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銃弾は命中したのだがコアに当たる前に集まった砂が受け止める。
ヨシナリはしぶといと思いながらも更に撃ち込もうとしたが、背後からプルガトリオが大剣で斬りかかって来たのを躱す為に変形して急上昇。
真上を取った所でアシンメトリーに持ち替えてフルオート射撃。
二機は躱せずに防御。 プセウドテイは砂と岩を集めた盾でプルガトリオは大剣で受け止める。
それを見て更に不快になった。 ベリアルとユウヤがこの程度の攻撃を受け止める訳ないだろうが。
せめて躱すぐらいはしろよ。 見ているだけでイライラする。
仲間を貶められるとここまで不快になるとは思わなかった。
正直、自分がこういった事でここまで熱くなる事は意外ではあったが、やる事は何も変わらない。
目障りな連中を消し飛ばして終わりだ。
まずは比較的、捉えるのが難しいプセウドテイを――不意にエーテルの反応。
僅かに仰け反って回避。 何もない所から拳が飛んで来たからだ。
「ニャーコさんか」
視覚から寄生されたニャーコの機体が襲い掛かって来た。 どうやら「豹変」も駄目のようだ。
ポンポン達の姿は見えないが、よくよく考えればこんな状況なのだ。
彼女達なら嫌でも目立つ。 姿が見えなかったという事はそう言う事なのだろう。
アシンメトリーをマウントしながらアトルムとクルックスを抜く。
ニャーコの機体は一度見ている事もあってスペックに関しては頭に入っている。
エネルギーウイングを用いた独特な踏み込みと拳を分身させての打撃。
文字通り飛んでくる打撃は思ったよりも射程が長く、実際の打撃と絡めると躱すのは難しい。
――が、それは本人が使って100%のクオリティを発揮しているからこそだ。
モーションをなぞっているだけでフェイントの類もなし。
分身を発生させる際にエネルギー流動に変化があるので知っていれば来るのは簡単に分かる。
拳を握り、打ち出すタイミングで旋回。 背後を取る。
エーテルの拳は空を切り、本体はエネルギーウイングを噴かして追いかけるように反転。
こうすれば実体の一撃しか残らない。
付け加えるならニャーコの戦闘スタイルはボクシングがベースだ。
その為、下半身からの攻撃は少ない。 仰け反って躱しながらアトルムをコアにねじ込んでバースト射撃。 そのまま撃破。
ようやく追いついたプセウドテイがブレードを形成して斬りかかって来るが遅すぎる。
クルックスでバースト射撃。 命中するが手応えがない。 分身だ。
そう認識した頃にはヨシナリはエネルギーウイングと推力偏向ノズルを使って旋回しながら蹴りを繰り出す。
「どうせ後ろからだろ! 雑なパクリしやがって!」
レーダーを見る必要もなくほぼ直感に近い動きだったが、ホロスコープの蹴りは背後に回っていたプセウドテイの胴体を完璧に捉える。 起爆。 至近距離から炸裂したクレイモアがプセウドテイの胴体を完全に消し飛ばし、その機能を停止させた。
回転を止めずにイラに手をかけ、下から追撃に来ていたプルガトリオへと投げつける。
大砲のように射出された大剣はプルガトリオの胴体を貫いた。 次いで爆散。
やってから内心で舌打ち。 イラを使ってしまった。 あれでは回収できない。
腹が立って感情でやってしまったが、使ってしまったものは仕方がない。
切り替えてさっさと次に行くべきだ。
津波。 まるで津波だ。
マルメルはそんな事を考えながらプレイヤーに混ざってとにかく前に向かって撃ちまくっていた。
北から大量に流れ込んで来たエネミーと寄生トルーパーの群れ。 とにかく多い。
どうやら北にいたプレイヤーはほぼ全員喰われたとみて間違いないらしい。
最初の防衛戦の時も大概だったが、今回はそれ以上の規模だった。
視界を埋め尽くす程の大量の敵、敵、敵。 マルメルは普段使っている武器ではなく、支給された重機関銃で弾をばら撒いていた。
重たい連続した銃声が響くが、それ以上にアメリカプレイヤーの叫び声がうるさい。
翻訳機を積んでいないプレイヤーも多く、英語が多い。 どうにも聞き取れない言語の叫び声はマルメルにとってはノイズとしか感じられずに耳障りに感じてしまう。
――にしてもヨシナリの奴は何も言わなかったけど気付いてんのかね。
ガスが晴れてフィールドの状態は本来の物に近かったが、到着した頃と今の状況には強い既視感があった。 最初の防衛戦。 シチュエーションが少し違うだけでほとんど同じに見える。
特に寄生トルーパーの群れが現れる所は特にそうで、例のイソギンチャクが出て来る前に現れたクラゲ型のエネミーと酷似している。
それが何を意味しているのかはマルメルには理解できなかったが、ヨシナリが普段言っている運営の意図という物を考えてしまう。
ヨシナリ曰く、意図を読み取る事が出来たなら違った見え方、意外な発見があるらしい。
それに従った結果が、侵攻イベントの時の動きだ。
ヨシナリは凄い奴だ。 少なくともマルメルはヨシナリ以上のリーダーは居ないと思っていた。
相棒としてのポジションは譲りたくはないが、おいていかれないように必死に喰らいついているのだがどうにも離されている感じが否めない。
他のメンバーもどんどん強くなっているので、埋もれて消えないように――
「うーん。 黙々とぶっ放しているだけだから余計な事を考えちまうな」
そう言えば他のメンバーはどうしているのかなと確認するとふわわはいつの間にか姿を消しており、シニフィエは他に混ざって弾をばら撒いていた。
恐らくふわわは空に上がって敵を切り刻んでいるのだろう。
――にしてもこのままでいいのかねぇ。
これまでのイベントの流れ的にもう一つぐらいは大事が起こるんじゃないかと思っていた。
思考を断ち切るようにズンと地面が大きく揺れる。
ちらりと視線を向けると巨大な鐘のような機体――タカミムスビが前に出て正面を薙ぎ払う。
知ってはいたが、圧倒的な火力だ。 ほぼ単騎で敵の勢いを削いでいる。
アメリカのプレイヤーは大興奮でアメイジングとか叫んでいた。
『はっはっは、アメリカのプレイヤーは熱烈だねぇ! こんなに喜んでくれると見せつけたくなるじゃないか!』
そう言って鐘が展開。 中から例の恐竜みたいな頭をした第二形態が現れた。
ただ、今回はイベント戦とは違い、鐘が分解していない。
「マジかよ。 二機運用みたいな事できるのか?」
鐘が閉じ、射撃はそのまま維持されていた。 その間に出て来た中身が前に出て薙ぎ払い始める。
「いや、マジでとんでもねぇな」
マルメルにはそんな事しか言えなかった。
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