となりはよく分かるというもの」
「そ、う……」
……そこまで言ってもらえるとなんだか嬉しい。
街も港も頑張って発展させてきたからな……。
……なんかハイラも口は出してこないけどうんうん、って頷いてる。
さて、話を戻して。
こほんっ! えぇとだな……別に二人を疑ってるわけじゃないんだが……実際にちゃんと仕事が出来るかどうか見たいんだ。
だから漁とか倉庫仕事とか体験してもらいたくてな。
「なるほど。当然のご懸念でしょう。先にも言った通り俺は構いません」
「お、れも」
二人とも一向にかまわない、と即答してくれた。
ありがたい。
それじゃ行こう。
ということでまずは倉庫。
今、丁度漁には出てもらっているところだからな。
まずはこっちを手伝ってもらう。
力仕事は結構できるって言っていたからお手並み拝見させてもらおう。
というわけで早速倉庫で荷運びをやってもらったんだが……いや、凄い。
「確かに……凄まじいですね。スロール殿は五人力。並みのハイコボルトの五倍の荷物を運んでいます」
ハイラの言う通り、俺の目の前では五人分の荷物を軽々と運ぶスロールの姿があった。
その様子は本当に軽々と言った感じで、無理をしている感じは全くない。
……ハイコボルトたちもかなり力があるはずなんだが……。
少なくとも俺と比べたら子供と大人くらい……いやそれ以上の膂力の差があるはず。
なのに……凄いな……。
俺は自分の……いろいろ体を動かすことも増えてそれなりには太くなった腕を見る。
むん! と力を入れて力こぶを作ってみる。
スロールと比べたら五分の一くらいの太さしかない。
……うん。
「代表様はお力以外の部分もはるかに優れているため気になされる必要はないかと」
ハイラがフォローしてくれる。
そ……そうだよな。
力だけがすべてじゃないし、このパワーがこれから港を助けてくれるんだしな。
ふぅ。
気持ちを切り替えてもう片方……ターヴィーの方を見る。
こっちはさらに凄い。
スロールよりもさらに多く箱を重ねて一気に運んでいる。
「そうですね、ターヴィー殿はスロール殿のさらに倍、十人力。他の皆も唖然としながら彼を見ておりますね。……しかし難点があるとすれば……」
……うん。
遅……のんびりだ。動きが。
どすっ……どすっ……どすっ……と、鈍い音がゆっくり響いている。
その表情を見れば彼なりに懸命にやっていることは分かる。
だけど……うん。
まあ、運び方は丁寧だし、一気に十人分運べるんだから、悪くはないだろう。
それに極力、輸送用馬車との距離を短くするとかそういう対策しても良いしな。
そのまま様子を見てみるが……二人とも全然力尽きる様子を見せない。
他のコボルトやエルフなどの作業員は休憩を取っているものの、二人は動き続けている。
力だけじゃなく体力も凄いな。
「ここに来るまでにも荷揚げや荷下ろしなどは手伝っていましたので」
「……。」コクッ……コクッ……。
ああ、ニャジットと一緒に来たんだもんな。
やけにスムーズに運ぶなと思ったら慣れていたからか。
まあ、こっちとしてはありがたいな。
さて、他にも試して欲しいことはあるし、そろそろ行くか。
作業員たちの、凄かったな……って感じの視線を背に次へ。
……スロールとターヴィーは分かるが何で俺にまで?
「代表様は存在しているだけで凄いので」
ハハハ、ハイラ流石に冗談が過ぎる……え? 冗談じゃないの?
さてそれじゃあその膂力と体力を見せてもらったことだし次。
大本命ともいえる漁の手伝い。
アリゲイターとタートラーは陸上でも問題なく動けるが、水中でも動けるのが強み。
ということは、人魚のトゥーナと同じように追い込みとか手伝えるかもしれない。
いやまあ、あのレベルでは無理かもしれないけど……。
まあそれでも人手が増えればさらに漁獲量は上がるはずだし、もしかしたら余裕が出来たトゥーナが甲殻類とか獲ってきてくれるかもしれない。
そんな感じでワクワクしながら漁から帰ってきた皆のもとへ。
早速トゥーナを二人に紹介し……。
「トゥ……トゥーナ様……? 人魚族の姫がなぜここに……?」
「……っ!?」ぶんっ……ぶんっ……!
はい? 姫?
……トゥーナが?




