872
レイノルズはプロペラントタンクを使ってしまった事もあってこれから拠点へ補給に戻ると去って行った。 あまりにもあっさりと帰って行ったので彼は前に出ずにここで空を守るつもりなのだろう。
爆発的な直線加速は凄まじいが、その代償に燃費が悪い。
あんな大きなプロペラントタンクをわざわざ付けているぐらいだ。
継戦能力にやや不安があると言った所だろうか。 一先ずは危機を脱したのだ。
さっさと進もうとレイノルズの機体を見送った後、ホロスコープを反転。
空域を突破しようと加速するが、それを阻む寄生トルーパー達。
もうこれまでの戦い方である程度の傾向は掴めた。 先に撃たせて初動を見極めた後、アトルムとクルックスで牽制。 躱させ、同じ攻撃モーションを取るように誘導し、そこを撃ち抜く。
そろそろ慣れて来た。 コアという分かり易い弱点に例のチートに近いテンプレート化された動き。
仮にコアを撃ち抜けなかったとしても挙動をアバターから吸い上げている関係でコックピット周りを破壊すれば動きのクオリティを大きく落とす事が可能だ。 そうなればただの少し動く的でしかない。
切り取って張り付けただけの動きはヨシナリの感覚としては非常に薄っぺらく、ツガルやカカラがそんな有様になっている事は非常に不快だった。 特に彼等の本来の強さを知っている事もあって猶更だ。
どういうつもりでこんなクソのようなエネミーを繰り出してきたのかは不明だが、怒りを煽りたいというのなら割と成功はしている。 そんな気持ちになっている事には大きな理由が一つあった。
レーダー表示を見れば友軍、敵軍の識別を確認できるのだが、この識別機能。
もう少し詳細に表示する事が可能だ。 正確には味方に関してなのだが、具体的にはどのような形になるのかというと、フレンド登録したプレイヤーとユニオンメンバーの表示だ。
特に後者に関してはレーダー表示の範囲外だったとしてもいる方角まで教えてくれる便利な機能で、ベリアル達の居場所を大雑把だが把握していたのはこれのお陰だ。
――で、だ。 その反応がどんどん近づいて来ていた。
北、つまりは寄生トルーパーが雪崩のように押し寄せてきている中に、だ。
そしてレーダーの範囲内に表示される。 ベリアル、ユウヤ、ホーコート。
三人とも健在――システム上は。
「はぁ、やっぱりこうなるのか」
ヨシナリは思わずため息を吐いた。 残念な結果だ。
ホーコートはともかく、ベリアルとユウヤが簡単にやられる訳がない。
恐らくはどうにもならない状態だったのだろう。 そこに現れたのはベリアル達だった物だ。
プセウドテイはエーテルリアクターに損傷を受けたのかコアが代わりを務めているらしく、エーテルの代わりに砂や石で機体を構成している。
完全に別物だが、識別ははっきりとそれがプセウドテイだと示していた。
プルガトリオも全身に無数の傷と動体にコアがへばりついており、抵抗した結果なのか両手足が鉱物で作られたであろう即席の物へと変わっている。 ただ、背のオディウム=イラだけは健在だった。
ゲームという事は分かっていても仲間の変わり果てた姿を直視するのは中々に精神的に来る物がある。
「まぁ、愛機をこんな有様にされちまえばあの二人も穏やかではいられないだろうし、ここはきっちりぶっ潰して先へといくとするか。 ――来い。 パクリ野郎ども」
真っ先に動いたのはプセウドテイだ。 見た目こそ変わっているが、動きはベリアルのそれだった。
正面から肉薄し、エーテルの代わりに砂で構成されたクローによるラッシュ。
接近戦は不利と理解しているヨシナリは後退しながらアトルムとクルックスを連射。
プセウドテイは銃弾を躱さずに両腕を交差してガード。 その間にホーコートの機体が旋回。
ヨシナリの背後に回り込もうとするが、バリエーションが増えただけで固定化されたモーションを切り貼りしている事には変わりはない。
特に本人の制御が介入しないのでただでさえ高くないクオリティが更に低下している。
バトルライフルを抜く前にエネルギーウイングを全開に噴かしながらイラを抜いて一閃。
推進装置による加速に押されて繰り出された斬撃は一撃でホーコートの胴を薙ぎ、そのまま両断。
爆発するが、それに紛れてプルガトリオが突っ込んで来る。
背の大剣を抜いて斬りかかって来るが、イラを背にマウントしながらアトルムとクルックスに持ち替えてバースト射撃。 これがユウヤであるなら電磁鞭か散弾砲の牽制が飛んでくる場面だが、本来の手足を失ったプルガトリオは大剣による斬撃しか攻撃手段がない。
アケディアに関しては恐らくは使えないはずだ。
装甲に守られていない剥き出しのコアが影響下に入ると下手をすれば止まりかねない。
実行して自滅してくれるならそれはそれで助かるが、そうはいかないだろう。
プルガトリオの大振りな攻撃に合わせる形でプセウドテイが爪を振るう。
こちらもエーテルの代わりに砂を使っている関係で重量がかさみ、機動性が大きく落ち込んでいる。
その上、転移システム「ファントム・シフト」はジェネレーターに紐づけされているらしく、エーテルリアクターが使えない以上はこちらも使用不可能。
――なんだこれは?
動きは確かに二人のモーションなのでそれっぽく見えるが、本当にそれっぽいだけなのだ。
「いくら何でも舐めすぎだろ!?」
プルガトリオの斬撃を上半身を傾けるだけで躱し、返しとばかりにイラで一閃。
際どい所で躱しはしたが胴体部分に斜めの傷が走る。 ヨシナリの一撃を隙と判断したのかプセウドテイが腕をブレードに変えて刺突を繰り出すが、遮るように盾にしたイラに阻まれて砕け散る。
即座に腕を引くがその頃にはイラをハンマーに変形させて下から掬い上げるように一撃。
躱せないと判断したのか両腕でガード。
ハンマーのヘッド部分は砂の防御を粉砕し、プセウドテイの胴体に大きな衝撃を叩きこむ。
怒りが渦巻きながらも頭の一部は妙に冷えていた。 弱すぎるからだ。
機体の損傷具合を補っていてもオリジナルの二割も性能を引き出せていない。
どうやってか知らないが、アバターからデータを吸い出してるんだろう?
「それでこれかよ。 流石に見ててイラつくな。 消え失せろ」
片手でクルックスを抜いてプセウドテイに銃口を向けてバースト射撃を叩きこんだ。
誤字報告いつもありがとうございます。
宣伝
パラダイム・パラサイト一~二巻発売中なので買って頂けると嬉しいです。
Kindle Unlimited、BOOKWALKERのサブスク対象にもなっていますのでよろしければ是非!




