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ヒラメンバーの昇格試験が終了し、結果待ちとなったのだが次は階級を上げる為の試験――つまりはヨシナリ達の出番となる。
最初の相手は九軍の昇格候補メンバー。 その数――150。
「……あの、俺達十人しかいないんですけど? 分けて戦うんですか?」
「残念ながら僕らで全員纏めて相手にする事になるよ」
やや遠い目をしたヨシナリにタヂカラオが残酷な現実を告げる。
何でだよ!? ほとんどの相手が低ランクで機体の性能もこちらが上だ。
それを差し引いても戦力差十五倍は中々に厳しい。
「ちなみに我々には撃破した敵機と試験内容に応じた報酬が支払われます。 ――まぁ、負けたら降格なんですけどね……」
霧ヶ峰が最後にボソッと割に合わない条件を付けたして溜息を吐く。
「酷っでぇ条件だな。 皆さん良くそれで納得できますね!」
「――――うむ!」
「試験官の選出ってクジで決めるから、運がなかったって感じ??」
「マジかー……」
「思金神」ってこんな所なのかよと少し引いたがやるからには半端は無しだ。
狙うは叩き潰しての完全勝利を狙う。 準備が終わったらしく、全員がフィールドへと移動。
フィールドは森林。 木々が視界を埋め尽くしており、視界は最悪。
全体を見通したいのなら空中か中心と東西にある山に登るぐらいだろう。
ホロスコープは装備構成を少し変えている。
イラを手放したので、代わりに近接用のブレードを二本――実体、エネルギー式を各一本ずつ持ち込んだ。 実体剣は背にエネルギー式は柄のみで持ち運びがし易い事もあって腰にマウントしている。
ぐるりと見回すと他の味方機もフィールドに出現。
霧ヶ峰、イソシン、タヂカラオ、密迹の四人のジェネシスフレーム。
三人の物は既にみている事もあったが、密迹の機体は初見だった事もあって視線が行ってしまう。
変わった機体だった。 巨大な三度笠で頭部が隠されており、アバターと同様に法衣のような物を身に纏っている。
ジェネシスフレーム「忿怒払」。
携行武装が見当たらない点から仕込みか自前で賄うかのどちらかだろう。
頭部の三度笠はレドームなのかとも思ったがエネルギー流動を視るとそうでもなさそうだった。
どういった用途で使うのかは少し見えていたが、今はいい。
残りはエンジェルフレームが二機、キマイラループスが一機、ソルジャー+が二機。
「さて、密迹、ヨシナリさんはそれぞれ、地上、空中から敵の攪乱を。 そこから崩していきましょう」
「要は鉄砲玉をやれって事ですね」
「まさか。 ヨシナリさんはちゃんと帰ってくるので使ったら終わりの鉄砲玉とは違いますよ」
霧ヶ峰の死ぬまでこき使うという意思表示に若干、嫌だなと思いながら変形させて真っすぐに突っ込む。 合わせる形で下から密迹が地上を進んでいた。
前衛を任されていた事から近~中距離戦機と思っていたが、どんな物なのか。
真っすぐに突っ込んだ事もあって即座に捕捉され無数の銃弾やエネルギー弾が飛んでくる。
僅かに遅れて次々に機体が上がって来た。 タイミングが早い。
それも悪い意味で、だ。 明らかに攻撃に同期しているのではなく、自分達が前に出る事で下のメンバーに撃つ事を躊躇わせる配置だった。
――手柄の取り合いか。
悪いとは言わないが、初手でこれはあまりいい印象を受けない。
自分のプレイを貫く事と味方の足を引っ張る事は同義ではないからだ。
ギリギリまで引き付けてからインメルマンターン。 攻撃を躱しながら敵の只中に。
味方の位置関係を意識できるのなら危険な一手ではあるが、明らかにそうではない以上は敵の取る手は簡単に想像できる。 射線に味方がいると判断して撃つのを止める者、そうでない者はブレードを抜くが位置取りが良くない。
この戦闘は勝つ事も重要だが、それ以上に自分が使える奴だとアピールする場なのだ。
それを理解している奴ほど誤射を恐れる。 味方を撃つ奴などどう考えても要らないからだ。
――にも関わらず構わずに仕掛ける者は勝てばいいで思考が固定されているか、そもそもそんな複雑な事を考えていないかのどちらかだ。
実力が伴っているのならそれも罷り通るのだろうが、ヨシナリから見て目の前で斬りかかりに来ている連中はそうでもなかった。
大振りの斬撃を引き付けて躱し、至近距離でアトルムによるバースト射撃でコックピット部分を破壊。
意識してジェネレーターは外したので爆発はしない。
何故、そんな手間をかけたのかというと盾にする為だ。 撃破した機体を掴んで敵機に前に突き出す。
たたらを踏むように敵の斬撃が止まる。 なるほど、あのオペレーターが多用する訳だと思いながら蹴り飛ばして敵機にぶつけ、そのままクルックスも抜いて連射で撃破。
敵機とは付かず離れずの位置が望ましい。 そうすれば敵は下手に撃てないからだ。
ただ、狙撃手はその限りではない。 ロックオン警告。
躱そうとするが狙撃は飛んで来なかった。
いつの間にか山の頂上に陣取った霧ヶ峰が次々と狙い撃ちにしているからだ。
不意に森の一角――正確には木々が切断されて吹き飛び、中には敵機の残骸も混ざっていた。
開けた視界には密迹の姿がある。 腕には輪に芯が通ったような持ち手の両剣のような物を持っていたが、ブレードが通常のエネルギー式ではなくエーテルだった。
「――――有無!」
延長されたエーテルのブレードが持ち手の輪を中心に高速で回転。
森ごと敵機を裁断していく。 広範囲の斬撃。
カナタに近い武装だが、こちらは範囲を絞る代わりに範囲内の殲滅力は上だ。
使い方も上手い。 片方を大きく延長して攻撃に使い、もう片方を防御に用いている。
下手に近寄れないと判断した敵機が銃撃で削ろうとしているが高速回転する刃が銃弾、エネルギー弾を問わずに叩き落す。
そしてその状態で真っすぐに突っ込んで来るのだ。 敵からすれば溜まった物ではないだろう。
――ってか突破力エグいな。
機動性が高い訳ではないが攻撃性能と防御性能を両立させているお陰で思った以上に速い。
単純に足を止めている時間が短い事もあって移動に無駄が少ないのだ。
ついでに動いた後が分かり易い。 彼の通った後は森が禿げてしまっているのだ。
なるほど、霧ヶ峰が前衛を任せる理由も納得だった。
目立つ分、援護もし易いと。 面白い戦い方だった。
誤字報告いつもありがとうございます。
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