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このまま行くと全滅が先になりそうだ。 敵の攻撃に対して味方の反応が鈍い。
ここまで生き残っている面子は攻撃の性質は理解しているはずだ。
それでも次々と落とされているのは攻撃と回避への意識の割り振りが上手くいっていない事と大群相手に蓄積している疲労もあるからだろう。
集中力が維持できていないのだ。
分かり易い弱点でもあれば撃破が意識できて良いのだが、コアの構成を見る限り難しい。
細かな神経が回路のような複雑な構造体を形成しており、それ故に中心部分を破壊すれば復旧にリソースを割かざるを得ずに撃破に大きく一歩近づくのだろうが、そもそも巨体過ぎて中心に攻撃を届かせようとするなら外から削って掘らなければならない。
これだけ多種多様な攻撃を撃ち込んでいるのを見ている事もあって何が効果的なのかも見えて来た。
まず、実体弾。 これは一番効果が薄い。 単純にエネルギー量が足りないからだ。
外殻に対しては効果的ではあるのだが、コアに届いても僅かに削るだけでなくそのまま分解されて外殻の素材に使われる。
総合的に考えると割に合わない。
次にエネルギー弾、レーザーなどの光学兵器。 コアに対しては実体弾に比べると効果はある。
ただ、外殻はレーザーをばら撒くだけあって通りが悪い。 発射後の脆くなった所を狙えば貫通は可能ではあるが、減衰して威力が落ちる。
ただ、外殻は網目状なので隙間を通して直接狙う事は可能ではあったが、敵の攻撃を捌きながらという事もあって常にコアだけを狙い撃つなんて真似は難しい。
――近寄りたがる奴の気持ちも分かるんだよなぁ……。
外殻が邪魔で狙いが付け辛い。 網目という構造も嫌らしい。
微妙に通せる構造なので命中率を上げる為に近寄りたくなる。
そして実行すると絡め取られてやられてしまうという訳だ。
「ヨシナリ! 待たせたなぁ!」
通信から飛び込んで来た声に振り返るとマルメルのアウグストがこちらに向かって来ていた。
装備構成は大きく変わっており、両肩にはプラズマキャノンと強引に据え付けられたジェネレーター。
強化装甲は部分的に剥がされており、代わりにミサイルポッドが取り付けられていた。
腕も変わりがくっついている。
携行武装も銃身の長いレーザー砲でケーブルが背面の外付けジェネレーターに伸びていた。
「早かったな!」
「おう、なんか生き残っていたNPCっぽいアバターが頑張ってくれたぜ!」
マルメルの話では爆発でかなりの数がやられていたようだが、生き残ったNPC達が凄まじい手腕で修理と補給を行っているらしい。
「拠点の方は大丈夫そうか?」
「そっちはあのデカブツが直接来ない限りは大丈夫だと思う」
聞けば例のチート装備のオビディエンスフレームが防衛に付いているらしい。
散発的に襲って来るエネミーを追い払っているようだ。
大挙して襲ってこないのは各地で大型エネミー相手にプレイヤー達が奮戦している事もあって敵はそちらの対処へとリソースを割いているからだ。
――NPC?
そう言えばと思い出した事があった。 確かNPCを助けた時に貰った物があったはずだ。
フレアガン。 貰ってから存在をすっかり忘れていた。
撃ち込んだら何が起こるのかは分からないが、この状況だ。 もしかしたら打開の一助になるかもしれない。
それにこれ以上、悪くなりようがないのだ。 抱えたまま脱落するよりは使うべきだろう。
ヨシナリはフレアガンを空に向けて発射。
パンと弾けるような銃声と共に真っ赤な光の弾が空へと放物線を描いて飛んでいく。
「あぁ、そう言えば貰ってたな。 何か起こるのか?」
今の所、何も起こらない。 使い方を間違えたか?
やっちまったかなと思った所でセンサー系に反応。 転移反応だ。
それもかなり大きい。 それも100mクラス。 何だ? 何かが空間転移して来る。
姿を現した物は凄まじい数のレーザーを放ち、敵の防御を文字通り抉り取った。
「――は?」
「いや、えぇ? マジっすか?」
ヨシナリは思わず声を漏らし、マルメルもうっそだろと呟く。
周囲のプレイヤー達も困惑の声を上げる。 何故なら現れた物は見覚えがあり過ぎるからだ。
太い巨大な筒状の体躯に頂点に巨大な穴とそれを囲むような触手にも似たアーム。
最初の防衛戦から時折、現れてはプレイヤー達散々苦しめたあのイソギンチャク型の大型エネミーだったからだ。
しかも識別は「友軍」だ。 え? こいつ味方なのか??
イソギンチャク型――友軍認定された事で名称が表示されており「ベヒモス」と記されていた。
ベヒモスは装甲を分離させ反射板を大量展開。 敵の雨のようなレーザーを次々と跳ね返す。
展開範囲がかなりの広範囲に及び、明らかにプレイヤー達を守る動きだった。
『マジかよ! ここでこいつ使わせてくれんのかよ!?』
『ありがてぇ……。 マジでありがてぇ……』『何か知らんが助けてくれるっぽいし盾にしろ!』
あちこちから歓喜の声が上がる。 ヨシナリも同じ気持ちだった。
このタイミングでベヒモスの参戦は非常にありがたい。
あの機体は攻防両面であのエネミーに対して非常に有効だからだ。
ベヒモス内部でエネルギーが収束。 主砲を使う気だ。
十数秒のチャージ時間を経て発射。 ズンと地面が縦に揺れ、レーザーというには規模が桁違いのそれが外殻を一瞬で蒸発させて大穴を開け、敵のコアを目に見えて分かり易く抉り取る。
『穴が開いたぞ! 押し込め! 押し込め!』『うおおおおお! 勝てる! 勝てるぞ!』
プレイヤー達はここぞとばかりに傷口を広げに行く。
ヨシナリもそれに便乗しつつも少し興奮してきた。 ここまで明確な勝ち筋が現れるとは思わなかったからだ。 運営はどうしたのだろうか?
唐突な優しさに困惑もあったが、ここは素直にありがたいと思っておくべきだろう。
ここはベヒモスを援護し、主砲発射を繰り返させてコアの中心部分を露出させて仕留めるのが良い。
エネミーは不味いと判断したのか外殻の形状が変化。 網目状なのは変わらないが破損個所を塞ぐようにその部分だけ網目が消えた。 明らかに守りに入っている。
――流れ的には雑魚を繰り出してこちらの気勢を削ぐか?
傾向的に可能性は低い。 ロックオン性能が高い光学兵器を多用している以上、誤射をしない事に関しては非常に高いパフォーマンスを発揮するはずだ。
それをやらないという事は出来ない可能性が高かった。
誤字報告いつもありがとうございます。
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