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ついて行くのは簡単だ。
だが、今のヨシナリにタカミムスビを出し抜いて敵のコアを処理できるのかは非常に怪しい。
単純に破壊する為の手段がないのだ。 イラがあれば可能であったかもしれないが、あのコアの特性を考えれば長時間の接触は危険すぎる。
パンドラを完全開放すればやれるかもしれないが確実に脱落する以上は安易に切れないカードだ。
どちらにせよ降下は必要だった。 タカミムスビ達の背を追いながら考える。
ガスの雲を抜けて地表が見えて来た。 こちらではまだ交戦は続いていたが、この巨人を生み出す為にかなりのリソースを使ったのか、エネミーの数は目に見えて減っていた。
『――ところでヨシナリ君。 君はどうするつもりだい?』
不意にタカミムスビがそんな事を訊ねて来た。 質問の意図は分かっている。
暗についてくるつもりかと聞いているのだ。
「…………いえ、地上で落ちて来る連中の迎撃に入ります」
絞り出すようにそう口にする。 どちらにせよ、行った所であのメンバーに混ざっても消えるだけだ。
何もできない。 さっきのタカミムスビの戦いを眺めているだけしかできなかった今のヨシナリでは無理だ。 少なくとも今は。
『正しい判断だ。 来た所で今の君には何もできない。 できたとしても無駄死にぐらいだろうね。 だから、地上で頑張りたまえ。 ――それに見た物を咀嚼する時間も必要だろう? 折角、見せたんだ。 最大限、有効に活用したまえよ』
何処までも見透かした態度は非常に不愉快だったが、その通りだった事もあって黙って頷くしかなかった。 隕石――正確には敵の大型コアだが――の到達まで数分もない。
地上の防衛を担う役は必要だった。
「ええの? ――というかヨシナリ君が素直に頷くのは意外やってんけど?」
「はい、俺があのレベルに付いて行くにはまだ早い」
そう、まだだ。 腹が立って仕方がないが、今は積む為の時間が必要だった。
「ふーん? まぁ、ヨシナリ君がええんやったらええんと違う?」
ふわわは離れていくタカミムスビ達をじっと見ながらそんな事を言っていたが、彼女なりに思う所があったのかもしれない。
地底のコアに関しては譲ったが降下して来る大型コアに関してはこちらで対応するのだ。
やる事、やれる事はまだまだある。 次のサーバーのプレイヤーが来るまでに数を減らしておきたい。
「流石に速いな。 もう来たのか」
巨大な塊が減速しながらこちらに寄って来る。
狙うのはこちらの攻撃範囲に入ったタイミング。 剥き出しの状態で仕留めに行く。
接近戦は危険。 とにかく飛び道具で削る。 そんな事を考えていたのだが、接近に呼応するように抜け殻として直立していた巨人が動き出した。
――そう来たか。
干渉できる範囲は限られているのだろうが、加工済みの材料があるのだ。
使わない訳がなかった。
巨人の巨体がほどけて帯のようになりながら巨大なコアに纏わりつくようにその周囲を覆う。
飛行している機体はその変化に気付き、銃撃を繰り返しているが碌に効果が出ていない。
その間に他の巨大コアは地表へと降下――する前に三つが空中で爆散。
距離があった事もあって詳細は不明だが、爆発の規模を見ればライランドが使った戦術核兵器の類である事が分かった。
――恐らくはタカミムスビの仕業だろう。
自分を含めて主力を地下に送り込むのはおかしいと思ったのだが、対策は練っていたようだ。
地表から凄まじいエネルギー反応の大型ミサイルが次々と打ち上がっている。
いつの間にこんな物を用意したんだと尋ねたくなるが、ここは周到さに助けられたと思っておこう。
接近していた10のコアの内、半数は迎撃に成功したが、残りは降下に成功。
周囲の鉱物等を取り込んで凄まじい勢いで形を形成していく。
コアの直径は約500m。 エネルギー反応は計測不能。
コアは全て素材を帯状に形成して網の目のように自己を取り囲む。
既視感のある見た目だったので、何だったかと記憶を掘り起こすと一つの単語が頭に浮かんだ。
「ダイソンスフィア?」
恒星を人工物で覆う事でそこから発せられるエネルギーを余す事なく利用しようといったスペースコロニーの完成形の一つと言われている代物だ。
放出するエネルギーを吸収して帯自体が発光。 明らかにエネルギーを溜め込んでいる。
「いや、これヤバいんじゃ――」
同時にロックオン警告。 ロックオン警告!?
明らかに独自の生態を持った有機生命体がロックオン?
突っ込みどころが満載だったが、ヨシナリは咄嗟に機体を変形させてバレルロール。
太陽のように光る球体から無数のレーザーが放たれる。
回避が間に合った事で撃墜は免れたが、レーダー表示から味方がごっそりと減った。
正確にはレーザーではなく、未知のエネルギーを収束させた何からしいが光学兵器である事には変わりない。
「皆、無事ですか!?」
「ウチは大丈夫やでー。 あー、でも何回も受けたら小太刀があかんようになるなぁ」
ふわわは無傷。
いつの間にか小太刀を抜いており、表面が僅かに溶けていたのを見て背筋が冷えた。
まさか切り払ったのか?
「何とか無事だけど片腕やられちまった」
「こっちは四肢は無事ですがエネルギーウイングが不調です」
「だ、大丈夫」
そんな恐ろしい想像をしている間に生き残っているメンバーからの生存報告が届く。
「マルメル、シニフィエ、戦えそうか?」
「悪い。 ちょっと厳しいかもしれねぇ。 腕と一緒にリトル・クロコダイルもやられちまったし、どっかで腕を何とかしたいな」
「地表を見る限り、拠点のコンテナ群は無事みたいなのでそこまで下がって修理と補給を受けるのはどうでしょう」
シニフィエに言われて地表にフォーカスすると例のコンテナを集めて作った拠点は無傷ではないが、設備はまだ生きてそうだった。
恐らくはロックオンの対象にならずに流れ弾が当たっただけなのだろう。
「よし、二人はそのまま下がって機体の修理と補給を。 後、できるなら武器も持って来てくれ」
「分かった。 なるべく早く戻るからよ!」
「少しの間、お願いします」
二人が下がるのを確認し、空を見上げると巨大な太陽のようなコアが輝きを放っている。
ふわわは隣。 グロウモスは地上でコアを狙っていた。
他の生き残った機体もコアを仕留めるべく次々と高度を上げていく。
――次から次へと忙しいな。
誤字報告いつもありがとうございます。
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