103.港の居住区と迷い人
そうしてしばらく。
俺はさらに向こうを目指して第七地層を掘り進めていたんだが……。
残念ながらいまだ第八地層にはたどり着けていない。
まだ見ぬ地層全然見れてない。
まあ第七地層の鉱石はかなり掘れてるから良いと言えば良いんだが。
だが……たどり着けていない代わりと言っては何だが、種を採掘することが出来た。
そう、これまでも幾度かあった、種の産出だ。
……採掘人数が増えても俺以外が種を掘り出したって報告聞かないあたり、本当に創造神器のおかげなんだろうな……。
感謝を捧げておく。
そして採掘できた種は早速畑を作って埋めておいた。
何が出来るか楽しみだ。
そうやって日々を過ごしていると。
人口がドカンと一気に増加しだした。
「代表様、移入のペースが上がりました。こちらにまとめてあります」
ああ、ありがとうリネイア……。
俺は今、自室でリネイアに移住者たちの数や簡単なデータをまとめたもらった書類を見ている。
それによると……。
春を迎え、再び移住者が関所にやって来るようになったが……そのペースがどんどん上がっているようだ。
原因は……噂。
かつてフォイルが流した噂だ。
世界の果てに楽園がある……みたいなやつ。
去年もそれで結構異種族たちが集まってきてたんだが……。
どうやら時間が経ち、その噂がどんどん広まっているみたいで……異種族たちがどんどん世界の果てに来ているらしい。
俺が海に行って港を作っている間にもペースは上がり続けていたみたいだ。
街の拡張は追いついてるから別に問題は無いが。
むしろありがたいかもしれないな。
でも……本当にかなりのペースだ。
このままで行くなら今年中に住民が一万人に届いてもおかしくないぞ?
まあ流石にそうはならずに落ち着くかもしれないが……。
いや。
楽観はやめておこう。
実際来たら大変になるしな。
ちなみに新しい種族は今のところ居ないみたいだ。
書類を見る限り皆既存種族。
コボルト、エルフ、ドワーフ等々……。
エンジェル、デモンズ、精霊も増えているな。
そして皆それぞれの代表の下に入ることを了承しているみたいだが……大丈夫か?
さすがにこれだけ多くなってくると、代表一人で統制するのは難しくないか?
「ご安心を。私たちもですが、皆さんしっかり小代表などを選出して上手くやっていますよ」
小代表?
リネイアが言うには、数人~数十人を統制する文字通り小さな代表らしい。
指揮官の下に居る小隊長みたいなものか?
まあ上手くやれているようなら良かった。
「はい、それぞれ居住地で長をやっていた経験者の方もいますから、代表様がご心配されることはありませんよ」
ふぅ……それなら良かった。
というかそんな経験者がいるなら俺も人をまとめる方法とか教わりたい……
「代表様は心の赴くままに統治成されればそれが唯一の正解かと」
……いや、でもそういってくれるのは嬉しいが……
「唯一の正解かと」
……うん。
ま、まあともかくだ。
順調に人口も増え続けている。
なら拡張するのはレースピアの街だけではなく、港もだ。
港には今簡単な宿泊施設くらいしか作っていないが、本格的に居住区を作ろう。
と、いうわけで。
港にやってきた。
居住区建設の陣頭指揮を執るためだ。
……いや、うん。
……新しい海産物とか見つからないかなー。って気持ちが無いとは言わない。
……鮭とか鯛も良いけど鮪とか欲しいなあ。って気持ちが無かったとは言わない。
だが、まずは居住区からだ。
やるべきことはしっかりやる。
そっちの方が後で食べる魚が美味しい。
なのでまずは居住区。
レースピアの街が誇る建築チームとともに作り上げていく。
「お任せください、主殿」
見た目は四角い箱みたいな感じか。
海が近い以上、海風や……最悪台風のことも視野に入れる必要がある。
四角形の家は風に対しても高い安定感を持ち、さらには風が運んでくる砂や塩が溜まりにくいという利点もある。
デザイン性……というか、見栄えのいい家を建てるのも良いが、どれだけ強い風が来るか現時点では正確には分かっていない。
ならどれだけ強い風が来ても耐えられるように作っておくべきだ。
倉庫だってそんな感じで作ったしな。
と、外観はそう言う四角い感じだが、内装はそれぞれ変えていく。
一つの種族だけじゃなく色んな種族が住むことになるからな。
漁がやってみたいという者は、レースピアの街にも移住者の中にもそれなりに居ると聞いている。
なのでそれぞれの種族に合わせた内装を作っていく。
希望者の数はリネイアたちがまとめてくれているので、その数だけ作ればいい。
そんなわけで完成した。
ひとまずの居住区だ。
海に橋、船、そこに四角い建物が立ち並び……うん。
駆け出しの港町って感じだ。
流石はレースピア建築チーム。
「もったいないお言葉です」
さて、居住区はこれでいいだろう。
この先拡張することになるだろうが、居住区も港自体もはじめから拡張できるように作ってある。
それこそ十万人居住してきても……うん、多分大丈夫なハズ。
そういうわけで、他の必要なモノを作っていく。
まず船。
漁をやるのに船が無いなんて笑い話にもならない。
数人単位で一つの船に乗って漁をやると仮定し、十分な数の船を用意する。
この前作った経験を総動員すれば何とかなる。
後は漁に必要な道具もだ。
網、水槽、釣り竿やもしもの場合に備えた命綱など。
救命浮き輪とか欲しかったが……やはりゴムが無い。
いくらか木片を積んでおくことにする。
そしてさらに……塩田。
漁業に加え、塩も作ってもらいたい。
手探りで始めるから時間はかかると思うが、別に緊急性はないから構わない。
これは、無いとは思うが岩塩が尽きてしまった時のための方策だな。
本当に無いとは思うが。
まあ実際なくても岩塩と海の塩では味も違うだろうし、料理の幅が広がるだろう。
そういった感じで、別れて作業を進めていると。
船を作る班の方が騒がしくなったのが、創造神器を振るって塩田のため崖を削りまくっていた俺の耳に届いた。
しばらく聞いていても、そのざわざわとしたざわめきは消えない。
俺がどうしたのかとそちらに目をやると、俺のもとに船班をまとめていたはずのルシュが走り込んできていた。
ルシュはズザァァッ! と、音を立てて俺の目前で停止。
開口一番こう言ってきた。
「主様。その……何というか。迷い人がいらっしゃいました」
はい? 迷い人?
「うぅぅ~……食べないでくださいぃ~……」
ルシュに連れられやってきた俺が見たのは、そんな台詞を吐きながら地面にぺたぁ、と、うつぶせに体を横たえた……おそらく女性? だった。
髪が長く、うつぶせの体のほぼすべてを覆っているためよく分からないが、声の感じからしても多分女性だろう。
見た感じ、髪はびしょびしょに濡れているし、地面にも水の跡がある。
関所も通ることなくなぜこんなところに迷い込んだんだ? と思ったが……もしかして漂流してきたのか?
それなら早いところ保護して栄養を取らせた方が……と、俺は彼女に近づくために、一定の距離を取って囲んでいる皆の間をすり抜け……る、必要はなかった。
俺が近づいた瞬間、皆がザザザザッ! と道を開けたからだ。
凄まじい統一感だった。
一瞬、軍隊か何かか? と思ったからな。
まあともかくそういうわけで、俺は彼女に近づき、とりあえず体を起こせるか? と声を掛けた。
彼女はそんな俺の言葉に従い、地面に両手をつき上体を起こす。
何で立ち上がらないんだ? 立ち上げれないほど弱っているのか……? と、俺が疑問に思った瞬間、その答えが目に入った。
彼女には、足が無かったのだ。
いや、正確には無いわけではなく……腰から下、脚があるべき部分に魚の下半身が生えていた。
そう……彼女はまさに俺のイメージ通りの姿をした……人魚だった。




