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胸部の吸排気口から収束されたエーテルが吐き出され、エネミーを内部から焼き払うが凄まじい勢いでエラーメッセージがポップアップする。
内容は吸排気口が使い物にならなくなったという物だ。
全開でやると即座にダメになるなと思いながら更に照射。
パンドラの全力稼働から10秒経過。
そろそろ切らないと不味いが、エネミーの反応はまだ残っている。
もう少しやらないとだめだ――というよりは機体の各所に繊維のような物が無数に張り付いており動けない。
エネミーの中心の大部分を焼き払った以上、最低限の仕事は果たした。
パンドラは元気にエネルギーを供給し、ホロスコープはそれに耐えきれずにもうボロボロだ。
実を言うとエーテルの鎧の中で手足は溶けており、足の推力偏向ノズルに至っては何の反応も返ってこない。
それでも推進力を維持できているのは強引にエーテルを流し込んで吐き出させているからだ。
パンドラの凄まじい点なのだが、このジェネレーターはエーテルを通す為の経路と吐き出す為の穴さえ開いていれば推進装置として機能させる事もできる。
12秒経過。 もう手段を選んでいられない。 ヨシナリは全身の穴という穴からエーテル噴出させ、強引に拘束を振り払うと加速。 敵の体内からの脱出を図る。
――中心部はほぼほぼ破壊した。 後は外から崩せば増援が来るまでに片は付く。
これで霧ヶ峰との約束は果たした。 後は自分が生き残る事だけだ。
凄まじい数のエラーメッセージを無視して機体を操作。
二本のイラを全力稼働して掘りながらそのまま突き抜ける。
「よし、後はこのまま離脱するだけ――」
ヨシナリの言葉は抜けた先に待っていた物の所為で最後まで紡がれなかった。
奇妙なものが無数に浮かんでいる。 形状は十二面サイコロを思わせる複雑なものだった。
恐らくは外殻が変形した物だろうが何でこんな代物が浮いているのかがさっぱり分からない。
背後でエネルギーの収束。 レーザーが飛んでくる。
分からないのは不気味だが構っていられない。
早く安全圏に離脱してパンドラを解除しなければ不味いからだ。
後2秒しかない。 急げ急げ急げ。 レーザー発射。
今のホロスコープなら余裕で躱せる。 焦りが止まらない。 急げ急げ急げ。
そんな中、待てと思考に疑問が生まれる。 外殻の用途は防御というよりは攻撃だ。 ならアレは――
混乱した思考が自動的に答えを導き出した。 あの十二面体はまさか反射板じゃないのか?
大正解。 レーザーを受けた十二面体は花のように咲いた。
正確にはそう見えただけで全面から収束されたレーザーが放たれたのだ。
十二面体は機雷のように無数に配置されており、物理的に逃げ場がなかった。
咄嗟にエーテルの密度を上げて防御しようとしたが、機体の方が保たなかったようだ。
「クソッ! 最後の最後っで俺って奴は――」
パンドラのエネルギー流動に耐えられなかったホロスコープは内側から膨れ上がるように爆散し、残骸はレーザーによって貫かれ跡形もなく吹き飛んだ。
「ヨシナリ! あぁもう、無茶するから……」
離脱を測ろうとして失敗し、空中で爆散した相棒の機体を見てマルメルは小さく声を漏らす。
だが、ヨシナリの無茶は無駄ではなかったらしく、敵のコアがボロボロと崩れていく。
内部を滅茶苦茶に破壊された事で機能を維持できなくなったのだ。
残骸が浮力を失ってバラバラと落下していく。 マルメルは小さく溜息を吐く。
ヨシナリが居なくなった以上は判断は独自で行う事になる。
――あいつは自分がリーダーだって自覚した方がいいぞ。
「グロウモスさん。 ここはもう片づくっぽいんで次に行こうと思うんすけどどう思います?」
「……いいと思う。 どうするの?」
間があったが、グロウモスはマルメルと足並みを揃える事に賛成のようだ。
内心で助かると思いながらどう動くかを考える。 戦力は自分とグロウモスだけなのは不味い。
そうなると選択肢は自然と絞られる。
「ふわわさん達と合流しようと思うんすけどいいっすかね?」
「分かった」
方針が決まったら後は行動だ。
一応、挨拶だけはしておこうと少し離れた位置に居た霧ヶ峰に声をかける。
「敵も片付いたし、ヨシナリも落ちたんで俺達はこれで失礼します」
『はい、ご協力ありがとうございました。 ヨシナリさんにもよろしくお伝えください』
マルメルはうっすとだけ答えて通信を切断。 そのまま移動を開始する。
ふわわの居場所に関しては直ぐに分かった。 レーダー表示の外だったとしてもユニオンメンバーは大雑把な居場所は分かるようになっているからだ。
方角さえ分かればふわわの居場所を特定するのは容易だった。
何故なら視線の先には全長1キロぐらいはありそうな巨人みたいな個体が居たからだ。
――アレと戦ってるんだろうなぁ……
マルメルは嫌だなぁと思いながら機体を加速させる。
周囲をぐるりと見回すと他も大概酷い事になっていた。 降下に成功した敵のコアは五つ。
一つは撃破したので残りは四つだが。
それがフィールドに侵入したと同時に独自の形態へと変化したらしい。
何処を見ても逃げ出したくなるほどの地獄絵図が広がっている。
球体状で周囲に無数の鉱物で作った帯のような物が回っており、大地に向けて隕石の雨を降らしている個体。
植物のように根を張って周囲の機体やエネミーの残骸を取り込んでどこまでも高く太くなっていく個体。
ここからではよく見えないが無数の爆発が起こっている事から大規模な攻撃をばら撒いているであろう個体。
――ヤバすぎる。
今に始まった事ではないが、マルメルに言わせると今回のイベントは最初から割とグダグダだった。
途中参加という事もあったが、状況がある程度進んだ状態での参戦という事もあって何が起こったのかを掴む所から始まるのも後手に回らされている感じがして気持ちが悪いと感じていたのだ。
ちらりと視界の端に表示されている時刻表示に意識を向ける。
増援到着まであと数秒となっていた。 そしてカウントがゼロになる。
――同時に遥か上空に無数の反応。
降下カプセル。 数が多すぎて正確な数が不明だ。
これが敵であったなら絶望感が凄まじいが、今回は味方である以上は助かったという思いが強い。
地上の状況をいち早く察知したプレイヤー達は空中でカプセルを展開。
そのまま空中に飛び出していた。
識別はフランス。 最後に参戦するプレイヤー達が戦場へと舞い降りたのだ。
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