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Intrusion Countermeasure:protective wall  作者: kawa.kei


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902/904

902

 ――ここまで戦って違和感もあった。


 ここまで凌いでいたが、ベリアルの動きには穴がある。

 恐らくは意図して作った物だ。 死角からの攻撃は分身のみ。

 本体はほとんど正面から。 侮りではない。 誘っているのだ。


 正面からの殴り合いを。 できるできないの問題ではなかった。 やるしかない。

 パンドラの出力を更に解放。 700%。 これが振り回されずにまともに操れる最大出力だ。

 移動先に転移反応が出現したが無視。 本体は正面から来るからだ。


 エーテルによって手足の装甲を強化。 形状こそ安定しないが、殴れるなら何の問題もない。

 背後からの奇襲は無視。 正面から来た本体に対してカウンターで殴りに行く。

 上からの振り下ろしと見せかけて本命はデザインを弄っていない反対の手による貫手。


 エーテルによって固められた揃えた指の貫通力は槍にも匹敵する。

 振り下ろしを腕で受け、分身からの攻撃を上体を傾ける事で逸らし、貫手はクルックスのグリップで打ち払いながら連射。 狙うのは腕ではなく胴体。 


 ここが勝負どころとクルックスにエーテルの過剰供給を行ってフルオート射撃。

 ベリアルは躱さずに打ち払われた腕を分解し、瞬時に再構成。  

 戻してからの再攻撃が速すぎる。 仰け反って躱すが貫手で胸部から頭部にかけて縦一文字に切り裂かれた。 シックスセンスにダメージ。 探知項目の一部がごっそりと死んだが、何の関係もない。

 

 受けた腕を握り潰されそうになっていたが、覆うエーテル量を増やしていたお陰で籠手のように引き抜く事ができる。 その頃には既にアトルムを抜いていた。

 フルオート射撃。 こちらは負担に耐え切れなかったのか、プセウドテイの腹に喰らわせた後に爆散。

 

 ついでに握ったままの手首も吹き飛んだ。 構わずにエーテルで腕を再構成すると拳を固めて殴る。

 頭部を捉えたが、仰け反ったベリアルは跳ね返すように頭突き。 ホロスコープの頭部が半壊。

 もう一撃頭突きが飛んできそうだったが、それより前に膝を叩きこんで勢いを殺す。


 お返しとばかりに脇腹に拳の連打。 一撃でエーテルの装甲が剥がされ、二発目で内部機構にダメージ。 三発目でフレームの一部が砕けた。 ホロスコープの全身が悲鳴を上げ、抗議のようなエラーメッセージが次々とポップアップする。 

  

 止めろとアトルムを構えるが、構えたと同時にグリップを下からアッパーで跳ね上げられ、手からすっぽ抜けて飛んでいく。 あくまで殴り合いに応じろと言わんばかりの動きだ。

 だったらと跳ね上げられた腕を固めて振り下ろす。 


 ホロスコープの腕がプセウドテイの肩に叩きつけられるが、逆に腕が圧し折れた。


 ――何でだよ!?

 

 殴り合いに夢中になっていたが、よくよく見てみるとホロスコープのダメージに対してプセウドテイの損傷が軽すぎるのだ。 

 パンドラの超過駆動によってダメージを受けている事を差し引いてもその差は顕著だった。

 

 銃撃したはずの部分ですら思った以上に効いていない。

 何故だと思ったがシックスセンスでスキャンしてマジかよと内心で呟く。 

 ベリアルはダメージを受ける直前に被弾箇所にエーテルを集中して瞬間的に防御力を上げているのだ。


 見た目は一切変わらない事もあって気付くのが遅れてしまったが、攻防を繰り返しながらエーテルの管理を行っているのは凄まじい。 


 「戦友よ。 これが我が闇の叡智。 そしてこの修羅の巷に足を踏み入れた好敵手に対する餞別だ」


 プセウドテイが拳を弓のように引いて一撃を繰り出す。 

 単なる打撃ではなく、腕と拳が互い違いに高速回転している。 

 こんな事もできるのかとエーテルの応用範囲の広さに戦慄しつつも応じるように残った拳を振るう。


 衝突。 ホロスコープの腕は砕け散り、プセウドテイの回転拳はそのまま胴体を打ち抜いた。

 凄まじい威力でホロスコープの胸から上が文字通り粉砕される。 

 パンドラが破壊され、一瞬後には爆発するだろうその時にヨシナリが考えたのは悔しさと戦友の不器用さだった。


 爆発。 ホロスコープが完全に破壊され、試合は終了となった。




 「視えたか?」

 

 試合が終わった後、ベリアルはそう尋ねる。 

 ヨシナリはあぁと小さく頷いた。 


 「貴公の叡智、そして闇の深さを知った。 我が現身たるホロスコープはこの敗北を糧として新生する事だろう。 感謝――いや、ありがとう。 お前が居てくれて本当に良かった」


 変に飾らずに心底からの感謝を伝えるとベリアルは背を向けて小さく手を上げた。


 「さらばだ。 我が戦友よ」

 「ここは『またな』だろ。 永遠の別れじゃない。 お前の席は空けておく。 いつでも帰って来い! 待ってるからな!」 


 ベリアルは少しの間、動きを止めていたが、ややあって小さくウインドウを操作するように手を動かす。


 「そうか。 では、また会おう。 我が友、魔弾の射手――いや、ヨシナリよ」


 アバターが消失。 そしてヨシナリの方に二つの通知がポップアップ。

 ベリアルがユニオンを脱退した事とPが入金された事の二点。 

 額を見て目を見開く。 入金額は10000P、添えられたメッセージには「使え」の一言。


 二度目のユニオン対抗戦からずっと力を貸してくれた戦友の離脱は大きな喪失感を生んだが、また帰ってくると思い直し気持ちを切り替える。 

 振り返るといつの間にかユウヤとグロウモスが戻って来ていた。


 「あの野郎はギリギリまで迷っていた。 このままここに残るか、独りで出直すかを。 別にここが嫌になったって訳じゃねぇ事だけは分かってやってくれ」

 「言わなくていい。 分かってるから」


 思う所があったのかユウヤがフォローしようとしていたが、ヨシナリもベリアルの意図は理解していた。 ここで強くなる事も選択肢として残っていたのだろうが、ヨシナリ達に情が移り過ぎたのだ。

 その為、これ以上は馴れ合いになってしまうと危惧したのだろう。 


 ヨシナリも彼の力に甘えている部分があった事は否定できない。 

 だから、今はこれでいいのだ。 時間は必要だが、彼とはまた会える。

 連絡も取れる環境なのだ。 次に並び立つ、あるいは対峙する時は互いに進化しているはずだった。


 「寂しくなるけど今はあいつに恥ずかしくないようにしないとな!」


 努めて明るくそう言って気分を変える。 


 「……そうだな。 で? 昇格したって事はもう組む算段を立ててるのか? それとももう終わったか?」

 

 恐らくタカミムスビの所へ行った事を察していての発言だろう。

 お見通しかと内心で苦笑した。


誤字報告いつもありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
これで別れてすぐにエーテル関係のパーツのオーダーメイドを依頼したらズコーってなりそうですね。
仲間ではなくなったが友ではある。いや、真に友になったと言うべきか 今までの模擬戦はベリアルとしては指導の範囲でこれからはガチンコ勝負でいく儀式のような訣別の一戦 エーテルのさらなる使い方も見せ、とある…
かっこよすぎだわ ベリアルホント好き お互い大きくなれそうだなあ
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