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――妙な話だった。
さっきまで戦っていた相手は寄生によって機体のコントロールを奪って来たにも関わらずこちらは光学兵器によるゴリ押し。 反応を見る限り例のワームのような何かの集合体。
同じ規格にも関わらずここまで性質に差異が出るのは不思議だ。
何故だろうか? 疑問が脳裏で渦を巻く。
このゲームの性質上、分からない事を分からないままにしておくと後で痛い目に遭う。
地上に居た個体と目の前の個体。 違いは何か? それが挙動の差異を決めた要因だ。
――まぁ、後から来た事だろうな。
ぱっと出て来る理由はそれだ。
寄生トルーパーを操っていた敵は徐々に学習していた事を考えると可能性としては高い。
情報の同期が出来ていない事もあってデフォルトで設定されている攻撃手段しか使えないと考えれば自然か。
恐らくはこのまま戦闘を継続すると学習によって戦い方のバリエーションを増やしていく。
そう考えるとロックオンからのレーザー攻撃を執拗に行っている事にも説明が付く。
――裏を返すとここから状況に合わせて攻撃手段を変えて来るって事なんだよなぁ……。
次に考えるのは味方に付いてだ。 あのイソギンチャク――ベヒモスについて。
何で救援要請したら味方面して現れたのかは不明だが、この状況では非常にありがたい。
加えて挙動からNPCではなく中の人がいる。
例の反射板を大量展開し、プレイヤーを守りつつコアの外殻を剥がす挙動から上手に扱えている。
ただ、挙動に固さがある点から防衛戦に現れた時の中身に比べるといくらか劣るといった所だろうか。
反射を防御にしか使わず、主砲をチャージして抉りに行く辺り反射板を活かした複雑な攻撃は難しいようだ。
このまま行けば仕留める事は可能だが、果たして簡単に処理させてくれるだろうか?
相手に学習能力があるのならこんな所で終わる訳がない。
外殻が急速組み変わり、ベヒモスに向けて形を変えていく。
長大なそれはどう見ても砲身だった。 当然、プレイヤー達も黙って撃たせる訳もなく攻撃を集中。
エネルギーが収束している。 なるほど、レーザーを高威力で撃ち出す為に最適な形を取ったのか。
ベヒモスも応じるように主砲のチャージを完了。 敵のコアへと向ける。
撃ち合うつもりのようだ。 観測されたエネルギー量で考えるならあまり分は良くない。
先に撃たないとやられてしまいそうだ。 だからといってあの巨体では躱せない。
つまりベヒモスは正面から撃ち合う事で勝負するしかないのだ。
この状況でやられるのは不味いがどうすれば――
『マーキングしました。 可能な者はここを狙いなさい!』
不意に敵の砲身の一点がマーキングされる。 恐らくは構造的に脆い部分だろう。
真っ先に撃ち込んだのは声の主だ。 振り返ると特徴的な機体――霧ヶ峰だった。
彼女はレールキャノンを撃ち込み、分かり易く砲身に傷をつける。
これは分かり易いとヨシナリもアシンメトリーを撃ち込み、それに続くように次々とプレイヤー達が集中砲火を浴びせていく。 元々、実体弾の通りは良かった事もあり、霧ヶ峰が開けた傷口が一気に広がり、砲身が半ばで砕けて内部が露出。
砕け散らなかったのはあの砲身自体が重力制御の類で空中に保持されているからだろう。
エネミーは構わずに発射するつもりのようだが、レーザーを収束させる為の砲身が不完全な以上はまともに威力を発揮できない。 射線からベヒモスの反射板が居なくなり両者のエネルギー充填が完了。
――発射。
ベヒモスのレーザーは真っ直ぐコアへと向かい、エネミーの放ったレーザーは砕けた砲身から拡散してまともに収束せずに飛び散るように周囲に降り注ぐが展開された反射板がプレイヤー達を守る。
両者の放ったレーザーは衝突を起こしまるで花火か何かのように光が周囲に飛び散り、触れた物を破壊していく。
大地が抉れ、反射板が防いでいたが、熱量に耐え切れなかったのか一部が溶けて破壊される。
ヨシナリも咄嗟に近くの反射板の裏に逃げ込んだが、あまりの光量に目が眩みそうだった。
光が収まって視界が戻った事で撃ち合いの結果が出たが、規模の割には被害がそこまで出なかったのはベヒモスが上手く守ったからだろう。
ただ、肝心のベヒモスはそうも行かなかったようだ。
反射板は半数以上が溶け落ち、本体の表面も熱でかなりやられていた。
これはプレイヤーを守る事に注力して自機を守らなかったからだろう。
何度か戦った事もあってベヒモスの防御力は知っていたが、あの重装甲をここまで痛めつけられるのは凄まじい。
どうやら性能自体は敵の頃からの据え置きらしく、表面装甲が脱落しイソギンチャクからウツボへと姿を変えた。 胴体部分から無数の反射用のドローンをばら撒き、レーザーでの攻撃を開始。
お返しと言わんばかりにコア本体にレーザーを叩きこむ。
流石のエネミーもあの規模の攻撃は連発できないのか通常のレーザーで応射。
空中で派手な撃ち合いが始まった。
「これ、どうすりゃいいんだ?」
あまりにも規模の違う戦いに完全に傍観者となってしまったヨシナリは思わず呟く。
『手ならありますよ』
独り言のつもりだったが応える声があった。 霧ヶ峰だ。
「どうもです。 地下は片付きそうですか?」
『中々に苦戦していますが、タカミムスビさんとニニギが居るのでどうとでもなるでしょう。 私は空中戦が得意ではないので一足先に戻って来たという訳です。 ――それにしても少し見ない間に凄い事になっていますね。 あれはヨシナリさんが呼び出したのですか?』
「はい、NPCを助けた時に貰ったフレアガンを撃ち込んだら転移で現れました」
口振りから途中から見ていたなと察しながらそう答える。
『なるほど。 どうやらNPCが配っているアイテムで呼べる友軍といった所でしょう。 アメリカ第三が使わなかったのはNPCの参戦タイミングの関係で配布が間に合わなかったのか……』
霧ヶ峰は少し考察していたが、すぐに我に返ったのか視線はエネミーへ。
『さて、お喋りは後にして具体的な話をしましょう。 次のサーバーが援軍に来るまでまだ15分ほどあります。 あのウツボを援護するのがベストではありませんがベターな選択肢です。 まぁ、この様子だと負ける可能性が高い。 そこであのコアを我々で仕留める方法を模索しようと思うのですがどうでしょうか?』
誤字報告いつもありがとうございます。
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