110.検証の続きと発光
ぷるぷる……っ!
出来るらしい。
俺が、空中に水路を作るとかそんなことまで出来るのか? と、問いかけた際のムイの答え、というか震え。
当然出来ますよ。ふぅ……やれやれ。みたいな感じで横に震えている。
何でちょっとハードボイルド? 風なんだ?
……気分? あそう。
まあともかく。
ムイのおかげで、新形態の水泳板と新能力の水質強化を試すことが出来るようになった。
……正直水質の強化とかは俺が試してみてもよく分からないような気もするが。
まあともかくやってみよう。
というわけでまずは早速その水質強化から。
俺の前にある空中水路に対し創造神器を向け……強く念じる。
水質強化!
なんとなく、創造神器が空中水路に働きかけたような感覚。
土壌強化を掛けた時なんかと同じ感覚。
今まで通りならこれでしっかり強化がかかっているはずだが……。
やはりぱっと見は分からない。
……さっきよりも水が透き通ってキラキラしているか? 空中に浮いているから変わってても分かりづらいな……。
水路に手を突っ込んで、触り心地を確認してみる。
先ほど水質強化を掛ける前にも、あらかじめ触り心地を確かめておいたが……その時と比べて……う~ん? 確かになんだかさっきよりもさらっとしているような……?
……うん。
予想通りというべきかやっぱり俺にはよく分からなかった。
まあこれはその内フィーネとか……後はトゥーナとかに感想を聞けばいいか。
多分港周辺にはこの水質強化使うと思うし。
さて、そうしたらもう一個の方、新形態の水泳板行こう。
そう決めた俺は、創造神器を水泳板形態に変化させる。
その姿は……。
……ビート板?
そう、その姿はまさに俺のよく知るビート板だった。
俺の胴体より少し小さい大きさ、半円と正方形が合わさった形……アーチ形って言えばいいのか? そして色は涼しげな青。
まさに俺の想像通りのそれ。
試しに水路に少し押しつけてみれば、かなりの力で浮こうとした。
うん。
やっぱりビート板だなこれ!
水泳板を手に持ちながら俺は考える。
ふむ……見た目ビート板だし名前水泳板だし……まあ泳ぐときに使うんだろうけど。
でも俺普通に泳げるしなあ……いや、でも待て。
これまでのことから考えて創造神器がただ泳ぎを補助するだけって有り得るか?
……いや無いだろう、何かしら特殊性があるはず。
俺は考えを巡らせた結果、そういう結論に至り実際に水泳板を使ってみることにする。
先ほど触ってみた時に分かったが、この水路の水はかなり温かい。
温水プールみたいな感じだった。
水を用意してくれたムイの気遣いだろう。
というわけで早速上だけ脱いで水の中へ。
……水着も欲しいな、海も見つかったことだし。
その内クトネーに相談しよう。
ざぶんっ! そんな音を立てて俺の身体が水の中へ。
そのまま水泳板を使って空中水路を泳ごうとしたら……。
ギュンッ!!
っ!?
急にとてつもなく加速。
俺は驚くが、水泳板から手が離れることは無くそのままスムーズに泳ぎ続け……気付けば空中水路の中を五周ほどしていた。
驚きから立ち返った俺は、一旦外に出ようとする。
と。
水泳板は少しずつその速度を落とし、俺が入った丁度その場所からゆっくりと外に出た。
俺の身体もしっかりついていき、水の外へ。
はぁ……びっくりした。
急な出来事に早鐘を打っている心臓を落ち着かせるために深呼吸。
驚きはしたもののパニックにはなってない。
出ようと思ったら、水泳板が出してくれるみたいだし……このまま検証を続けよう。
そして、十分に落ち着いてから再び水の中へ。
そうやって検証した結果分かったこと。
まず一つ。
この水泳板を持っているとき、俺は水中をかなりの速さで泳げる。
何といえばいいか……俺が泳ごうと思うと、その泳ごうと思った場所を水泳板がなぞるように高速で移動する。
この時俺の身体もそれに着いていくように移動する。
でも引っ張られてる感じじゃなく、自分自身もしっかり泳いでいるような……そんな感覚だ。
速く泳ぐのだから、その分の圧が襲ってくるかと思ったがそんなことは全くない。
まるで水の中を流れているだけのような快適な感覚だった。
ちなみに速度だが、ほんとかなり速い。
これも感覚だが……時速百キロとか出てるんじゃないか?
……流石に出てないか。
二つ目。
何か視界が凄くクリア。
いきなりかなりの速さで泳ぎ出したため気付くのが遅れたが……別にゴーグルをつけているわけでもないのに視界が一切ぼやけなかった。
まるで水に入った瞬間、眼球がカメラに切り替わりでもしたような……そんなクリアな視界。
水中で物がはっきり見えるというのは最高だと再認識した。
ありがとう創造神器。
そして三つ。
息継ぎが不要。
理屈は全く持って分からないが、水泳板を手にしている限り、どれだけ水中を泳いでも息が苦しくなるということは無かった。
普通に息吐いて泡を吐き出すこととかは出来たんだけどな。
本当に謎だ。
だけど謎でもありがたいことに変わりはない。
海中でもこの効果がしっかり発揮されるなら、俺もトゥーナみたいに海藻や貝を獲ったりが出来るかもしれない。
……いや、危険ですって止められるかな……? まあその時はその時だ。
そんな感じで。
試してみて分かったのはこの三つ。
他にもあるかもしれないし、海水と淡水で違いは出るのかとか、気になることもいくつかあるが、まあ今日のところはこれくらいで良いだろう。
新解放された三つは試せたしな。
植物強化はやっぱりちょっと怖いからしかるべきところでやろう。
そういうわけでムイに礼を言って、もう水路を片付けてくれとお願いする。
ムイはプルプルと肯定し、一周二十メートル程度の水路を形作っていた水を全て呑み込む。
出てきた時点で分かってはいたが、これだけの水すら呑み込めるムイの容量には驚かされるな……水筒要らずだ。
よし、片付けも終わったな。
さっきも言ったが、ありがとうな、ムイ。
おかげでしっかり検証も出来た。
助かった。
俺の言葉にムイはぷるぷると震え気にするなと……言ってないな。
何だ? ムイ?
……礼と言っては何だが? さっきの鑢で自分も擦って欲しい?
いやいや。いやいやいや。
流石にそれは……鉱石でやるならまだしもムイでやるのはさすがに……というかそもそも礼と言っては何だがってこっちが言うセリフじゃないか?
……何? 細かいことを気にするな? 大丈夫だから?
そうは言ってもなあ……。
そんな感じで会話? は続き。
結局俺は、ムイにめちゃくちゃに押され、ムイに鑢をかけることになった。
何でこんなやすられることに情熱燃やしてるんだ?
それじゃあムイ。
鑢かけていくけど、何かあったら即座に伝えてくれよ? 隠すのは無しだからな?
ぷるぷる……!
やするに当たって俺が付けた条件、それが何か異変を感じたら即座に伝えること。
ムイに何かあったら大変だからな。
ムイの希望は叶えてあげたいが流石に条件をつけさせてもらった。
それを再確認してムイに鑢をかけていく。
ぷよぷよ……ぷよぷよ……。
……うん。
なんだか手応えがすっごくぷよぷよしてる。
まあ柔らかいし、俺が細心の注意を払って少しずつ鑢をかけてるからだと思うけど。
ムイは気持ちよさそうに溶けてるな。
もしかしてこれムイにとってマッサージとかあかすりみたいなアレなのか?
溶けられるとこっちも鑢かけづらいんだが。
まあそんな感じで慎重に慎重に慎重に鑢をかけていくと……。
ぷるぷる……ぴかーっ!
光り輝くムイが誕生した。
うん、何で?
鑢をかけていたのは俺なのに全く理解できない。
少しずつ鑢をかけて……ほんの少しずつだけスライム質の部分が削れて……。
ふう、やり切った。と、ムイから視線を外し上を向いて、額を腕で拭った。
そして視線を戻してみたらこの始末。
俺は首をひねるも、ムイはご機嫌な様子だ。
テンション高くぽよぽよぽよぽよと周囲を跳ねまわっている。
……なんか分身出来てないか?
ムイはそのまま大きく飛び跳ねるとそのまま俺の肩へ。
ダイレクトに着地。
うん、お見事。
だけど……正直眩しい。
顔の横に発光物体あるのちょっときっついな……!
まあ、ムイはご機嫌だしそのままにしておこう……。
ところでムイさん? その発光いつ終わるか分かったり……。
……しない? そうですか……。
ああ、ちなみに。
水質強化と植物強化をかけた水と植物はやはり見る者が見ればかなり垂涎ものらしい。
それぞれフィーネとラウームがかなり興奮していた。
フィーネに用意してもらった飲料水に水質強化をかけたら凄く喉ごしが良くなったし、植物強化は実験畑の作物にかけたんだが、この分だとさらに味がよくなるだろう、とラウームは断言していた。
かなり楽しみ。




