105.トゥーナの住居完成と漁
トゥーナの住居、無事完成。
「わぁ~! ありがとうございますぅ~っ!」
フィーネに開けてもらっている、海に空いた穴と海面の境目をとんでもない速度で回遊しながら、テンション高くお礼を言ってくるトゥーナと対照的に、ちょっと疲れた顔をしている建築チーム。
いや、俺も気持ちは分かる。
なんせトゥーナ……一度完成してからも要求止まらなかったからな。
やっぱり天井はもう少し高くしたい、とか、いすの背もたれはもう少しゆるめにしたい、とか。
そのおかげでまた掘り直したり、他から良さげな石持ってきて椅子として削り直したりとかいろいろあったし。
まあ、ここまで喜んでもらえたなら頑張った甲斐もあった。
さて、そんなこんなで皆で頑張ったトゥーナの住居だが、建築途中にも言った通り、規模が増大している。
最初は当初の三倍くらいだったが最終的に五倍くらいになった。
俺が当初想定していたのは普通の1LDKみたいな感じ。
玄関……というか入口→居室→寝室、みたいな感じで繋がっている一人用の家。
だがいつの間にか部屋数も増え、さらにリビングというか広間はかなり高くなり……これ一人用の家なのか? ほんとに? といった感じになった。
まず玄関。
崖を直接削り出す形で玄関にした。
取っ手みたいなところを持って横に引くと開閉することが出来る。
横に引く形にしたのは押し引きの開閉形式は水の中だと難しいから。
そして入ると、なんか十人くらい並んで入れそうなスペースがある。
確かに玄関は家の顔とも言うが……顔デカくないか?
そして玄関からつながる広間。
かなり高い。
トゥーナの住居を立てる場所は港から離れて水深もそれなりにあるところを選んだが、それでも地上に届くんじゃないか? ってくらい高い。
下手したら十メートルくらいある。
そして広間には大きく削りだされた十人掛けくらいのテーブルと大きないす。
いやまあ、客人を招くことを想定すれば大きくするのは分かるんだけど……普段一人で使うのか? これ。
そして、その広間から繋がる四つの部屋。
一つは床と接するように入口がある。
ここはキッチンだな。
水中にキッチン? とは思ったがつけて欲しいとのことだったのでつけた。
そして残り三つは広間の相当高い位置に入口がある。
これは水中住居の利便性だな。
高い位置に入口があっても、階段無しで泳いで行ける。
その分スペースが浮いて見栄えが良くなる。
……いや階段があるのもそれはそれで見栄え良いが。
居室は言われた通りに増やしたが何に使うのかは知らない。
一つはまあ多分寝室にすると思うが。
部屋をどう使うかは居住者の勝手だしな。
でも三つは多くないか……?
まあ、そんな感じで、玄関、広間、キッチン、居室三つの一人用水中人魚住宅が完成した訳だ。
いや本当に大がかりだった……。
後はフィーネに魔法を解いてもらって、住居を海水で満たしてもらえばいい。
他の物は自分で用意するって言っていたしな。
「はいぃ……海中からいろいろ集めてくるのは私にしかできなそうなのでぇ……」
それもし海中に行ける者がいたら手伝ってもらってたってことか?
「……」
俺の問いかけに何も答えず明後日の方向を向くトゥーナ。
……いやまあいいか。
何はともあれ本人がやるって言ってるんだし。
それよりも……こうやって無事住居も完成したことだし、早速手伝ってもらってもいいか?
「あぁ~はいぃ! 漁の手伝いですねぇ。分かりましたぁ~。私も色々集めに海に出ようと思っていましたのでぇ~」
よし。
頼む。
そういうわけで、早速漁に……。
「主様は岸でお待ちを」
「我々が行って参ります」
「お任せください」
……行けなかった。
いや、心配してくれてるのは分かる。
でもトゥーナも海中から着いてきてくれるし、万一海に落ちたとしても……
「落ちること自体が危険なので」
「ご自愛ください」
「せめてもっと海のノウハウを積み上げてからでお願いします」
……はい。
そんなわけで。
俺はみんなが出港していくのを見送ることになった。
今回はトゥーナの助けもあるということで、いくつかの船で船団になってさらに沖に出るらしい。
まだ見ぬ魚が楽しみだし、トゥーナも海藻やら貝類なんかもあったら獲ってくると言ってくれたし楽しみだ。
ただ事故にだけは十分気を付けるようにとだけ伝え、トゥーナにももしものときは頼むと念押ししておく。
「安心してくださいぃ。投げ出された瞬間、船の上に打ち上げてみせますよぉ」
ありがとう、頼もしい。
ただ打ち上げるのはちょっと……。
そんな感じで手を振って見送った。
船上の皆も手を振り返してくれたし、トゥーナもイルカみたいに水面を飛び跳ねながら手を振っている。
器用だな……。
そうして見送ったのち。
俺の姿は塩田にあった。
トゥーナが来たことで作業途中で放置することになったからな。
皆が漁から帰ってくるまでに完成させておこうと思ったのだ。
というわけで再びザクザクと崖を削っていく。
途中までは作業を進めてあるし、最初だからそんなに広いものを作る気もない。
十分皆が帰ってくるまでに終わるだろう。
さて、場所の確保の為にある程度崖を削ったら、次にやることは砂浜作りだ。
揚浜式塩田とか入浜式塩田とかあると思うが、どっちも結局は砂浜でやるもの。
まあ今は最初だから水路を作る必要のない揚浜式でやろうと思っているが。
仕組みとしては、砂浜を作り、そこに海水を撒く。
そして天日干し……太陽光と風で撒いた海水が乾くことで砂に塩が付着。
その砂と海水を混ぜることで塩分濃度の高い海水……かん水が出来る。
後は砂を濾したこれを煮詰めれば塩が出来るって寸法だ。
と、仕組みとしてはそんな感じなので、砂浜は必須。
だけどこの辺りは崖ばっかりで砂がある場所は無い。
海底とかから取ってこれるかな? と考えていた俺を救ってくれたのはまたもや創造神器。
サクッサクッサクッサクッ……!
クワがつるはしで削ってなだらかになった崖に滑らかに入っていく。
すると、鍬が入った場所は……なんと砂浜になっていた。
うん。
どういう原理かとかは全然分からないが、創造神器のクワが作れるのは畑だけではない。
砂浜も作れた。
気付いたのはここに港を作ろうとしていた時。
あの時俺は、もしここに港を作るなら、この辺りにも一応畑とか作っておいた方がいいか? と、そう考えて一度畑を作ろうとした。
その時……崖ばっかりだけどやっぱり海と言えば砂浜だよな、という思考が俺の頭の中を走った。
すると、畑を作るために振り下ろしたクワからは、土よりもさらに軽い感触。
疑問に思った俺が振り下ろした先をまじまじと見てみると、何とそこにあったのは土ではなく砂だった。
そこで気付いたわけだな。
創造神器なら砂浜も作れることに。
そういうわけで、港を拡張することになった時、塩田を作ろうとそういう発想が出てきたわけだ。
ということで、このままガンガン耕して砂浜を広げていく。
サクッサクッサクッサクッサクッサクッ……!
面白いように砂浜が出来ていく。
最初だからあまり大きくは作らないと言っていたが、ついつい興が乗ってしまい結構大きな範囲を砂浜にしてしまった。
……まあ、いいか。
別に広くて困ることも無いしな。
そう自分に言い聞かせる。
さて、思ったより広くなってしまったが、作り終わったのなら次は使ってみるターンだ。
他の者の手も借りて、出来たばかりの砂浜に海水を撒く。
皆で器を手に海水を汲み、バシャバシャと撒く。
……ちょっと楽しい。
そんなこんなで海水を撒いていたら。
「主様、ただいま戻りました」
漁に出ていた者たちが帰ってきた。
いや、まあ試しで行ったんだから、帰って来るのが早いのは分かるが、それでも……かなり早かったな?




