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ゆるっと街づくりin異世界~すべての種族が住む街を作れ!?~  作者: 下河スズリン


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109.新形態解放と検証

「ひっ……ひどい目にあったっ……!」


 あ、戻ってる。




 新たな四種族を迎え入れ、とりあえずは仮設住宅に案内し、一晩を明かしてもらった翌日。

 空き地に向かっていた俺とすれ違うように、エイリスがそんなことをぶつぶつとつぶやきながら歩いてきていた。


 ……結構早かったな。


 それを見ながら俺はそう思う。

 あんなになっていたのに一晩で治るとは。

 そうしていると向こうもこちらに気付いたようで……。


「代表……様! ご機嫌麗しゅうございます。本日、は……お日柄もよく!」


 なんかいきなり様子おかしくなったな?


「仕方ないじゃなっ……でしょう! あいつらに徹底的にたたき込まれたせいで条件反射で言葉がこうなっ……てしまうんです!」


 前言撤回。

 まだ全然治ってなかったな。


 それで、こんな朝からどうしたんだ?

 仮設住宅の居心地悪かったか? それなら意見を聞かせて欲しいが……。


 と、朝から外を歩いている理由を聞く。

 さすがに街に受け入れてもらった翌朝に、当然のように街中を練り歩くのは理由があるはずだと考えて。

 ……いや、無くてもおかしくないな。エイリスなら。

 昨日会ったばかりなのにそう思う。


「えっ? いや別に不満なんてな……ありません。ただちょっと用事があ……りまして」


 予想通り無かったらしい。

 だが何か用事があるのだとか。

 それは?


「私をこんなにしたあの二人……ハイラとリネイアでしたか? あの二人はどこにい、るでしょうか……?」


 ハイラとリネイア? それなら屋敷に住んでるから俺が来た方向に……。


「ありがとうございますっ! 今に見ていなさいよあの二人っ! 私をこんなにした責任取らせてやるんだから~~~っ!」


 俺が答えた瞬間、エイリスは俺に礼を言い屋敷の方へ即座に走り去っていってしまった。

 言葉的にハイラとリネイアへのお礼参りが目的のようだが……大丈夫か?

 ……まあいいか。

 にしてもダッシュで走り去って言ったけど……その背中の羽使わないんだ。

 独り言ちる俺に、ひっそりと肩に乗っていたムイが同意するようにぷるぷると震えていた。




 とまあそんな感じで道中でエイリスとのなんやかんやがあったが無事に空き地に到着。

 ……さて。

 何で俺が空き地に来たのかというと。

 新たな種族を受け入れた時の恒例。

 創造神器の新形態と新能力が解放されたためだ。


 今朝、目覚めた俺の頭に響いたアナウンスはこう。


 ”累計二十種族、結集確認。新たな形態、「鑢」解放。新能力「水質強化」、「植物強化」解放。”


 ……いやぁ、一気に増えてもう二十。増えたなあ……と、寝ぼけ頭で感慨にふけった俺は、いつものようにその新形態と新能力のテストをする為、空き地を訪れたわけだ。


 ちなみに。

 人魚族……トゥーナを受け入れた時も当然アナウンスはあった。

 解放されたのは水泳板、だったな。

 いろいろ忙しくてまだ試せてないけど。

 ……にしてもトゥーナを受け入れたのは街じゃなくて港なんだが……問題なく解放されたな。

 俺が作った拠点ならどこでもいいってことか?

 そうだったら結構度量が広い感じだな、このアナウンス。


 というわけで早速試していく。

 いこうと……思ったんだが。


 これ……水泳版とか水質強化って名前的に試すのには水が必要じゃないか?


 空き地に着いておいていまさらそんなことに思い至る。


 いや、これは明確に俺のミスだ。

 寝ぼけてて深く考えず思考停止で、新形態試すんだから空き地だろ、って向かってきてしまった。

 今考えたら植物強化も試すんなら畑に行くべきだしな。


 ……まあミスしたのは仕方ない。

 別に今すぐ試す必要があるって訳でもないし、そのうち試せばいいだろう。

 だけど今のうちに試せるものは試しておく。

 というわけで創造神器を新形態、鑢に変化させる。


 変化したその見た目は……半分から先が平たくなっている棒。

 その平たくなっている部分には、細かな凹凸がついており、触ってみるとざらざらする。

 形状的には、いわゆる棒やすりってやつか。

 棒の部分が持ち手で、平たい部分の凹凸を擦り付けて削ったり形を整えたり磨いたり……そんなことに使う道具。


 その効果のほどを確かめるため早速使ってみる。

 まずは木材から削ってみよう。


 そう言うわけだから……ムイ、何か木材出してくれ。


 俺の言葉にムイはぷるぷると震え、体内から手のひら大の正方形の木材を出してくれる。

 ……こんなきれいな正方形の木材作ったっけ俺?

 ……まああるってことは作ったんだろう。


 早速手にした創造神器の鑢で木材を削っていく。

 目標としては角を全てつるつるにした木製のボール。

 そこを目指してゴリゴリと削っていく。

 すると。


 凄いなこれ……! とんでもない速度で角が取れていくぞ……!


 前世でも少し使ってみたことがあるから分かるが、鑢というものは少しずつ削っていくものであって、一気に形を変えるものではない。

 だが創造神器の鑢にかかれば、ほんの数擦りするだけで目に見えて削れていく。

 しかも……これも完全に俺のイメージ通りに動いてくれる。

 この辺りまで削りたいなあ、という俺の漠然としたイメージ通りに木材を削り切ってくれる。

 やはり流石だ創造神器。


 そうして、大して時間もかからずに木製ボールは完成。


 ぽよぽよっ……ぽよぽよっ……!


 完成した木のボールはムイが打ち上げて遊んでいる。


 いや、にしても本当に凄い。

 イメージ通りにとんでもない速さで削れていくのもそうだが、削った表面がとんでもなく滑らかでつるつるなのが凄い。


 棒やすりっていうのは、基本的に大きく粗く削るための物で、表面をつるつるにするのは基本紙やすりの仕事だ。

 創造神器の鑢もこれだけ速く削れるんだからその例に漏れないと思っていたんだが……。

 やはり創造神器。

 相変わらず俺の考えのはるか上をいく。


 これだけ速く削ったって言うのにその表面は、とんでもなくつるつる。

 野球の投球みたいに指で押し出す感じで投げようものなら、つるんと滑って真上に飛ぶんじゃないかってくらいつるつる。


 だが実際試してみたら、完全に指に引っ付く感覚で、一切滑らずに指にかけることが出来た。

 縫い目もないのに。


 ここまでのつるつる加減とちょうどいい摩擦を両立するのは生半可な加工じゃできない。

 それを鑢一本で……。

 ……いや加工で何とかなる両立なのかこれ?

 まあ創造神器だしな……。


 そんな感じで投げたボールをムイが拾ってきて、今打ち上げて遊んでいるわけだな。

 今度シロともやろうかな、これ。


 そんなことを考えながら、次はムイに鉄材を出してもらう。

 出来るとは思うが、鉄も削れるかどうか試してみるためだ。


 俺の言葉にムイは再び正方形の鉄材を出してくれた。

 ……こんな鉄材作った覚えは本当に無いんだが……まあ、イアンか他のドワーフあたりが作ってムイが飲み込んでいたんだろう。


 そのまま鉄材を同じように削って球体にしていく。

 さっきの木材削りでだいぶ慣れたのもあって、すぐに削り終わった。


 鉄球の完成。

 ……結構ずっしり来る。


 ムイが何か期待しているような気配を出してきている。

 どうやら鉄球を投げて欲しいようだ。

 ……まあいいか、周囲には何もないし。


 そんな感じで作っては投げ作っては投げを繰り返し。


 木、鉄、ミスリル、金、鉛、魔石、宝石、いろいろムイに出してもらって試したが……創造神器の鑢はそのすべてを削ってみせた。

 流石だ。


 作った球は全てムイが打ち上げて、今お手玉みたいにしてる。

 サーカス出来そう。


 にしても結局ムイに出してもらった素材は全部正方形だったな……。

 魔石とか宝石まで手のひら大の正方形になってたのはどういうことなんだ?

 まあそのおかげで削りやすかったが……。

 まあ気にしないで行こう、出してもらっておいて文句付けるのもあれだしな。


 さて、鑢は問題なく検証できたが、残り三つはここじゃ無理だ。

 ……いや植物強化は雑草にでも使えばいいんだけど……それやって雑草がとんでもなく繁殖とかし出したら困るし。

 まあ寝ぼけて何も考えずここに来た俺が悪いな。


 俺がそう考えていると。


 ムイが俺の傍にぽよんぽよん跳ねて近寄ってきて、何も悩んでいるのか? みたいな感じで身体を傾けて来た。

 十数個の球によるお手玉を継続しながら。

 ……器用だな……。


 感心しながらも、水場に行けばよかったなとプチ後悔している、と、ムイに話したところ。


 ムイがお手玉していた球のうち、サファイアと水魔石アクアストーンの二つの球が光始め。

 そしてムイがその体から吐き出した大量の水が八の字を描き空中で静止。

 あっという間に空中に目測一周二十メートルほどの水路が出来上がった。


 え? ムイこんなことまで出来たの?


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