10.畑の拡張と風呂
宴が明けて。
俺は今畑の拡張をしようとしている。
作物を増産するためだ。
まだまだ増やさないと量に不安があるからな。
とはいってもこの収穫速度と収穫量が続くのであればそう心配することもないだろう。
というわけで俺は今畑を作っている。
つるはしで。
いや仕方がないんだ。
今創造神器が姿を変えられるのはつるはし、斧、ハンマー、ノミ。
畑を作るのに使えそうなのがつるはししかない。
くわとか解放されてたらな……。
いや、よそう。
拠点や家具作り、もろもろでとても助かったからな。
高望みだろうこれ以上は。
というわけでつるはしで畑を拡張していく。
創造神器のつるはしは範囲掘りが出来るのでまあそこまでやりづらくはなかった。
それにコボルトたちもみんな手伝ってくれたしな。
創造神器のつるはしで掘った時、出た土は掘った場所の横にまとまるんだが、彼らがその土を穴に戻し軽く混ぜてもくれた。
コボルトたちはとても張り切っていた。
宴で出したスープの美味しさが彼らの心に突き刺さっているようだ。
そこまで喜んでもらえたのであれば、作ったこちらとしても嬉しいことだな。
張り切っていると言えばフィーネもだ。
ウンディーネに食事はいらない……と語っていた姿はどこへやら。
もう一度あのスープを飲めるのなら自分の住処の水をいくらでも使っていいと言ってくれた。
さすがに無尽蔵に使う気はないが、ウンディーネの水は作物づくりにかなり役立つ水だ。
ありがたく適度に使わせてもらうことにしよう。
ふぅ。
俺は畑の拡張を終わらせて一息つく。
するとムイとシロがやってきて撫でろと迫る。
畑づくりの間も狩りに出てもらっていたからな……。
俺はムイとシロを撫でまわした。
ムイとシロには世話になっている。
なぜなら今現在、ここの食糧事情は大部分をムイとシロに頼っているからだ。
まあたまに二頭鹿……オルトディア―だっけ?
あいつを誘導してくれる時は俺が仕留めてるが……。
毎日ウサギを狩ってきてくれるこの二匹がいなければとっくに食料が足りなくなっていてもおかしくなかった。
コボルトたちではこの世界の果てで狩りを行うことはできない。
コボルトたちにとっては角兎が相手でも命とりだからだ。
徒党を組んでもなお犠牲が出かねない……とルシュが教えてくれた。
ちなみにウンディーネのフィーネは水魔法を使えば勝てることは勝てるようだが、水魔法を使うためには清らかな水のそばにいる必要があると言っていた。
狩りに出るには向かないようだな。
ムイとシロを撫でまわしていてふと気づいたことがある。
畑に植えるものは作物だけではないということだ。
そう……果実だ。
食料を探していた俺にムイが場所を教えてくれた果実。
あれも増やすことが出来れば食糧事情はさらに豊かになるだろう。
というわけで早速果実を取りに行く。
ムイとシロと一緒だ。
最近は別々に動くことも多かったからこうやって一緒に歩くのは久しぶりだ。
一緒に散歩してると思っているのかムイもシロも喜んでいる。
食糧事情が楽になったら一緒に居る時間を増やしたいな。
というわけで果実の採集場所に到着。
畑に埋める用の果実をいくらか取っていく。
果実を取っていると、ムイとシロが食べさせてほしそうな目でこちらを見ている。
……果実の量にはまだ余裕がある。
俺はムイとシロに果実を差し出して食べさせてあげた。
ムイはうれしそうにぽよぽよ弾み、シロはしっぽをぶんぶん振り回している。
俺は思う存分ムイとシロを撫でまわして拠点に戻った。
果実を取ってきたので果樹用の畑を作る。
拡張することも考えて畑とはそれなりに離れた場所だ。
つるはしで掘り返して種を植える。
作物のことを考えたら果実もかなり早く収穫できるようになるかもしれないが……。
さすがに木に成る果実は成長にそこそこ時間がかかるだろう。
だが、りんごのような味わいのこの果実が増えるのはかなり楽しみだ。
大きく育ってほしい。
そう願いを込めてウンディーネの水をまいておく。
よし。
食糧事情にも改善の兆しが見えてきた。
見えてきたところで……さすがに拠点が手狭になってきた。
今この拠点は堀と土のバリケードで囲んでいるんだが……。
これを作ったときはまだ俺一人だったから、それなりに広めに作ったとはいえルシュたち十人とフィーネを受け入れると結構カツカツになってしまった。
これから先も種族を増やしていくなら拠点はもっともっと広げていかなければならない。
というわけで。
まずは周囲の伐採から始める。
今いるところは草原だが、拠点を拡張するにあたり両横にある森の方向にも広げていきたい。
ので、まずはスペースを確保するために周囲の木を伐採していく。
家や家具作りである程度拠点周囲の木は伐採したが、それでもまだまだ残ってるしな。
伐採した木はまだまだ作っていない家具や薪等々にありがたく使わせてもらう。
カコーンッ……カコーンッ……!
ふぅ、創造神器の斧なら伐採自体はすぐにすむが、木材にして拠点に運ぶとなるとそれなりに時間がかかる。
コボルトたちにも手伝ってもらうが、彼らは小柄であまり力仕事は得意ではない。
フィーネに運ばせるのは木材が濡れてしまうから遠慮したい。
シロはかなり大きく成長しているのでかなり助かったがそれでも一匹。
周囲の伐採を進めるのはそれなりに時間がかかった。
この間畑の様子も見ていたが、作物は順調に成長していた。
コボルトたちに作ってもらった小さい畑では作物の成長は見るからに遅れていたから、やはり創造神器で作った畑だからこそ成長速度がここまで早いのだろう。
ルシュたちがさすがは主様です……!という目でこっちを見ていた。
そして果樹の方だが、こっちも成長が速かった。
なんせもう芽が出て成長し始めているのだ。
さすがに作物ほどの早さで収穫することはできないだろうが、普通の果樹と比べたら何倍も早く収穫できるようになるだろう。
そして畑だけではない。
拠点内もそれなりに充実している。
伐採を進めた木材を使ってガンガン家具を作ったからな。
一番大きいのは……風呂だ。
創造神器のつるはしで穴を掘り、ハンマーで思い切り固めた穴に木材を敷き詰めた簡単な浴場だ。
一応風呂おけや風呂いすなども作ってあるのでそれなりの形にはなっていると思う。
中に入れるお湯はフィーネに火魔石を使ってもらっている。
火魔石というのは洞窟周囲を掘っているときに火打石や岩塩と一緒に出たあの赤い宝石のようなものだ。
フィーネが教えてくれたが、この石は火の魔力を強く宿した石らしく、普通の魔石と違って火の属性を強く強化することが出来るらしい。
ちなみに普通の魔石とは角兎や二頭鹿なんかも体内に宿しているアレで、魔力を宿している石のことだそうだ。
火魔石があれば、水以外の属性を苦手としているウンディーネでも十分に日の魔法を使うことが出来るらしい。
というわけでフィーネに水魔法と火魔法でお湯を用意してもらっているのだ。
初めて入ったときは身体に染み入る暖かさに柄にもなく少し涙ぐんでしまった。
思わずあぁぁ~……、と声を出してしまったほどだ。
俺も久しぶりに風呂に入ることが出来てかなり感動していたが、ルシュたちとフィーネの感動はそれ以上だったようだ。
ルシュたちとフィーネにも入ってもらったのだが、お湯につかるというのは初体験だったらしく、しっぽをぶんぶん振りながら俺にいかに気持ちよかったかを語ってきたのだ。
フィーネもその水っぽい体から湯気をあげつつ、水もいいけどお湯もいいと力説していた。
こんなに喜んでもらえるなら作った甲斐もあるというモノだ。
余裕が出来たらちょこちょこ採掘に行って火魔石も確保しに行こう。
そう決意し、ここをさらによりよい街にするため俺は拠点の拡張を進めた。




