表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Intrusion Countermeasure:protective wall  作者: kawa.kei


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

901/904

901

 距離を取ってアシンメトリーを構えた時には既にベリアルの姿はない。

 転移反応。 右旋回と同時にブレードの刺突。

 即座に死角に回り込んで来る速さ。 味方だと頼もしいが敵だと本当に厄介だ。


 ヨシナリは転移反応に向けてアトルムとクルックスの連射で牽制。

 反応が複数なので的を絞れないのだ。 本物は一つと思いたかったが、全ての転移先に機体――要は分身が出現する事もあってどうしても反応が遅れてしまう。


 分身に関しては種はある程度ではあるが割れている。 恐らくはエーテルの操作機能を有したドローン。

 それに命令を送る事で自機の分身として機能させているのだろう。

 持続時間は三秒から五秒。 動作はワンアクション。 多くても二手だ。


 今回の場合は突進からの斬撃。 旋回からの斬撃。 後は単純にこちらの死角に出現しての攪乱。

 それをほぼ間断なく行って来る事もあって反撃ができないのだ。

 パンドラを半分解放している状態でこれなのだ。 使わずに温存なんて真似をしていれば今頃は撃墜されていたはずだった。


 分身と本体の見分け自体は付く。 エーテルリアクター「ウァサ・イニクィタティス」。

 これはホロスコープの中に納まっているパンドラの上位互換だ。

 総合出力も上、そして何より変換機を噛ませていない事も併せてエーテルの変換効率が段違いだった。


 形成もそうだが、とにかく回転が速いのだ。 

 お陰で外から見れば簡単に判別ができるが、チェックに一秒弱必要だった。

 つまり視ないと真贋を判別できない。 ベリアルの狙いはそれだろう。


 シックスセンスを誤魔化すのは不可能。 なら手数を増やして処理の手間を増やせばいい。

 これまでに遭遇した敵相手に散々やられた手だ。 ベリアルが理解していない訳がない。

 対処法としてはドローンの破壊だ。 数には限りがあるはずなので単純に潰せば次からは使えない。


 その調子で減らせば最終的には本体が残る。 


 ――が、果たしてそんな時間はあるだろうか?


 アイロニー特製の冷却材を使っていない状態での稼働は機体にかなりの負担をかけており、まだ一分と少ししか経過していないのにダメージでフレームの強度が落ちているとエラーメッセージが無数にポップアップしていた。 1000%――完全開放は無理だ。

 

 この状態では15秒どころか10秒すら保たない。 

 加えてその状態での機体操作が難しい状態という事もあって安易に切れる札ではなかった。

 明確な勝算もない状態での博打は論外。 


 イチかバチかで何とかなるは、この戦いの趣旨からも外れる。

 この戦いはベリアルとヨシナリがこれまでに積み上げてきた物をぶつける場なのだ。

 実力以外の何かに縋るのはあってはならない。 


 ――なら、使うのはこのタイミングしかない。


 下がりながらアトルムをマウントしてクルックスのみで連射。 

 その間に注射器を首、脇腹に突き刺し、遠隔で起動。 

 充填された薬液が注入され、上昇していた機体内部の温度が急激に下がる。 


 そのまま高度を落として地上へ。 転移反応が追いかけて来る。

 アトルムとクルックスを――抜かずに機体を変形。 一気に加速して強引に振り切る。

 攻撃のタイミングを外した後で変形。 近くのビルに着地してアシンメトリーで一発。


 エーテルによって威力を引き上げられた弾がプセウドテイの分身の胴体――ドローンを正確に射抜く。

 

 ――と同時に目の前にベリアルが転移で現れた。


 背後にも反応はあるが、目の前に集中せざるを得ない。 

 何故なら本体だからだ。 背後の分身が足を狩る動き、目の前の本体が刺突。

 ヤバい。 エネルギーウイングを噴かして強引に機体を横に捻って蹴り。


 足元への一撃を躱しながら刺突を蹴りで打ち払い、接触と同時にクレイモアを起爆。

 転移で躱すかと思ったが躱さずにプセウドテイが僅かに膨らむ。  

 エーテルの密度を上げて防御を固めたのだ。 ベアリング弾がエーテルの装甲を貫通せずに止まる。

 

 だったらと機体を反転させて反対の足で蹴りを入れて再度、クレイモアを起爆。

 プセウドテイの上半身が吹き飛んだが撃破ではない。 中身がないのだ。 

 転移で他の分身と中身を入れ替えた。

 

 「クソッ!」


 背を向け、マウントしたイラを盾にするが、ベリアルは振り返った先に居た。

 爪による横薙ぎの一撃。 間に合えとイラを差し込む。

 防御自体は間に合ったが刃部分が巨大化した腕に掴まれる。 そして掴んだ指が僅かに波打つ。


 咄嗟にイラを手放し、倒れ込んでビルから飛び降りる。

 僅かに遅れて頭部を伸びたニードルが掠めた。 落ちながらアトルムとクルックスを連射。

 落下前に推進装置を全開にして距離を取る。


 ――余裕がない!


 少しは休ませてくれよと思いながらバースト射撃の連打で牽制。 

 基本的にベリアルは手数で圧倒する事で戦況を有利に持って行く。

 反射神経はふわわと同格で、正面からの打ち合いは難しいを通り越して自殺行為ですらある。


 彼がランク戦で非常に高い勝率を維持している理由でもあった。

 一対一ではとにかく強い。 弱点は火力を大きく上回る防御と反応――要は手数が通用しない相手と想定外の奇襲。

 意識の外側からの攻撃に対する脆弱性は彼の撃墜記録を見れば明らかだ。


 ただ、問題はあの反応のベリアルに対して奇襲を成立させられるかとなる。

 少なくとも個人戦では非常に難しいと言わざるを得ない。 

 

 ――それに――


 さっきからベリアルは無言。 それは口を開けないほどに集中している事を意味する。

 つまりはそれだけ本気なのだ。 彼は全力でヨシナリを潰しに来ていた。

 同格とはいえ機体の性能差は圧倒的だ。 人によっては大人気ないと判断するかもしれない。

 

 だが、ヨシナリはそうは思わなかった。 闇の王はそんな浅い考えで戦いを仕掛けない。

 彼はヨシナリの事を本気を出すに値する相手と判断していると解釈する。

 そう考えると堪らなく燃えるのだ。 ベリアルは負けるかもしれないと思っているからこそ全力。


 つまりそれだけヨシナリの事を評価しているのだ。 

 なら、それに応えなければならない。 勝敗以上に彼が用意したこの時間を最高の物にして見せよう。

 ちらりとステータスを確認。 まだ、冷却材の効果は残っている。


 1000%は事前の組み立てがないとまともに制御できない。 

 だが、500%ではベリアルを越えられない。 ならばどうする? 答えは一つしかなかった。  

 ホロスコープもそろそろ限界が近い。 そろそろ決着を付けよう。


 細いが勝ち筋はあるはずだった。

誤字報告いつもありがとうございます。


宣伝

パラダイム・パラサイト一~二巻発売中なので買って頂けると嬉しいです。

Kindle Unlimited、BOOKWALKERのサブスク対象にもなっていますのでよろしければ是非!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ガチってても間があれば喋ってるから、間を作らないように動いてるってことはそうする意味があるってことだと思うわ まあヨシナリに考える時間を与えるのは悪手っぽいし対応を飽和させるのはヨシナリ対策としては…
やっぱベリアルは強ぇなぁ あっという間にイラを奪われて追い込まれた エーテルの変幻自在っぷりが半端ないわ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ