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――こりゃ勝てるな。
ヨシナリはそんな事を考えながら敵機を次々と処理。
後ろはタヂカラオが守ってくれている事もあって楽に斬り込めるのもありがたい。
味方が既に二機やられてるのは問題ではあったが、霧ヶ峰からは特に指示がない点から恐らくは問題ないと判断しているのだろう。
下に関しても密迹は健在。 撃破した数を考えればもう六割は超えている。
十倍以上の戦力差でこの体たらくか。 機体の性能差を加味しても厳しい。
評価しろという話だが、どいつもこいつも手柄狙いで連携もクソもなく自分での撃破を強く意識、減点を恐れて誤射に対しては極端に抵抗を示す。
「ヨシナリ君的にはいいのは居たかい?」
「いえ、皆無ですね。 言い方は悪いですけど、印象に残る奴は居ませんでした」
ヨシナリの採点基準は仲間に欲しいかどうかだ。
その基準に照らし合わせれば九軍予備軍は全員落第だった。
少なくとも最低限、周りと足並みを合わせる努力ぐらいは見せて欲しかったのが本音だ。
「タヂカラオさん的にはどうでした?」
「僕としても良い評価はやれないかな。 どいつもこいつも点数稼ぎに必死過ぎだよ」
「試験官的には微妙ですかね?」
点数つける為に呼ばれた以上、全員使えませんでは話にならない。
そう考えたのだが、タヂカラオは小さく首を振る。
「あぁ、そこは気にしなくても良いと思うよ。 採点に関しては霧ヶ峰君に投げとけばいい」
彼女が後方に陣取っているのは評価をする為でもあったからだ。
諦めずに突っ込んで来たソルジャー+の旋回を先回りして回避先にアシンメトリーを撃ち込んで撃墜。
もう散発的に仕掛ける事しかしてこない以上、負ける気がしなかった。
「元々、下層のメンバーは集団戦闘の適正が低いかこのゲームをカジュアルに楽しみたい層が多くてね。 前者は変に我が強かったり、協調性に欠けている事が大半で後者はガチ勢に比べると熱意に欠けるって感じかな」
「あぁ、あわよくばって感じなんですか」
厳選こそしているが、人数が多い以上はそういったプレイヤーの割合が増えるのは仕方がない。
ただ、その考えは「思金神」でやっていく分には何の問題はないが、上に行くには少し難しいと言えた。 タカミムスビは停滞を良く思わない以上はそういったプレイヤーは冷遇はされないとは思うが優遇もされないはずだ。
「まぁ、気楽にやりたいけど、そこそこいい思いはしたいって考えは理解できるから悪いとは言わないけどね」
「ですね。 ただ、その辺の事情は俺達には関係ないので低評価を付けて問題ないって事ですね」
そういう事だねとタヂカラオが苦笑した所で密迹が最後の一機を撃墜して試合終了となった。
「はい、お疲れさまでした。 戦闘の雑感、対象者の評価等は私の方までお願いします。 文章にして頂けると大変助かりますが口頭でも構いません」
終わって控室に戻ると霧ヶ峰がすぐさまそんな事を言いだした。
しかも視線がヨシナリの方を向いており、明らかに意見を言えと催促している。
最初に俺かよとせめて他の人の意見を聞いて参考にしたかったと思っていたが、まぁ仕事だしなと割り切る事にした。
「ぶっちゃけると微妙でした。 九軍の人達がどれぐらいのレベルを求めているのかは聞いてないので、俺の判断が何処まで参考になるかはお任せします」
――と予防線を張ってから意見を口にする。
「数が多かったので細かい点は何とも言えませんが、技量に関しては全体的にランク、機体相応と感じました。 不快に感じたのなら謝罪しますが、怖い相手はいません。 少なくとも空に上がって来たプレイヤーはほぼ全員が、勝利よりも昇格――評価を意識した立ち回りだったので連携も穴だらけ、とどめに手柄を奪われないようにと味方の射線に入って妨害までする始末。 この戦闘の趣旨を考えれば分からなくもありませんが、勝負である以上は勝ちに行くという意識は必須かと」
タヂカラオに言った事の繰り返しになるが、当人は昇格していい待遇を受けたいのだろうが、ユニオンとしては使えるプレイヤーが欲しい。
この意識のギャップを理解できない奴は評価に値しないと考えていた。
仮に上げたとしても使い物になるのかは非常に怪しい。
最低限の技量があればいいというのならランク順に取ればいいのだ。
それをやらない以上、求められるのは意識の高さとヨシナリは考えていた。
「なるほど。 大変参考になりました。 他の皆もこれぐらい言えるようになってくださいね」
霧ヶ峰がわざとらしくヨシナリを持ち上げると一部のプレイヤー――具体的には五軍以下の代表が露骨に睨んで来る。 その視線を無視しつつ内心では霧ヶ峰に対して勘弁してくれと肩を落とす。
忖度があるという話は聞いていた。
恐らくは睨んでいる連中がその傾向にあるプレイヤーなのだろう。
低層は人数が多い事もあって派閥のような物ができやすいらしく、お手軽に味方を増やしたいなら恩に着せるのがいい。 ヨシナリが十軍の枠に据えられたのは最も多い所だからだろうなと察していもいた。
こうして最初に喋らせて強めの意見を出させておけばそういった丸い評価をする者はやり難いはずだ。
「そうですね。 ヨシナリ君の言う通りです。 はっきりと物を言う場面なら言わせて頂きますが、選考方法を見直すべきでは? せめて、ゲームプレイにおける意識の高さが選考基準に含まれると一言添えるだけでも落とされた連中が理不尽だと文句を言い出す事も減るかと」
続く形で挙手して意見を口にしたのはタヂカラオだ。
敢えて強い言葉を使っているのはヨシナリへの注目を逸らす意味もあるのだろう。
ヨシナリとしては感謝しかなかった。
「――だからと言って事前に告知すれば対策だけをしてくる者が増えるのでは?」
「分かってて言ってるでしょ? だから降格ってシステムがあるんじゃないんですか?」
タヂカラオの返しに霧ヶ峰は苦笑。 明らかに分かっていてした質問だ。
少しの会話しかしていないが、彼女はとにかく人を試したがる。
ヨシナリとしては常に探りを入れられているようで話していてあまり気持ちのいい相手ではなかった。
「――――うむ!」
密迹が同意するようにそんな事を言っていたが、こいつはまともに意見を言えるのだろうか?
どんな意見を持っているかよりもそちらの方が気になった。
誤字報告いつもありがとうございます。
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