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「おや? 君から連絡してくれるなんて嬉しいね。 それで? 私に何か用事かな?」
応じた声はタカミムスビの物だ。 生存してて装備などの知識も豊富。
状況判断も的確とこのゲームに於いては知らない事の方が少なさそうな人物。
意見を求めるのにこれ以上の相手は居ないだろう。 本音を言えば避けたい相手ではあったが、負ける事よりはマシだった。
「ちょっと意見を聞かせて頂きたくて……」
地中のエネミーの動きや北方のプレイヤー達がやられた原因などの考察を話すとタカミムスビは感心したように笑う。
「なるほど、なるほど。 君の着眼点は素晴らしいよ。 北方で撃破された者達は数で圧殺されたと言った見方が強いが、彼らもランカーだ。 そう簡単にやられるとは考え難い。 君はそれ以外の要因があったと思っている訳だね」
「はい。 現在、敵は地中でコアが結合する事で巨大な何かを形成しようとしています」
「君の位置から判断するとアメリカのプレイヤー達が耕した辺りかな?」
「気付いたプレイヤーが今も攻撃していますけど届いていませんね」
正確には届いてはいるのだが、本当に届いているだけで効いていない。
つまり成立を阻止する事は難しい。 対処としては防ぐ事に重きを置いた方が良かった。
「話は分かった。 ――ところでヨシナリ君。 君は寄生されたトルーパーを何機も見ているね?」
「はい」
「何か気付いた事はないかな?」
口振りから寄生された機体には何かしらの共通点があると言いたげだが、コアが張り付いている事だろうかと思ったがタカミムスビの質問の意図からは外れている感じがする。
視るべき所は何処だろうか? ちょうど目の前に来ていたので攻撃を躱しながら観察。
胴体部分にコアが張り付き、ジェネレーターの代わりを担っている。
神経のような物が伸び機体とアバターを乗っ取ってプレイヤーの挙動を一部再現。
「ヨシナリ君。 君は賢い。 その優れた洞察力と集中力で様々な物を看破し、勝利を捥ぎ取って来たのだろう。 その経験からまず深い所――底から物事を読み取ろうとする。 シックスセンスは確かに素晴らしい眼ではあるが、その視界の広さは逆に君自身の視野を狭める可能性を孕んでいると認識した方がいい」
持って回った言い方に少し眉を顰めるが、同時にタカミムスビが何を言いたいのかも朧気に理解できた。 要はもっと浅い部分を見ろと言っているのだろう。
訳が分からな――敵機の銃撃を躱しながらカウンターでアトルムを撃ち込んで撃破した所で気が付いた。
「あ」
思わず声が漏れる。 そうだ。 何が起こったのかを察するのに単純な方法があったのだ。
寄生トルーパーの機体そのものを見ればいい。 損傷から何が起こったのかを読み取ればいいのだ。
「気付いたようだね? さて、君が理解した事を私に教えてくれないかな?」
「機体の損傷。 全てではありませんが、上位の機体の大半にニードルのような物が突き刺さっています」
「さて、彼等は簡単にはやられない。 その前提があるにもかかわらず脱落して無様を晒している理由は間違いなくそれだろう。 私も似たような物を使っているのだが、いかに堅牢な装甲といえども内部から干渉されれば抗う事は難しい」
つまりニードル状の何かをばら撒いて機体の動きを封じる大規模兵器。
「私の見解と一致したね。 答え合わせは必要ない。 何故ならこれから叩き潰すからね。 君が居てくれて本当に良かった。 お陰で正確な位置が特定できたよ」
何がと言いかけたがタカミムスビの意図は直ぐに分かった。
エネルギー反応の直上から何かが急降下。 真っ赤に赤熱している機体――ニニギのテンザンコウだ。
背面から光の輪が収縮と膨張を繰り返し、凄まじい加速で地面に突き刺さり地中へと潜航。
「え? いや、嘘だろ?」
地底数百メートルはあると思うだが行けるのか? 少なくともホロスコープには無理だ。
シックスセンスが凄まじい熱量を放つニニギを観測し続けている。
凄まじい速度でエネミーのコアが作り出そうとしている構造体に接近し――
「マジかよ!?」
ヨシナリは咄嗟に加速してその場から離れる。
地底に攻撃を仕掛けていたアメリカのプレイヤー達も口々に驚愕を口にしてその場から離れた。
次の瞬間、地面が真っ赤に赤熱した後、大きく膨張。 火柱のような物が天へと打ち上がった。
「えぇ、うっそだろ……」
思わず呟く。
火柱は完全に立ち上がった所で最上部が華のように広がり、溶岩のような物を周囲に撒き散らす。
そして溶岩のように見えたのは熱で溶けた敵のコアと分かって恐ろしくなった。
そしてその中心からニニギが何事もなかったかのように現れるのを見て更に震える。
――ユウヤはどうやってあいつを倒したんだよ!?
リプレイ映像を見たにもかかわらずそんな事を考えてしまった。
ふわわに近い理不尽さを感じる強さだ。 一体、何なんだこいつは!?
あまりにも凄まじい光景に日本のプレイヤーの大半は引いていたが、アメリカのプレイヤーは対照的に大喜びだ。 雄叫びを上げたりアメイジングと連呼している。
ともあれ、敵の一手を潰せた以上は一先ずは大丈夫かと思っていたが、そうでもなかったようだ。
火柱を中心に地面が渦巻き状に捻じれる。 シックスセンスでスキャニングすると地中で生き残ったコアが大量の神経のような物を広げるように伸ばして広範囲に対して何らかの影響を及ぼそうとしていた。
「おやおや、策を潰されてもっと分かり易い手に出たみたいだね」
タカミムスビは小さく笑う。 これに関してはヨシナリにも流れが読めた。
広がり切ったと同時に掌を閉じるように張り巡らされた神経が一点に集まる。
神経が触れていた物と一緒に。 溶岩、鉱物、砂、機体の残骸。
その辺に落ちている全ての物が渦の中心に集まっていく。
「まぁ、防衛戦の時の流れを踏襲するなら巨大化は絶対するだろうな」
地面から巨大な、巨大すぎる腕が突き出し、這い出るように地面に手を着く。
それだけで地面が縦に揺れた。 腕だけで数百メートルはある。
この惑星の一部を丸ごと使って体を形成しているのだが、視覚的にはまるで卵から這い出す何かに見えた。
腕、肩、胴体の時点でもう視界がいっぱいになって全体像が分からない。
侵攻イベントのボスも大概だったが、今回はそれ以上だった。
「これ、どうすりゃいいんだ?」
思わずそう呟いた。
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