11.冬の備えと木工
かなり時間がかかったが……拠点の拡張は無事済んだ。
今現在、拠点はこんな感じだ。
それなりにスペースを広めにとっておいた。
俺の目標はここに街をつくることだからな。
ここが手狭になった時には人手も増えているだろうから、再拡張はその時に考えればいい。
さて、拡張を終えると俺にも分かるほど明らかに肌寒くなってきた。
ルシュたちに聞いてみたところ、やはりこの世界にも冬はあるようだ。
早速冬の備えを始めることにする。
まずは収穫からだ。
ありがたいことに畑の収穫速度は変わらなかった。
そのおかげで冬を迎える前に再び作物を収穫することが出来た。
収穫分から増やす分の作物を引いてもかなりの量になる。
およそ十人が冬を越すには十分な恵みだ。
やはり創造神器で開拓したからだろう。
感謝をささげる。
そして作物だけではなく干し肉も作る。
シロとムイに角兎を狩ってきてもらい、コボルトたちにその肉を干し肉にしてもらう。
それなりに岩塩も必要になるので俺は岩塩を掘りに行った。
副産物として火打石と火魔石も取れたので、備蓄しておく。
火打石は冬に火で暖を取るためにいくらあっても困らない。
拠点拡張の際に周囲の木を伐採したので薪もいっぱいあるしな。
火魔石は冬を越えた後に使うことになるだろう。
なぜかというと……お湯を作ってくれるフィーネが冬の間はいなくなるからだ。
なんでもウンディーネは冬の間、水底で水と一緒に凍って眠りにつくらしい。
冬眠ならぬ凍眠というわけだ。
「ごめんね~?協力したいのはやまやまだけど寒さにはあらがえないから~……」
「気にしないでくれ、十分助かってる。冬備えも手伝ってくれてるしな」
さて、収穫も終え干し肉も作った。
これで食料は十分何とかなるだろう。
だがまだまだやることは多い。
次にやるのは防寒具の作成だ。
これはコボルトたちに頼む。
コボルトたちは二つ返事で引き受けてくれた。
ありがとう。
「いえ、主様の頼みであれば当然のことです」
コボルトたちはさすがの器用さで二頭鹿の毛皮を使いすぐに防寒具を作り上げてくれた。
少しゴワゴワしているが着やすいし、暖かい。
十分な防寒着になった。
そしてその防寒着はコボルトたちの分も作られたのだが、コボルトたちは小柄なので十人分作ってもまだまだ毛皮が余っていた。
なので、余った毛皮を使って毛布を作ってもらう。
防寒着を着て毛布に潜り込めばたとえ寒さが厳しくなっても何とか乗り越えられるだろう。
あとやることは臨時トイレの建設だ。
今この拠点のトイレは川から水を引いた流水式のトイレにフィーネに浄化の魔方陣を刻んでもらっているものだ。
もし水が凍ってしまえば使えなくなる。
なので冬の間に使う用の臨時トイレを公衆トイレの横に作る。
残念だが上手い仕組みが思いつかなかったので普通の汲み取り式トイレを作る。
創造神器で土を掘りハンマーで固め、あとは木のふたを付けて完成だ。
最後に匂い予防に灰なんかをまいておいた。
この臨時トイレは苦肉の策なので、春になったら埋め立てることにする。
次の冬までには何か上手いやり方を思いついてると……いいな。
よし。
ここまでやれば十分だろう。
拠点内の冬備えは十分やった。
何事もなければ十分冬を越せるはずだ。
心配事があるとすれば拠点の外のこと。
冬で外出を控えている間に拠点を魔物に襲撃されたらどうしようという不安だ。
ルシュたちは魔物といえど生物。
冬の間は動きが鈍くなると言っていたが……。
正直それを信じるしかないな。
拠点を拡張した時、堀も少し広くしておいた。
二頭鹿でも超えるのは苦労するはずだし、思い切り飛び越せば音が鳴る。
そうしたら俺が駆けつけることが出来るだろう。
もう寒さもかなり本格的になってきたし、何とかなると信じて冬ごもりをするとしよう。
そう決めてから一週間ほど。
雪が降り始めてきた。
おお……雪が降っているところを見るのは前世の子供の時以来だ。
正直テンションが上がっている。
今すぐ外に出て雪遊びしたいくらいに。
やはり大人になってもこういうのは心が躍るな。
だけど、それで風邪をひいたらルシュたちにも迷惑がかかる。
残念だが今回の冬は屋内でおとなしくしておこう。
室内に居れば今のところ寒さはそう厳しくはない。
コボルトたちに作ってもらった防寒着が効いているし、シロがそばに寄り添ってくれているので暖かさも二倍だ。
ムイが自分にも構えというように飛び掛かってきたのでぽよぽよしておく。
そんな俺の姿をルシュが笑いながら見ている。
なぜルシュがいるかというと俺が頼んだのだ。
冬の間もまだ外に出られるうちは定期連絡をしに来てほしいと。
そういうわけでルシュにコボルトたちの現状を聞いている。
「問題はありません。寒さは十分にしのげていますし、消費量から考えても食料も十分にもちます」
「それならよかった。ここはまだまだ足りないものも多いから心配だったけど、何とかなりそうだな」
胸をなでおろす。
冬の備えなんて初めてだったから不安だったけど、何とかみんなで冬を越せそうで安堵している。
一つ気がかりなことがあるとすれば……娯楽がないことだ。
前世ではいくらでも娯楽があったから暇をつぶすのに困ることはなかったが……。
娯楽もないのにずっと室内に居なければならないのは流石に気が滅入る。
ムイとシロと触れ合っているのもいいが……他にも娯楽が欲しい。
というわけで俺は木工にチャレンジすることにする。
創造神器のノミを使って。
創造神器のノミは俺がイメージしたとおりに木を削ってくれる。
木工初心者の俺でも思い通りに小物を作れるのでかなり楽しい。
今までは皿やはしなんかの生活に必要なものを作っていたが、暇が出来たのでそれ以外の物も作ってみる。
例えば……木像。
熊の彫り物みたいなアレだな。
さすがにいきなりイメージだけで作るのは不安だったので、まずは目の前にモチーフがあるものから作ることにする。
ということでまずはムイだ。
ムイにテーブルの上に乗ってもらってそれを見ながら木を削っていく。
ムイはスライムなので簡単かと思ったが……曲線を彫るというのは意外と難しかった。
だが、創造神器の力もありそう時間もかからずに完成する。
ムイの木像だ。
我ながらかなりいい出来だ。
モデルになってくれたムイに差し出してみる。
そうしたらムイがとてつもなく喜んでいる。
天井まで飛び跳ねているところなんて初めて見たぞ……。
ここまで喜んでもらえるとこっちもうれしくなってくるな。
ルシュもその木像を見て興奮している。
「分かってはいましたが……さすがは主様。我らコボルトでもこれほどの細工をすることは難しいですよ」
創造神器の力ありきとはいえ褒められると嬉しくなるな。
と、ここで俺の腰に軽く衝撃が来る。
シロだ。
どうやら羨ましくなったらしく、自分にも作って……と言っているようだ。
シロにはたくさん世話になっているし否はない。
早速作ることにする。
カツッカツッカツッ……。
シロを見ながら木を削っているが……かなり難しいな。
特に毛の表現が難しい。
作ってみて思うが熊の彫り物なんかはかなり高度な彫り物なんだな。
実感した。
俺と違って創造神器の助けもなくあんなに複雑な彫り物が出来るなんて……本当に尊敬する。
俺は職人への敬意を頭に浮かべつつ手を動かし続ける。
そうすると……いつの間にか完成していた。
シロの木像だ。
完成したそれを前にシロがしっぽをぶんぶん振って喜んでいる。
自分でもなかなかいい出来だと思える出来だ。
心なしか木像の方が凛々しい気さえする。
それを言ったらシロがすねるかもしれないから黙っておくが。
木工に集中していたらかなり時間がたっていた。
食事にしようと思い、ルシュにもこっちで食べていくか聞いてみる。
「あ……よければこちらで食べさせていただければ……。それと、ぶしつけですが……その……」
その?
「私も……主様に木像を作っていただきたく……」
もちろんかまわない。
冬ごもり、心配していたが……。
思っていたよりも暇を持て余さなくて済みそうだ。




