903
「一通りはな」
本当なら資金の問題があったが、それもベリアルのお陰で解決しそうだった。
「そうか。 ならイラを一度こっちに戻せ」
「イラを? 何かあったのか?」
ユウヤの意図が分からずに内心で首を傾げる。
「問い合わせたらそいつを下取りに出す事でかなり安く新しい装備を寄越すそうだ。 ついでに要望も送ればそれに合わせたデザインに変えられる」
それを聞いて納得する。 これはユウヤなりの昇格祝いのようだ。
イラの強化――というよりは打ち直しに近い物なのだろうか?
ともあれ、ヨシナリ用に調整をかけた上で新造してくれるようだ。
ありがたいと思いながらウインドウを操作してイラをユウヤへと引き渡す。
「ふ、フヒ、お、おめでとう。 わ、私からはこれを――」
さっきから黙っていたグロウモスがウインドウを操作するとヨシナリの方の通知がポップアップ。
入金を示すそれを確認すると大量のPが振り込まれていた。 5000P。
「い、今までに撃破したボスとかエネミーの報酬が結構、残ってたから」
「でも、この額は――」
「わ、私が作る時にカンパしてくれればいいよ」
固辞するのは逆に失礼になりそうだった事もあってありがとうございますと小さく頭を下げた。
ユウヤは用事は済んだと言わんばかりに、後で新造武器のプランを送るとだけ言って去り、グロウモスもランク戦に潜ると言って姿を消した。
どうやら彼等はヨシナリの昇格を祝う為に来てくれたようだ。
仲間の計らいに内心で感謝しながらホームに戻るとまたメッセージ。
確認するとふわわとマルメルから入金があった。
お前らもかよと思いながら確認すると結構な額のPが振り込まれている。
それだけでは終わらず、ツガルからも入金があった。
少額ではあったが、何かの足しにしろとメッセージが添えられている。
自分で溜めていたPを合わせると三万を軽く超えた。
仲間達が祝ってくれた事に内心で感謝しつつ、これは恥ずかしくない機体を作らないといけないと気合を入れる。
ヨシナリはホームの自室に引っ込むと打診してきたメーカーからのメッセージを片端から精査。
装備は他所から引っ張れるが、フレーム周りはそこでしか作れないのだ。
さてとヨシナリは考える。 今の自分のスタイルを最大限に活かせる機体はどんな物なのか?
タカミムスビは言っていた。 基本的にメーカーはそのプレイヤーの戦闘記録を参照してフレーム設計を行う事もあって何処に依頼をしてもそれなり以上に手に馴染む機体には仕上がるとの事。
その為、選ぶ際に重要なのはそのメーカーがどんなフレームに対して力を発揮するかが重要のようだ。
高火力、堅牢さ、機動性、旋回性能、ステルス性、可変機構、特殊武装特化等々――
見れば見る程に悩ましい。 プレイスタイルから絞り込みができるが、いまひとつ決め手に欠ける。
ジェネシスフレームを持っているランカー達は数ある候補からどうやって決めたのだろうか?
「……これは時間がかかるなぁ……」
思わずそう呟いた。
「よし、撃て撃て! 撃ちまくれ!」
ヴルトムの叫びに合わせて展開していた無数の機体が砲弾やミサイルをばら撒く。
それに合わせてマルメルも巨大なエネミーにハンドレールキャノンを撃ち込んだ。
ダンゴムシのような見た目の大型エネミーが次々と被弾して崩れ落ちる。
何をしているのかというとガチャでGを使いすぎた事もあってヴルトムに付き合ってフリーのミッションを回していたのだが、考える事は相棒の事だった。
ヨシナリがついにAランクに昇格したようだ。
前々から用意しておいたPを祝いに送っておいたが、負けてられないといった気持ちが強かった。
「よぉ、なんかあったのか?」
一番厄介な大型エネミーの撃破が完了した事で余裕ができたのかヴルトムが声をかけて来た。
「あぁ、実はヨシナリの奴がAに上がったんだ」
「マジかぁ。 最初に会った時は全然初心者だったのにもうランカー様かよ。 随分と差を付けられちまったなぁ」
ヴルトムはしみじみと頷く。
「そういえばちゃんと聞いてなかったけどヨシナリと初めて会ったのっていつよ?」
「マジで始めたてって感じの頃だな。 共同ミッションも初めてみたいな事も言ってたかなぁ。 あの時は野良でパーティー組んで適当にミッション回してG稼いでた頃だった。 その時に入って来たのがヨシナリだな。 次に会ったのは前の前のトップがやらかして前の奴が俺に負債だけおっかぶせてドロンした頃だ」
ヴルトムはお前も知ってるだろうと付け加える。
「あぁ、そんな感じだったな。 そういえばお前に押し付けた前の奴ってどうなったんだ?」
「気が付いたらフレンドリストとかから消えてたし、連絡先もなくなってたから多分、垢BANだな」
「うへ、このゲームのBANって割と洒落にならなくなかったか?」
アカウント作成の際に長大な利用規約の確認をさせられ、罰則に関しては相当の金額を請求される。
BAN――つまりアカウントを消される場合は相応の制裁が下された事を意味するのだ。
「そのはずだけど俺の知った事かよ。 『大渦』の立て直しにどれだけ苦労したと思ってるんだ」
メンバーがほぼ抜けてしまい、資金を持ち逃げされた状態を数人で維持した上、ここまで持ち直したのだ。
ヴルトムの苦労は相当の物だっただろう。 マルメルは話しながらちらりとマップを確認すると友軍が残敵の掃討に入っている事もあってお喋りしていても大丈夫そうかと考えながら会話を続ける。
「なぁ、請求額って割と洒落にならないはずなんだけど回収できないならどうなるんだ?」
「あー、どっかで聞いた話なんだけどお前さ、イベントミッションとか復刻ミッションとかで湧いて来るトルーパーは分かるよな」
そこまで言われてピンときた。
「マジかよ。 つまりあれか? あの有人エネミー共は返済の為に運営にこき使われてる借金まみれの連中って事かよ」
「ちょっと考えてみろよ。 このゲームのプレイ人口を考えると復刻ミッションなんて死ぬほど擦り倒されてるだろ。 条件を踏まなきゃならんとは言え、あれだけの数を繰り出してるんだ。 簡単に頭数を調達する方法としては納得できるだろ?」
確かに納得のできる話だった。
機体によってはそこそこ動きの良いのもいた事を思い出し、経験者なら納得できるなと腑に落ちた。
誤字報告いつもありがとうございます。
宣伝
パラダイム・パラサイト一~二巻発売中なので買って頂けると嬉しいです。
Kindle Unlimited、BOOKWALKERのサブスク対象にもなっていますのでよろしければ是非!




