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「いい加減に慣れて来たな」
寄生されたエンジェルフレームをアトルムで黙らせた後、死角に入ろうとしているソルジャータイプ二機を一機一発の二連射で仕留める。
現状、戦況は膠着している。 特にタカミムスビを筆頭に大火力を備えた機体が特に力を発揮しており、少し後ろにはアメリカの物と思われる大型機体が数機凄まじい数の砲弾をばら撒いているのもかなり効果的に作用していた。
これまでのイベントの傾向上、そろそろ超が付く強力なエネミーが投入されそうな予感がしている。
ヨシナリの個人的な予測では最初の防衛戦に現れたクラゲ型エネミーと同じ流れと見ていた。
つまりは大量の残骸を取り込んでの巨大化。
敵側の動きの流れはこうして俯瞰すると非常に分かり易い。
まずは南北にボスエネミーを配置。
南は攻撃力に特化した大型個体を筆頭とした殲滅力に重きを置いた部隊。
これは非常に分かり易い。 プレイヤー側の数を減らしながら南下して来る味方の為の土壌作りだ。
エネミー側の思惑としては南である程度のプレイヤーを減らし、北側で大量生産した寄生エネミーを伴って南下。 そのまま残骸を取り込んで兵力を増強させながら進むという物だ。
思惑を悟らせない為にガスを吐き出して視界を制限するエネミーを投下するやり方も悪くない。
お陰でアメリカ側のプレイヤーも戦場の全体を見れずに目の前の敵に対して場当たり的に対処しなければならなかったはずだ。
ただ、誤算がいくつかあったはず。 最も大きなものはSランクプレイヤーであるライランド。
彼が南の大型個体を撃破した事だ。 話によるとほぼ相打ちに近かったらしいが、それ故に南側に展開されたプレイヤーの損害が驚くほどに少なかった。
結果、かなりの戦力を残した状態で南を制圧されたからだ。
ただ、北側に関しては概ね思惑通りに進んだ事はプレイヤー側としてはあまりよろしくない。
元々、アメリカと日本のサーバーではプレイ人口が違う。
その為、北に降下した日本側のプレイヤー達は物量で押しつぶされた可能性が極めて高い。
そうでもなければベリアルやユウヤがあそこまであっさりやられるなんて事はあり得ないからだ。
敵にとっての二つ目の誤算。 タカミムスビだ。
彼のアマノイワトは気象兵器を使用する事ができる。
それにより視界を塞ぐガスを吹き払い戦場の視界を文字通りクリアにした。
――というかそれ以上に何だよあれ。
何故か第一形態の鐘と第二形態の中身が両方いる。
恐らく反射板を展開せずにそのまま固定砲台として使っているのだろう。
そんな事が出来た事実にも驚きだが、火力がほとんど落ちていないので殲滅力が桁外れだ。
こいつこんなに強いのに何で前のアメリカ第三サーバー戦であっさり落ちたのかがさっぱり理解できない。
当時はここまでの火力はなかったからなのだろうか? 分からない。
鐘が相変わらず凄まじい密度の攻撃を継続し、中身が楽しそうに前線に切り込んで爪で薙ぎ払い口から極太のレーザーを吐き出している。 知らなければどちらがエネミーなのか判断に迷いそうだ。
あの様子なら余程の事が起こらなければ後ろは大丈夫だろう。
問題は前線だ。 現在、ヨシナリは戦場の真ん中辺りにいる。
さっきから敵を捌きながらガスを吐き出している個体を処理していたが、ボスらしき存在が見当たらない。
ヨシナリの勘では北側に現れたであろう寄生個体の精製プラントを兼ねた、要はこの有様を生み出した現況が生き残っている筈なのだが見当たらない。
――いや、違う。
レーダーの範囲外。 相当離れた位置で巨大な爆発。
もう他が見つけて仕掛けているのだ。 速いなと思いながら機体を変形させて加速。
せめてどんな姿をしているかだけでも確認してやろう。 そんな気持ちもあっての行動だった。
――が、少し迂闊だったようだ。
真下から無数の反応。
寄生された可変形態のキマイラフレームが文字通り打ち上がって来る。
なんで変形できるんだよ。 干渉するだろといった疑問は即座に氷解した。
コアの張り付き方から変形した状態で寄生されたのだ。
流石に群れに混ざった反応は読み切れなかった事もあって僅かに反応が遅れるが、バレルロールで左右に転がるような挙動で躱す。
明らかにトレースではない独自の動きに面食らったが、対応できるレベル――躱した寄生トルーパーが全て一斉に自爆。
「何でだよ!?」
思わず叫ぶ。 流石にこれは想定外だったからだ。
咄嗟に機体をエーテルで保護して守りを固めるが衝撃まではどうにもならない。
バランスが崩れて姿勢が安定しない。 立て直す為に即座に変形。
追撃に警戒するが、下を見てさっと背筋が冷えた。 無数の銃口が上を向いていたからだ。
エネミーの行動パターンが明らかに変わっている。
これまではプレイヤーの動きをなぞるだけだったが、ある種の連携に近い行動を取り始めたのだ。
銃弾、砲弾、ミサイルが無数に飛んでくる。
前者二つは機動で躱し、ミサイルはアトルムとクルックスで近い順に撃ち落とす。
ヨシナリだけを狙っている訳ではないが数が多すぎる。 躱しきれずに次々と友軍機が撃墜されている中、変形して加速、空戦機動からの変形で躱しながら凌ぐがそろそろ限界が近かった。
最悪、片足を犠牲にして目晦ましにと考えていると不意に通信。
『悪いが上手く躱してくれ』
上に無数のエネルギー反応。 識別は味方だが、見慣れない機体群だった。
上半身は見慣れたソルジャータイプだったが下半身が円錐状の奇妙な形状をしている。
それが数千機。 全機が同じ武器を地上に向けて構えていた。
長大な砲身と機関部から高エネルギー反応。 ただのバズーカ砲ではない?
エネルギーの増大が最大値になったと同時に一斉発射。 視認不可能な速度で弾体が飛ぶ。
発射した後、それが何なのかを悟った。 ヨシナリはマジかよと高度を上げる。
僅かに遅れて地面が噴き上がった。
本当にそうとしか形容できない有様で、使った武器が何かを考えれば当然だろう。
ショップで似たような物を見た事があるからだ。
レールバズーカ「ギガントハンマー」
レールガン系の携行武装では最強クラスの破壊力を誇る代物だ。
取り回しの悪さとチャージの長さという弱点はあるが、巨大故に弾の種類が豊富だった。
「はは、威力ヤベぇ……」
思わず呟く。 敵の地上部隊の一角が丸ごと壊滅していたからだ。
この手の武装に使用される砲弾――特に命中後に爆発するタイプは携行火器としては過剰すぎる破壊力だったと記憶しているがここまでとは思わなかった。
誤字報告いつもありがとうございます。
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