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まずは目の前のダイソンスフィアみたいな化け物の処理だ。
形状は球体。 直径500mのコアにそれを囲むように鉱物で編まれた網状の外殻。
レーザーは網から放たれている。
シックスセンスでスキャニングするとエネルギーの流れがよく分かった。
コアから放射されたエネルギーを外殻が吸収し、一定量溜まれば吐き出す。
こちらをロックオンできるのは相手もこちらのエネルギー反応を何らかの手段で探知しているからだろう。 コンテナが狙われなかった理由はそこにあると見ていた。
あの支援用のコンテナは敵に発見されづらくされる為か、内部の状況が外に漏れないような構造になっていた。 つまり動いてさえいなければその辺の木石と変わらない。
だから敵はターゲットにしなかったと見れば筋は通る。
レーザーに関しても変に反射したり曲がったりしない事もあってロックオンに反応さえできたら防御はそこまで難しくない。 何故ならロックされた場所へ素直に飛んでくるからだ。
だからこそふわわもあっさりと防げたのだろう。 次にレーザーの連射速度だ。
大体、2~3秒の照射で約5秒近くのクールタイムが存在する。
理由に関しても分かる。 外殻がそれ以上の照射に耐えられないのだ。
実際には溶けて使い物にならなくなっているのだろうがその都度補修している。
次に本体について。 ここまでの戦いであの生物と呼べるか怪しい連中の特性は掴めた。
こいつ等はイトミミズのような細い繊維のような生物で小さい時はほぼ無害ではあるが、自己増殖する機能と互いを組み合わせてある種の回路のような物を形成して知性に近い物を獲得するのだろう。
つまりデカければデカいほどに賢く強い。
根拠としてはプレイヤーから奪った機体とアバターでの挙動。
最初はアバターから吸い出したのであろう模倣した動きしかしてなかったが、最終的には『踏襲』と呼べるほどに最適化が進んでいた。 真似ではなくもはや進化の域だ。
単なるルーチンで動くエネミーと判断するのは論外といえる。
最後に攻略法だが、撃破自体は不可能ではない。
――あくまで理屈の上では、だ。
戦術核で消し飛ばせたのだ。 耐久力を超える熱量で焼き払えば処理は可能なはずだった。
ただ、問題は核兵器で何とか消し飛ばせたような化け物を焼き払う火力がヨシナリ達にはない事だ。
一足飛びに撃破を狙うのは現実的ではない。 そう、一足飛びでなければ撃破は可能なのだ。
「つまりどういう事?」
ふわわが首を傾げる。
「あいつは攻撃と外殻の維持に結構な量のエネルギーを吐き出しています。 つまりは使わせ続ければ勝手に萎んでいくはずです」
「でも、増えるんやろ?」
「はい、増えます。 つまりエネルギー蓄積の最大値が増え続けるという訳ですね」
「それやったらあかんのと違うん?」
「このままだとだめですね。 ですが、外殻を破壊して修復にエネルギーを使わせ続ければどうです?」
つまりは増殖速度を超えるダメージを与えて削るしかない。
一番いいのは直接叩く事だが、下手に近寄ると機体を奪われかねない事もあって遠くから削るのが堅実な手段ではあった。
「話は分かったけどそれやったらウチは相性悪いなぁ。 ――なら、あっちの方がえぇかな?」
振り返ると遠くで爆発音。 降下した他のコアが形を形成して戦闘を開始したのだ。
中でも一際目立つ物があった。 人型だが、全身がガスのような物に覆われておりシルエットしか見えない。 加えて周囲を隕石群が輪のように高速で周回している。
距離がある所為で見えないが、それぞれが独自の形態をとっているようだ。
確かに形状的にふわわはああいったタイプの方が相性はいい。
「分かりました。 未知数の相手です。 油断はしないように」
「やねー。 ヨシナリ君も頑張るんやよー。 妹も連れて行くけど大丈夫」
「えぇ、問題ありません。 お気をつけて」
離脱するふわわを見送り、残った『星座盤』のメンバーはヨシナリ、マルメル、グロウモスの三人だ。
マルメルは補給中なので実質二人。 後は生き残ったプレイヤー達が散発的に攻撃を繰り返している。
「さて、グロウモスさん。 頑張りましょうか」
「ふ、フヒッ、よ、ヨシナリは私が守る!」
「よ、よろしくお願いします。 頼りにしてますよ」
グロウモスはプヒプヒと奇妙な鳴き声のような何かを漏らしていたが、きっと任せておけといいたいのだろう。 そう解釈したヨシナリは間合いを詰めるべく上昇。
最低限、アシンメトリーの射程内に居ないと話にならない。 ロックオン警告。
ホーミング性能はない。
何処から飛んでくるのかとエネルギーの収束のタイミングを見極めれば躱す事は難しくはなかった。
エネルギーウイングを噴かして横旋回。 回避と同時に応射。
一部落とされている機体を見る限り、あまり早く回避行動に入ると修正して来る。
コツは引きつけてからだ。 相手は巨大なのであまりしっかり狙わなくても良いのはありがたい。
回避に意識を集中できるからだ。 躱して応射。 エネルギー弾、実体弾、どちらも一定の効果はある。
網目に命中すると簡単に千切れ飛ぶ。 エネミーは破損個所を即座に修復。
レーザーを躱しながら機体の高度を意識する。 いつの間にか徐々に上昇しているからだ。
理由はエネミーが損傷を補填する際にその辺から材料を引き寄せており、それに機体が引っ張られる。
放置するといつの間にか近寄り過ぎてやられるなんて事も充分にあった。
加えて徐々に降下してきている事もあって間合いの調節は重要だ。
『うおおおお! くたばれ化け物がよぉ!』
『よし、効いてる効いてるぞ!』『ブレードで切り刻んでやる!』
『あんまり迂闊に近づくな! 取り込まれるぞ!』『ここで倒してツミキが英雄に――』
並行して通信から垂れ流される音声にも耳を傾ける。 何か重要な情報が手に入るかもしれないからだ。
数が居る分、試行内容も多岐に渡る。 突っ込んで接近戦を試みる勇者もいるのだ。
結果、どうなるのかは知っておきたい。 生き残ったプレイヤーの大半は距離を維持して削りに行っていたのはコア本体に対して攻撃が余り有効ではないと判断したからだろう。
直接叩きに行ったプレイヤーの機体はエネミーのコアから伸びる神経に絡め取られ、機体が分解され外殻の一部へと変えられる。
――これは長期戦になるか?
誤字報告いつもありがとうございます。
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