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Aランクに昇格するとまず起こったのはメッセージ欄に大量の着信。
数字が凄まじい勢いで増え、最終的には「99+」と表示され開かないと計測不能となった。
「なんか見るの怖いな」
ヨシナリはそう呟いて開くとほぼ全ての件名がAランク昇格おめでとうございますからのウチで機体を作りませんかという案内だった。 うわと思いながら適当に開くと内容は「自分達はどこどこのエリアに拠点を持っている開発チームです。 良かったら使用するジェネシスフレームをウチで作りませんか?」といった物だった。
それにプラス実績――これまでに作った機体は開示できないらしいが、こんな感じの装備とコンセプトの機体を作ってますといった資料と大雑把な価格が添付されている。
それを見て思わず首を捻った。 選択肢が余りにも多いからだ。
インド、フランス、ロシア、日本、中国ととにかくエリアを跨いであちこちから売り込んで来ているといった印象だった。 ざっと見ていたのだが、どれも面白い。
インドは気象操作系の兵装が多く、フランスは光学兵器――特に反射に頼らない曲がるレーザーが面白い。 ロシアは更に面白く、フレームが人体を全く意識していない異形の構造をした形状が多かった。
特に可変機構は複雑で局地戦仕様のスペシャル機といった印象が強い。
エリアによって特徴が出ていおり、眺めているだけでも楽しめるがここから選ばなければならないというのはかなり難しかった。 ちなみに文末にはいつでもお待ちしていますと添えられている。
資料を眺めているだけでも永遠に時間を潰せそうだが、まずは方向性だけでも決めておかないとすっきりしない。 こういった場合は誰かに相談するのが良いのだが、問題は誰にするべきかだ。
真っ先に浮かんだのはユウヤ、ベリアルといったユニオンのメンバーだが、もっとフラットな意見が欲しい。 加えて確認したい事もあった。 そうなるとベストな選択肢は――
「――いや、ヨシナリ君。 君って奴は本当に大した度胸だよ」
タヂカラオは呆れた様子で呟いた。
場所は変わって「思金神」のユニオンホーム。
その中で最も背の高いビルに通され、長いエレベーターで上へと向かっていた。
「正直、こういった相談って関係値が低い人の方が素直な意見を貰えると思いまして」
「それでタカミムスビさんにアポを取ろうとするのは思いついてもできないよ」
「俺としてはダメ元だったんで、受けてくれるとは思いませんでしたよ」
そう、ヨシナリが相談相手として選んだのはタカミムスビだ。
彼の機体、アマノイワトのような複雑な機体を作った経緯にも興味があった事もあって彼が良いと思った事もあってタヂカラオに繋ぎを頼んだのだが、返事は即座だった。
10分も経たずに許可が下りるとは思わなかった事もあってこの状況にヨシナリ自身も驚いていたのだ。
「それはそうと、昇格おめでとう。 ようこそAランクへ。 歓迎するよ」
「はは、当たったらお手柔らかにお願いしますよ」
「それは約束できないなぁ。 ――っとそろそろ到着だ。 実を言うとタカミムスビさんの私室を見た事が無くてね。 僕もちょっと緊張しているんだ」
「あ、そうなんですか?」
「あぁ、ワンフロアぶち抜きで使っていると聞いているんだけ、ど……」
エレベーターが停止し、扉が開くとそこには想像の斜め上の光景が広がっていた。
混沌、カオス。 そんな単語が相応しい有様で足元は綺麗な赤絨毯。
壁にはよく分からない絵画や美術品が乱雑に並んでおり、天井からは何故か花や木々が生えている。
「し、照明機器が埋まってる。 タカミムスビさんはどう言うコンセプトでこんな配置にしたんだ?」
「正直、適当に並べたんじゃないですか?」
「段々とそう思えて来たな。 まぁ、足の踏み場はあるようだし、進むとしようか」
ふかふかの絨毯を踏みながら長い廊下を歩く。
「そう言えばタヂカラオさんはどうやって決めたんですか?」
「フレームの発注メーカーかい? 『思金神』の場合は事前にどこのエリアのメーカーがどんな機体を作っているのかのデータを集めているからね。 それを参考にしたよ」
聞けば「思金神」所属のランカーは全員、何処のメーカーに発注したのかを報告させているらしく、先達の機体に興味があるのなら同じメーカーに打診すればいいといった方針のようだ。
なるほどと頷く。 特にニニギを筆頭とした一軍の機体は人気が高く、昇格したプレイヤー達は真っ先に彼等の機体を手掛けたメーカーに打診するとの事。
話している間に突き当りのドアへ。
タヂカラオが軽くノックすると中から「どうぞ」と聞こえ、扉が自動で開く。
中は廊下以上に混沌としていた。
このフロアの約半分を占有しているであろうスペースの大半を様々な物が所狭しと並んでいる。
よく分からない置物に謎の植物。 とにかく統一感がなかった。
――その割には床とかのデザインはちゃんとしてるんだよなぁ。
背後は一面ガラス張りでこのユニオンホームを一望できる。
ただ、最低限の体裁は整えているのか出入り口への動線は確保されていた。
そして中央には巨大な執務机に高そうな椅子にタカミムスビが座っている。
「やぁ、ヨシナリ君。 君の方から会いに来てくれるなんて嬉しいよ」
「イベントの時は助かりました。 それと時間を取ってくれてありがとうございます」
「構わないさ。 ちょうど、息抜きが要るなと思っていたところだしね? ――さて、まずは昇格おめでとう。 これで我々と同格、つまりはライバル関係という訳だね」
「はは、ライバル認定してもらえるとは光栄ですよ。 それで――」
「分かっているとも。 ジェネシスフレームについての相談だね。 まずは基本的な話をしようか」
そう言ってウインドウを可視化。 表示されたのはタカミムスビの機体、アマノイワトの外観だ。
「私の機体――正確にはコア部分は日本のメーカーに作らせた。 以降、機体のアップグレードはここに任せる形になっているのだが、君が聞きたいのはそんな事じゃない。 気になっているのは二股をかけられるかだろう?」
その言葉にヨシナリは内心で息を呑む。 まさにその通りだったからだ。
メーカーによって明らかに強みと弱みがある。
それを解消するのに最も分かり易いのは複数のメーカーにパーツ単位で作らせる事だったからだ。
誤字報告いつもありがとうございます。
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