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集中砲火に晒された敵機が瞬く間に穴だらけになるが、コアだけは損傷が少ない。
流石に硬く、簡単には行かないようだが――不意に敵機が身を捻って回避。
他の被弾を無視してそれだけは躱したのだ。
霧ヶ峰、グロウモスの狙撃とマルメルのハンドレールキャノン。
――あぁ、なるほど。 あれは通るのか。
『量よりも質を取った判断は悪くないが、我々を相手にするには悪手だったようだね』
タカミムスビがとどめを刺しに行くが敵機は簡単には諦めないのか抜け殻が急速にボロボロと崩れ出し、パーツがコアへと集まっていく。 即座に推進装置を作り出すと加速。
数秒でここまで容易に立て直せるのは凄まじい。 ヨシナリも逃がさないと言わんばかりにアシンメトリーで狙うが当たっても弾かれる。 明らかに威力が足りていなかった。
それでも削れはするので無駄にならないと判断したのか弾幕は途切れない。
集めたパーツか端から破壊されているのだが、それでも機体の再構成は進んでいた。
何とか胴体と四肢を戻したのは驚異的ともいえるが、こうなってしまうともはや悪足搔きに過ぎない。
タカミムスビが腕部分に格納していたらしい柄のような物を引き抜く。
エネルギーブレードかとも思ったが、違うようだ。 一閃。
さっきと同様に見えない何かが敵機を切り刻む。
敵機が即座に細切れになり、コアが露出。 そこをニニギが突っ込んで拳を叩きこむ。
赤熱した拳がコアの表面を溶かし、拳が沈んだと同時に内側から破裂するように爆散。
仕留め損ねる余地が皆無な完全勝利だ。 圧倒的だった。
「思金神」の一軍が本気で連携を組んだ場合ここまでのパフォーマンスを発揮するのかと震えてしまう。
視れば見るほどに前に戦った時は本気ではなかったと分かって屈辱感が身を焼くがそこまでする価値のある敵として見られなかったと自身に言い聞かせてぐっと拳を握るだけに留めた。
思う所がない訳ではないが、とにかく決着は付いたのだ。 最も脅威度の高いエネミーを仕留めた以上、次のサーバーが来るまでは充分に持ちこたえ――
「は?」
思わずそんな間抜けな声が漏れる。 遠くから迫りくる巨大な光を見たからだ。
相当な距離が離れており、本来ならスキャニングなんて真似は出来ない。
でも、シックスセンスはそれの膨大なエネルギーを捉えた。 何故か?
対象の放出しているエネルギー量が多すぎて距離があるにも関わらずセンサー系が情報を拾ってしまうのだ。 ざっと見ただけでもさっき仕留めた個体の三倍から五倍の出力。
ここまで行くと動力ではなく発電所か何かじゃないのかと言いたくなる。
――そんなレベルの反応が10。
「馬鹿じゃないのか?」
自然に、本当に自然な感じにそんな言葉ポロっと零れ落ちた。
一体仕留めるだけでこれだけの労力を払ったのに倍以上の出力の個体を十倍の数放り込んで来るとか運営は鬼か何かなのだろうか?
見た目は巨大な隕石といった様子だが、中身はスケールアップした大型個体だろう。
『さて、困った事になったね。 霧ヶ峰』
欠片も困った様子のないタカミムスビは微塵も動揺を見せずに霧ヶ峰に何かを指示していたようだ。
『では、皆さんに共有します。 まずはこれをご覧ください』
動揺しているプレイヤー達を全く気にせずそのまま情報を送り込まれる。
ポップアップしたウインドウにはこの惑星の簡単な図だろうか?
巨大な球体にエネミーらしき反応が接近している。
『注目して欲しいのはこちらになります』
霧ヶ峰が強調したのは隕石ではなく惑星自体。 中心部分辺りに巨大なエネルギー反応。
『恐らくですがこの惑星の地底深くに存在するこれが増援を呼ぶ為のトリガーになっている物かと思われます』
『つまり、頑張って今来ている敵を撃退してもこれが残っている限り、追加が直ぐに送られてくるという訳だね』
動かなかったのは敵の追加を呼ぶという役目があるのでそれに専念していたと。
「なぁ、ヨシナリ」
マルメルが小声で声をかけて来たので何だと内心で首を捻るが、恐らくは話の内容に気になる点があるのだろう。
「惑星の地下にでっかいのが居るって話は分かったんだけどよ。 何でアメリカの連中は気付かなかったんだ? 見逃したとか?」
「いや、それは考え難い。 恐らくは気が付いたら居たんだろう」
「どういう事だ?」
あのコアの本質は増殖、合体の二点にある。
神経のような物を伸ばして増やし、それを固めて新たなコアを形成。
巨大になればなるほどに複雑な挙動を可能とするのだろう。
手数が欲しい時は増殖を優先し、大規模な事をしたいのなら合体して巨大化。
地下の規模を考えるとやられた個体から剥がれ落ちた神経も他の個体に合流してサイズアップに一役買っていると見ていい。 アメリカ第三の総合戦力は日本サーバーを上回る。
そんな彼等がこれだけの代物を見落とす事はあり得ない。
見落としではないのなら観測できない状態からこうなったと考えるのが自然だ。
これまでに倒したエネミーの残骸が集まって徐々に大きくなっていったのだろう。
敵の増援の規模が上がっているのもコアが巨大化して干渉力が上がったと考えれば自然だ。
タカミムスビの言葉以上に厄介な事になる。 残っている限り増援は永遠に現れるだろう、そしてコアの規模が大きくなれば増援の規模も上がるのだ。
これだけでも支え切れるか怪しいのにこれ以上の敵を呼ばれると破綻するのは目に見えている。
つまりは次の増援を呼ばれる前に地下のコアを処理しなければ確実に負けるのだ。
「な、なるほど。 思った以上にヤバい事になってるんだな」
「そう言う事だ。 しかもこれから来る連中の相手をしながらそれをやらなきゃいけないのがキツイ」
せめて日本サーバーの戦力が半減していなければまだマシだったのだが、今の状態だとかなり厳しい。
次のサーバーが入ってくるまでまだ30分以上はある。
――裏を返せばそれだけ粘れば無傷のサーバー一つ分の増援が来てくれるのだ。
何とかそこまで凌げば――
『さて、状況の共有は出来たね。 では、我々は地底のコアの処理に向かうとするが、ついてきたい者は好きにしたまえ』
タカミムスビはそう言うとニニギ達を率いて降下。 この惑星の地底へと向かって行った。
他のメンバーも次々と降下を開始、飛行が難しい者達は残骸の表面を伝う形で地上へと向かっていく。
それを見ながらヨシナリはどうした物かと迷っていた。
誤字報告いつもありがとうございます。
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