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整合性のチェック中――完了。
――あれ?
ぼんやりとした頭でヨシナリは考える。 思考が纏まらない。
一瞬前まで何をしていたんだろうかと考えているとそうだと思い出した。
確かあの巨大エネミーに致命傷を喰らわせたのは良かったのだが、逃げる前に撃墜されてしまったのだ。
バリバリと頭を掻く。
「あぁ、クソ。 アタックまでにモタついたのが良くなかったな」
後2秒。 いや、1秒余裕があれば離脱できたか?
「戻ったか」
そんな事を考えていると不意に声をかけられる。
振り返るとユウヤ、ベリアル、ホーコートの三人がいた。
今更になってここがユニオンホームである事に気が付いたのだ。
我ながらぼんやりしすぎだなと思いながら小さく笑って小さく手を上げる。
「はは、やられちまったよ。 そっちも大変だったみたいだな」
ベリアルは小さくすまんと目を伏せ。 ホーコートは申し訳ないと肩を落とす。
「早々にやられて悪かったな」
「話に聞いたけど広範囲で行動不能にしてきた上でゾンビ化した機体に襲われたんだろ。 あれじゃどうにもならないよ。 そんな事より、イラを使えるようにしてくれてたんだろ? お陰で助かったよ。 ありがとな」
「あぁ、拾ったのか。 だったらロックを外した甲斐はあったな」
映像を確認したい所ではあったが、イベントのリアルタイム映像は視聴不可だった
何もできないのは歯がゆいが、どちらにせよ日本サーバーの出番はあと一時間弱だ。
待っていれば残りのメンバーも帰ってくるだろう。
「一応、聞いときたいんだが、向こうで具体的に何があったんだ?」
ベリアルとユウヤは顔を見合わせる。
「……降下に成功した後、状況が掴めなかった事もあってお前らとの合流を優先するつもりだった」
ユウヤがぽつぽつと経緯を話し始めた。
例のガスで視界は最悪、前情報と違いすぎる環境に警戒しつつも三人はヨシナリ達の反応を頼りに南下。
途中、同様に南に向かっていた『豹変』や『大渦』と合流してかなりの大所帯になったが、問題はなかった。 偵察や情報把握に人数を避けるからだ。
「敵には出くわさなかったのか?」
「あぁ、最初はな」
比較的ではあるが、固まって降下した事もあって他との合流が早かったのも要因としては大きい。
特にシックスセンス持ちのポンポンは視界不良の環境下では非常に心強かった。
雲行きが怪しくなったのはその直後ぐらいだったらしい。
「アメリカの連中も見当たらなかった点からも怪しいってんで、全方位に斥候役を配置して様子を見ながら移動していた。 ――で、その内の一部がロスト。 調べに行ったんだが――」
そこでは『栄光』が寄生トルーパーの群れに襲われており、斥候はその戦闘に巻き込まれたらしい。
ユウヤとしてはカナタと合流するのは不本意だっただろうが、状況に不透明な部分が多すぎる事もあって参戦したのだ。
「――そこであれが出てきやがった」
地中から無数の球状の塊が飛び出し、空中で破裂。 周囲にニードルを撒き散らした。
命中した機体をスタンさせるそれを喰らってユウヤ達は行動不能。
咄嗟にガードはしたのだが、機体の何処に当たっても駄目だったらしく効果から免れる事は難しかった。
ただ、ポンポンのような物理的な防御力に優れた機体や斥力フィールド等の物理干渉に強い防御機構を積んだ機体は無事だった事もあっていきなり総崩れにはならなかったのだ。
行動を封じて来るだけならまだ立て直しは可能だった。
問題はそのニードルにあり、内部に寄生生物が封入されており、多少のタイムラグはあったがそのまま機体、アバターの順で制御を奪ってきたのだ。 後はヨシナリ達も経験した地獄絵図の始まりだった。
味方が敵になり、戦場は大混乱。 寄生されても識別は味方のまま。
アバターの制御を奪われれば喋る事も出来ずにそのまま味方に襲い掛かる事になる。
「アバターの制御を奪われた時点で脱落扱いらしく、俺はそこまでだった」
「奴らは我らの尊厳を踏み躙り、その姿を力を簒奪せんとする醜悪な亡者。 だが、見た目では見分けが付かぬ事もあり、戦場は混沌を極めた」
引き継いだベリアルの話ではそんな状態にも関わらず生き残ったメンバーは良く戦ったが最終的に全滅となったようだ。
ヨシナリとしては責める事はとてもではないができなかった。
あの状況で敵の奇襲、寄生された味方機への対処の同時処理はベリアル達でも難しかっただろう。
最終的には敵の波に呑まれ寄生されてしまったという訳だ。
ほぼ確認作業でしかなかったが、反省するべき点、改善するべき点は多い。
ヨシナリは自分達の動きについて話しながら考えていた。
まずは反省点。 突発的だったとはいえ、後手に回らされた事は失敗だった。
今後はもう少し情報収集に力を入れるべきだろう。 霧ヶ峰からの報酬もある。
それを使えば改善は見込める。 二つ目、何が足りなかったのか?
単純に火力だ。 ホロスコープは対人を意識した造りという事もあって対エネミーに対しては火力不足という脆さが露呈した結果となった。 大火力が必要な場面ではパンドラを使用すれば事足りると思っていた事もあってあまり力を入れてこなかったツケが回って来た結果といえる。
アイロニーから手に入れた例の薬剤のお陰でパンドラの完全開放が使用可能になった事もあって戦闘能力の上限まで扱えることは可能となったが、結局の所はキマイラフレームの限界を超えられない以上はこれ以上の伸び代はない。 前から分かっていた事だが、そろそろ機体の強化に限界を感じている。
伸ばすのはプレイヤースキルを重点的にするしかない。
特に近距離戦での立ち回りは見直す必要があった。
元々、重量のある大剣イラと高機動戦機であるホロスコープの相性は余り良くない。
足のクレイモアも使い捨てである以上はもう少し使い方を工夫する必要があった。
今はアトルムとクルックスで補っているがハンドガンである以上は火力面ではやや心許ない。
プレイヤーが相手であった場合、何の問題もないのだがエネミー相手では厳しいと感じていた。
現状、武器を変えるという選択肢がない以上は動き自体の精度を上げなければならない。
――難しいな。
そしてそれ以上に途中脱落という結果が悔しかった。
誤魔化すようにヨシナリはさっきまでの経験を語る事に力を入れる。
こうしてやや不本意な結果となったが、初のワールドレイドは終わりを迎えた。
誤字報告いつもありがとうございます。
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