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さて、まずは何を視るべきか? エネルギー流動だ。
巨大さに惑わされがちだが、本質的にはこれまでに戦ったエネミーとそこまでの大差はない。
形状維持の為にコアが神経のような物を張り巡らせて様々な物を強引に接合させている。
つまりコアの破壊が出来ればこいつは死ぬのだが、問題はそれが大量にあるからだ。
タカミムスビやライランドが闇雲に攻撃しているように見えるのもその所為だった。
彼らは足のコアを片端から破壊して足元から崩そうとしているのだ。
ただ、タカミムスビは微妙に距離を取りながらそれを行っている点は何かを企んでいる様で非常に怪しい。
「ってかマジでデカすぎて全体像が掴めねぇ」
当然ながら敵も黙って見ている訳ではなく、再度足を振り上げようとしていたが、僅かに浮き上がった所で止まっていた。 何でだと思ったが内部でエネルギーが増大。
一部が赤熱し、中から機体が飛び出した。 ニニギだ。
姿を見ないと思ったらいつの間にか足を溶かして中で暴れまわっていたらしい。
それも闇雲に壊して回っていた訳ではなく、狙った位置を破壊していたようだ。
あの巨体を維持しているのもコアから伸びる神経のような物で、動かすのにも利用している。
つまり単純な話、神経を切ってしまえば動かせなくなる訳だ。
どうやってこの短時間で足を上げる事を封じる事が出来たのかと首を傾げているとエネミーの表面に何かがあった。
フォーカスするとアンカーボルトのような物が突き刺さりシグナルのような物を発している。
刺さっている位置から発射したであろう場所を逆算すると霧ヶ峰やそれに随伴している機体が次々とアンカーを撃ち込んでいる姿が見えた。
「思金神」所属のプレイヤー達が撃ち込んだアンカーの位置を観察すると太い神経が近い。
それを見てなるほどと納得した。 霧ヶ峰は可能な限り離れた位置から観察し、何処を潰せば動きを封じられるのかを調べている。
あのサイズなのだ。 足を振り上げて下ろすだけであの破壊力。
勝敗以前に戦況を維持する為の最低条件が相手の動きを封じる事にある。
正直、どうすれば殺せるのかを考えていたヨシナリとしてはなるほどと思える動きだった。
――同じシックスセンスを使ってるけど、持ち主が違うと運用も変わって来るな。
グロウモスも装備した事もあって機会があれば、運用方法に関しての情報交換をしてみたいと思いながら足を封じた以上は本体を叩きに行ける。 メインのコアの場所はこの神経を辿って行けば辿り着くはずだが、今のホロスコープで到達できるのかが不安だった。
元々、大気も薄く重力も違う事もあって可能とは思うが――ちらりと下を見ると何かが上がってきていた。 フォーカスするとその特徴的な機体は見間違いようがない。
ライランドだ。
重力制御とはいえ、どうやってあんな速度をと思ったら背中にロケットのような物を背負っていた。
――おいおい、何だありゃ。
見た目に驚いたが好都合だった。
横を通り過ぎるタイミングで派手に噴かしているロケットに掴まる。
『あぁ、お前か』
「便乗させて頂いても?」
『好きにしろ』
いきなりこんな真似した事もあって怒るかなとも思ったが意外な事にライランドは何も言わない。
器がデカいなと思っていたらロケットにワイヤーのような物が引っ掛かっていた。
何だと辿ると見覚えのある機体がくっついている。 レイノルズだ。
『おぉ、ヨシナリじゃねぇか。 楽しんでるか?』
「お陰様で」
『もう俺達は時間が近いから無理してでも突っ込まねぇとな。 こんな美味しい場面、楽しまねぇと損だぜ!』
くっ付いている理由はよく分かった。 この状況なら戦力は少しでも欲しい。
ヨシナリとしては来てくれるのは非常にありがたかった。
ライランドも便乗している奴が既にいる以上、増えても気にならなかったという訳だ。
そのまま一気に高度を上げ、地表が遠のきトルーパーが豆粒ほどのサイズになった所でようやく足を超えて胴体部分が見えて来た。
そこで推進装置の限界だったのかライランドはロケットを切り離す。
ライランドは拳を握ると肘から突き出たシリンダーが伸びる。
改めて見ると凄まじく原始的な装備だ。
拳を当てた後、シリンダーを叩きつけて衝撃を内部まで浸透させると言った所だろうか?
その威力は凄まじく、トルーパーのパーツと鉱物のミルフィーユのような多重構造の外殻を一撃で粉砕する。 右で叩き込んだ後、左で追撃。
大きく砕けていた胴体が二発目で完全に砕け散り、大穴が開いた。
「気付いてたんですか?」
『適当に繋げただけのボディという割には形が整いすぎているからな』
胴体の中が一部空洞になっており、それを知ったライランドが穴を開けて中に入ろうとしている訳だ。
ヨシナリもニニギが内部から足を焼いていたのを見て内部への侵入が可能だと察していた。
そんな理由で上へ向かったライランドの動きは渡りに船だったのだ。
中は空洞になっており、壁のあちこちにコアが張り付いている。
エネルギーを発している所為か光っている事もあって非常に良く目立つ。
『ひゅぅ! 喰い放題じゃねぇか。 纏めて俺のクソに変えてやるぜ!』
レイノルズが次々とコアに銃弾を撃ち込んで破壊していく。
ヨシナリもそれに倣って手近なコアを狙って銃撃。
このまま何もなければ美味しい狩場なのだが、そう言う訳にはいかないようだ。
小さなコアが脈動すると壁に埋まっているパーツや鉱物を取り込んでトルーパーに近い形状を取る。
「まぁ、黙って撃たせてくれる訳ないか」
『へ、マスを掻くだけじゃ上がらねぇし、丁度いいじゃねぇか!』
ソルジャーフレーム――いや、形状的にオビディエンスフレームに近い。
しかも一から形成された事でコアが機体内部に格納されている。
明らかに外の寄生トルーパーとは完成度が違う。
こちらに視線を向けており、明らかにパターンをなぞっていた個体とは毛色が違った。
敵機は手を翳すと地面や壁から次々とブレードや銃が生えて来る。
それをおもむろに掴むと即座に散開。 後衛機は散るように広がり、ブレード装備の機体は真っ直ぐに突っ込んで来たのだが――次の瞬間、原型を留めないほどに破壊された。
「は?」
思わず声が漏れる。 ライランドの仕業だ。
何をしたのかは理解できる。 切り込んで来た敵機を拳で一撃。
軽く小突いたように見えるぐらいにナチュラルな動きだったが、それだけで敵機の上半身が交通事故にでもあったかのようにひしゃげたのだ。
誤字報告いつもありがとうございます。
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