111.商会と貨幣
創造神器の新形態の検証を終えた後。
俺の姿は猫人族……ケットシーたちのもとにあった。
住居や他に区画に建てるモノの確認のためだ。
そしてそこで俺は……。
「ありがたにゃ~……ありがたにゃ~……」
「神はいた……楽園はここにあったんだにゃ……」
「よっ! 代表サマ! 神々しすぎますにゃ~♪」
……崇められていた。
「わざわざご視察下さりありがとうございますにゃ~♪」
駆けつけるなり俺を崇める集団にしれっと加わっていたニャジットが、周囲を拝み囲んでいたケットシーたちを散らし、俺にそう声を掛けてくる。
ああ、まあ受け入れた側として当然のことだから……。
いきなり拝み囲われた動揺でちょっと口ごもるが、俺もそう返す。
にしても来た瞬間いきなり囲まれるなんてな……。
「あれほど神々しい後光を差されていたのでは当然なのでは?」
「そーそー、あたしらでも代表やっぱり神だったのかな? って思ったし」
こちらもしれっと俺を崇める集団に加わっていたルシュとシエルがそう言う。
護衛役として着いてきたはずだが……あまりに自然に加わるので突っ込むことも出来てなかった。
「まーまー、いーじゃん細かいことは」
細かくはないんだが……まあ、いいか。
先ほどルシュが口に出した後光。
それの正体は今現在も俺の肩に乗っている……。
ぷるぷる……ぴかーっ!
俺に鑢で削られた……磨かれた? ことによって輝き始めたムイだ。
少ししたら戻るかな? なんて俺の希望的観測を打ち砕き、まだまだ元気に光り輝いている。
ほんと……戻るんだろうな? これ?
ぷるぷるぷるぷるっ……カッ!
うわっ眩しっ!
顔の真横でいきなり強く輝いたムイに、目つぶしを食らう形になる俺。
ムイの方を目を細めて見てみるが、輝いているせいで、いつもみたいにその動きを見て意図をくみ取る、ということがやりづらい。
だけど、まあ、強く輝いているし……そのうち戻るよ! みたいなことを言ってるのか?
というかその光、ムイの意志で強めたりとかできるんだ……どうやってるの?
ぷるぷる……カッカカッカッ!
なんか点滅しだした。
ほんとどうやってるの?
……まあいいや、今は置いておこう。
とにかく。
俺はニャジットに声を掛ける。
えー……とりあえず確認だが、希望としては商会をやりたいってことで良いんだよな?
そう。
四種族の代表と顔合わせしたときに聞いておいたことだ。
この街で何がしたいか。
ニャジットの答えは……商会だった。
「はい~♪ その通りです~♪」
猫なで声で肯定してくるニャジット。
気のせいかごろごろと喉を鳴らす音が聞こえてくる気さえする。
ともかく、こちらに断る理由は無い。
ケットシー区画には住居と……商会本部を作ることにする。
カーンカーンッ……コーンッコーンッ……!
「木材もっと持ってきてくれ!」
「こっちにはマナコンクリを!」
「外観はしっかりと立派に仕上げるように。そして内部も手を抜かず、主様の御期待に応えるように」
「「「はい!!!」」」
ルシュが建築チームを従えて早速商会本部の建設に入っている。
その規模はかなり大きい。
今回、街にやってきたケットシーたちは三十名ほどだが……それこそ数百人単位で働けそうな規模だ。
これは今後に備えてだな。
例えばケットシーたちがさらに増えたり……あるいは他の街の住人が商会に入ったりで拡大していくだろうから初めから大きくした。
「それにしても……よろしかったのでしょうか? こんな簡単に許可を出して……」
俺にそう問いかけてきたのはニャジット。
建築されつつある商会の規模を見て、目を輝かせて恍惚に浸っていたようだが……いつの間にか元に戻って近寄ってきていた。
そして問いに対する答えだが……。
もちろんよろしい。
簡単に出したわけでもないしな。
俺はそう言う。
そもそも商会……というか、貨幣制度の導入は前々から考えていたことだ。
今現在、レースピアの街は配給制で回っている。
作物やらなにやら……それらは俺、代表が一括で管理し、必要に応じて住民それぞれに配給する。
住人が少ない内はこれで全然良いが……この方法だと住人が増えれば増えるほど俺側の負担が跳ね上がっていく。
こういうことを任せてるリネイアやシエルたち、デモンズやエンジェルたちは優秀だが、流石に限界が来るだろう。
なのでその内、貨幣制度は導入しようと思っていた。
導入に当たっていろいろと問題点はあるが……こちらが管理することも大きく減るし、何よりそれぞれで自由に売り買いしている方が活気があっていいと思う。
それゆえにニャジッタの申し出は正直渡りに船だった。
簡単に許可を出した、なんて印象を持たれたのはそのためだな。
「にゃるほど……! そうだったのですね!」
「いやーよかったー、この先は楽が出来そうで」
ルシュが建築の指揮に行ったため、一人で俺の護衛を務めることになったシエルもそう言っている。
シエルはなんだかんだで配給制もままでも結構持たせると思うが……。
「やめてやめてーそんなのもう地獄確定じゃん、絶対ヤダー」
そうなった未来を想像したのか、うへえって感じで顔をしかめるシエル。
ムイが俺の肩からシエルの方に飛び移り、ぽよぽよと跳ねて慰めている。
……善意からなのは分かるが。シエルめっちゃ眩しそう。
ま、まあ……ともかく。
最初に聞いたときにも言ったが……貨幣の単位はこっち側で決めさせてもらうがそれでいいんだよな?
「はい! もちろんかまいません!」
俺はこれも再度ニャジットに確認を取っておく。
商会を作りたいと聞き、貨幣制度を導入しようと決めた時、悩んだのがこれ。
貨幣の単位。
前に他の住人からも聞いたのだが、この世界の貨幣は国ごとに違うが、大体、金貨、銀貨、銅貨らしい。
それぞれ銅貨百枚で銀貨、銀貨百枚で金貨……みたいな感じだ。
ファンタジーでよくある感じ。
うちの街も金、銀、銅は産出しているため、この貨幣に倣うことは出来る、が。
流石にかさばるし重い。
硬貨も作るが、やっぱりお札が欲しい。
と、そんな風に考え。
まあお札作るんならやっぱり円だよな。
ということで貨幣の単位は円にした。
レースピア円だ。
ニャジット……これからの商会長の認可も得たことだし。
作るか! お札!
「え!? 今から作るんですにゃ!?」
……こういうのは思い立ったが吉日だから!
そういうわけでお札を作っていく。
さて、早速だがお札に必要なのは偽札対策だ。
硬貨でも同じだが、偽札が横行したら紙幣はとたんに紙くずになる。
せっかく紙幣を導入するのにそんな結末になるのは避けたい、避けたすぎる。
なので、複製が出来ないようそこらの対策は万全にする。したい。
とはいっても、前世の様に複製が出来ないほど精巧に作る……なんてのは今のレースピアでは不可能。
ならばどうするか……、一応考えてある。
「ふむ? 紙に契約魔法をかけて紙幣に?」
協力してもらうのはリネイア、と、デモンズの皆。
そう、俺の考えとは、紙幣に契約魔法を刻んで複製できないようにしてしまえばいいのではないか? というものだ。
「ふむ……可能か不可能かで言えば可能でしょう。ですがそれなりにお時間は頂くことになるかと……」
まあ流通初期はな、どうしても数が必要になるからな……。
もちろんゆっくりで構わない。
だけど試作が出来たら一応見せて欲しい。
「はい。……出来ました。」
早くない!?!?
俺が声を掛けた数秒後に出来たと言ってきたリネイア。
俺は度肝を抜かれる。
驚きつつ、目を向けるとリネイアが持っているその紙幣用の紙には、中央に魔方陣が刻まれている。
これが複製不可の契約魔方陣っていうことなのか?
「はい。こちらを例えばこの光石と契約を結ばせておくと」
そう言ってリネイアが光石に紙幣を触れさせると。
ぼやぁ……と、光石はぼんやりと青く光った。
「このように特定色に光ります。こうしておけば判別が容易でしょう」
いやー……こんなあっさり。
流石だな。
「いやほんと流石リネイアー。紙幣作り頑張ってねー」
護衛ということで一緒に着いてきていたリネイアを褒め……褒めてるか? 一応褒めてるか。
「ありがとうございます。代表様。そしてシエル。心配はいりません」
「……んえ?」
「契約魔法を刻むのこそ私たちがやりますが……それ以外にも髪を裁断したり、あるいは何かを書いたり……そういうことは出来ます。あなたにも仕事はたくさんありますよ」
「……やだーーーーーーーっ!」
あー……まあ、うん。
頑張れ。




